景気を知るには月例経済報告が便利。経済初心者にお勧めのグラフ3つを解説
LIMO / 2022年3月23日 18時15分
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景気を知るには月例経済報告が便利。経済初心者にお勧めのグラフ3つを解説
景気の現状を手っ取り早く理解するには、月例経済報告を見るのが便利です(経済評論家 塚崎公義)。
日銀の展望レポートは初心者には難解
日本で景気に関する専門家がもっとも集まっているのは、日銀と内閣府(かつての経済企画庁)でしょう。日銀は金融政策をどうするか考えるために景気の現状と見通しを正確に把握する必要がありますし、内閣府は政府の経済政策を決める前提として景気の現状と見通しを把握する役割を負っているからです。
したがって、景気に関して知ろうと思ったら、日銀と内閣府の作っている資料を読むのが良いでしょう。日銀は展望レポートを、内閣府は月例経済報告を定期的に発表しているので、ホームページで読む事が出来ますから。
もっとも、展望レポートは、読者対象が金融市場で取引しているプロなので、内容も表現も難解で、初心者が読んでもよくわからないかも知れません。
為替や株価は日銀の金融政策によって大きな影響を受けるので、市場参加者は日銀の考え方を知りたがっています。それに応えるために日銀が自らの景気に関する考え方を積極的に開示しているというわけです。「市場との対話」と呼ばれています。
日銀が、自分の考えている事を上手に伝えておかないと、金融政策が変更された時に市場参加者が驚いて、株価や為替の市場が混乱するリスクがあります。そこで、あらかじめ少しずつ自分の考え方を市場に伝えておいて、市場が将来の金融政策の変更を徐々に織り込むように仕向けるのです。そうすれば、いざという時の混乱は避けられますから。
月例経済報告は一般人対象でわかりやすい
展望レポートとは異なり、月例経済報告は一般の人々を読者の対象としていますから、表現も内容も平易です。広く一般の人に読んでもらうためには平易である必要があるわけですが、平易である理由がもう一つあります。月例経済報告は閣議決定される必要があるからです(笑)。
平易なだけではなく、景気に少ししか関心のない人にもフレンドリーな対応がしてあります。表紙に景気の現状が短くまとめられているのです。
たとえばたとえば2月の報告では「景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる。」とあります。
これだけ読めば、景気の現状に対する大雑把なイメージは掴めるはずです。加えて、今後の予測についても表紙に簡潔な記載があるので、それを併せて読んでも5分で十分なほどです。毎月1回、5分だけ景気の事を考えたい、という人にも読んでもらえるように作られている、というわけです。
時間のある時に覗いて見ては如何でしょうか。
グラフが充実しているので、慣れてきたら活用しよう
文章のみならず、グラフが充実しているのも月例経済報告の有難い点です。経済の統計も株価等の動きも、比較的長期間のデータを用いて過去との比較で考える事が重要なのです。
「今月はプラスだった」というだけでなく、過去10年の平均と比べてどうだったのか、といった事も併せて考える必要があります。株価が下落した時なども、過去に何度も経験している程度の下落なのか過去にあまり例がないほどの暴落なのか、といった事を知ることが重要だからです。経済成長率がマイナスになった時なども同様です。
というわけで、慣れてきたら時々豊富なグラフをじっくり眺める習慣をつけていただければと思いますが、とりあえず本稿ではグラフを3つ紹介しておきましょう。
「GDPギャップ」
景気に関する経済統計で最も重要なのは、経済成長率ですから、本来であればGDPのグラフを真っ先に見るべきなのですが、残念なことに日本のGDP統計は振れが激しく、初心者が見ても何が起きているのかわかりにくいのです。
そこで筆者は、一般にはあまり注目されていない「GDPギャップ」というグラフを初心者向けに推奨しています。プラスなら景気が良い、マイナスなら景気が悪い、という水準が容易にイメージ出来るからです。
GDPギャップのグラフも、GDP統計を基に作っているので、振れる事には違いありませんが、細かいことは気にせずに大きな流れを把握するようにして下さい。
景気動向指数
次は景気動向指数です。景気と関係の深そうな経済指標を数個選んで、その動きを「加重平均」したものです。当然ながら個々の経済指標が出揃ってから計算されて発表されるわけで、プロたちの間ではあまり注目されていませんが、初心者にとっては「一つだけ見れば良い」ので便利です。
色々な数字が並んでいますが、「CIの一致指数」のグラフを見ましょう。これが景気だと考えて良いでしょう。製造業関係の指標が多く使われているので、輸出と内需の様子が異なる時は、輸出の動きを反映したものとなりやすいという問題点はありますが、それほど気にする必要はないでしょう。
完全失業率
3つ目は、完全失業率です。これは有名ですし、「景気が良い時は失業者が減るのだから、失業率こそ景気を表している」と考えている人も多いでしょう。厳密に言えば、失業率の動きは景気の動きに少し遅れるので、要注意なのですが、これもそれほど気にする必要はないでしょう。
ちなみに、失業率の動きが遅れる理由は二つあります。一つは、景気が回復しても企業が労働者を雇うまでに時間がかかるからです。現在の社員の尻を叩いたり残業させたりして、それでも労働者が足りなくなってはじめて新しく募集する、というわけです。
もう一つの理由は、仕事を探しているけれども見つかっていない人が失業者となるので、不況期に仕事探しを諦めている人は失業者ではないのです。そこで、奇妙な事が起こり得ます。景気が回復すると仕事探しを諦めていた人が仕事を探し始めるので、失業者がなかなか減らなかったり、場合によっては増えてしまったりするわけですね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。
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