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ESG投資拡大の鍵を握る?金融機関の取組状況と地域金融としての役割とは

LIMO / 2022年3月28日 18時45分

ESG投資拡大の鍵を握る?金融機関の取組状況と地域金融としての役割とは

ESG投資拡大の鍵を握る?金融機関の取組状況と地域金融としての役割とは

環境省のアンケート結果からESG投資を紐解く

近年は世界的なSDGsの広まりもあり、さまざまな企業や自治体がESG投資に取り組んでいます。しかし日本の環境課題や社会問題を解決し、持続可能な社会を作るには、それを後押しするESG投資をさらに広める必要があります。

このESG投資の普及には、資金調達先である金融機関が大きな役割を担っています。ここでは環境省が行った「2020年度ESG地域金融に関するアンケート調査」の結果を見ながら、ESG投資へ取組む金融機関の現状と課題を解説したいと思います。

ESG投資の取組は増えているが投資につながっていない

この調査によるとESGやSDGsに関連した取り組みを始めている金融機関は、前年調査の44%から66%に増えています。この数字だけ見ると、ESG投資は着実に普及しているように感じられます。

【出典】「ESG地域金融に関する取組状況について」環境省

しかし実際の行われている取組を見ると、SDGs宣言やマッピング、部門設置といった初期段階のものが主流です。

【出典】「ESG地域金融に関する取組状況について」環境省

実際の環境関連の融資につながる、金融機関の投資方針まで策定しているのはわずか10%。つまり宣言などのアクションは始めているものの、ESG投資を主要な事業の一つにする段階には至っていないのです。

【ESG投資】短期的な資金需要は少ないと捉えている

さらにこの調査結果で注目したいのが「環境や社会に好影響を与える事業(ESG投資)に対する、資金需要の将来見込み」という質問への回答です。

【出典】「ESG地域金融に関する取組状況について」環境省

「将来的な成長領域であるが、短期的には資金需要は多くない」と回答している金融機関が、2019年度の37%から2020年度は52%と大きく増えています。一方で「将来的な成長領域であり、資金需要が拡大していく」と回答した金融機関は37%と、2019年度の38%からほぼ横ばいです。

つまりESG投資の将来性は感じているものの、すぐに収益を生むものではなく企業として優先的に取り組む対象ではない、と判断した金融機関が過半数を占めたのです。

これまでのESG投資は再生可能エネルギー中心

とはいえこれまで金融機関が、ESG投資にまったく消極的だったわけではありません。2019年度の同じ調査では、89%の金融機関が事業用太陽光発電を主とした再生可能エネルギー発電事業向け融資を、実施していることが取り上げられています。

金融機関のESG投資実績として唯一取り上げられ、さらに89%という高い実施割合であることから、金融機関が再生可能エネルギー発電事業に積極的なことがうかがえます。

もちろん再生可能エネルギーの普及は、脱炭素社会へ向けて必要な取り組みです。また金融機関も企業であり、電力の固定買取価格制度によって手堅く収益が見込める、太陽光発電事業に融資が集中するのも理解できます。

しかし太陽光発電事業以外にも投資対象を広げることが、これからESG投資を普及させる鍵を握るはずです。

ESG投資拡大の鍵を握る地域金融としての役割

今回の調査結果の中で環境省は、ESG投資普及のため地域金融へ積極的に取り組むことを金融機関に求めています。地域金融とは特定地域の維持や発展を支援する金融機関の役割の一つです。

国はそうした地域金融を後押しするため「地域ESG金融促進事業」を策定し、さらに金融機関の地域金融として取組事例を積極的に紹介しています。

例えば北海道銀行は、水産資源の減少によって環境が悪化しつつある水産業へ多面的な支援を行っています。海洋環境の分析をはじめ、研究機関や他の金融機関、道庁などと連携した輸出入支援、コンサルティング、ビジネスマッチングなど、深く踏み込んだ地域金融を実践しています。

また群馬県を拠点にする東和銀行では、医療・福祉施設における災害対応型の電力自給モデル事業に取り組んでいます。これは太陽光発電や蓄電池、EV車両などを施設に導入し、災害時に患者や入所者への医療などを維持するものです。こちらも自治体や大学と連携した、積極的な取り組みになっています。

地域金融としてESG投資に取り組む金融機関は少数

しかしこうした取り組みに至っている金融機関は、残念ながらまだまだ少数と言えそうです。

今回の調査の「重点的に取り組む地域課題や産業分野を特定しているか」という質問を見ると、「課題分野を特定し、経営計画に落とし込んでいる」と回答した金融機関は25%に過ぎません。さらに約6割の金融機関が、重点的に取り組む課題や分野を特定さえできていないのです。

金融機関として重点的に取り組む地域課題や産業分野を特定しているか

【出典】「ESG地域金融に関する取組状況について」環境省

こうした状況の背景には、ESG投資の将来性を十分に検証し、取組の準備をするための資金や人材が不足しているという金融機関の事情があるでしょう。また金融機関も企業である以上、近い将来の利益が見えにくい事業への融資に消極的になるのは仕方ないことかもしれません。

しかし紹介した金融機関のようにあえて積極的に地域金融に取り組み、収益化が期待できるようになった事例もあります。ESG投資のSはSocial=社会であり、そこには地域社会も含まれます。金融機関にはより地域に向き合ったESG投資を期待したいと思います。

参考資料

環境省「ESG地域金融に関する取組状況について」(https://www.env.go.jp/press/files/jp/115995.pdf)(2021年3月)(http://www.env.go.jp/press/files/jp/115995.pdf)

環境省「ESG地域金融に関する取組状況について」(2020年4月)(https://www.env.go.jp/press/files/jp/113730.pdf)

環境省「ESG地域金融促進事業」(http://greenfinanceportal.env.go.jp/esg/promotion_program.html#:~:text=%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8BESG%E9%87%91%E8%9E%8D%E4%BF%83%E9%80%B2,%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%94%AF%E6%8F%B4%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)

環境省「ESG地域金融実践ガイド」(2021年4月)(https://www.env.go.jp/press/files/jp/115982.pdf)

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