投資家必見!日銀短観で注目すべきポイントとは。ケインズが唱えた「美人投票」も解説
LIMO / 2022年3月31日 7時30分
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投資家必見!日銀短観で注目すべきポイントとは。ケインズが唱えた「美人投票」も解説
日銀短観は業況判断DIが注目されますが、それ以外の項目も興味深いものが多いので、じっくり見たいものです(経済評論家 塚崎公義)。
日銀短観は大規模なアンケート
日銀短観の発表が4月1日に予定されています。日銀短観というのは、日銀が実施している大規模なアンケート調査で、調査対象企業の数が多いことに加えて、質問項目も多岐にわたっています。景気関係のアンケートは数多くありますが、もっとも注目度の高いものと言えるでしょう。
経済統計は事実ですし、アンケートは気分ですから、経済統計の方が安心感はあるわけですが、タイミング的に過去に起きた事しかわからず、バックミラーを見ているイメージがあります。
一方でアンケートは、現在の回答者の気分を表すわけで、それが今後の企業行動等にどう影響するかを考える材料となります。磨りガラスではあるけれどもフロントガラスなので、そちらも見ておく必要があるわけです。
特に、現在のように世界情勢等々が大きく変化しつつある時には、曇っていてもフロントガラスの方がバックミラーより遥かに頼りになる、と考えている人も多いようです。
市場関係者の関心が高く、株価等に影響
内容面の充実度合いのみならず、日銀が実施しているアンケートだという事で市場関係者の注目の高さも際立っています。為替や株価は、日銀の金融政策の影響を大きく受けるため、日銀の考え方に影響を与えそうな物には注目しておこう、という事でしょう。
市場関係者が「金融が緩和されると株価が上がり、ドルが買われるから、金融が緩和されそうなら株とドルを買おう」と考えているため、日銀短観で景気が悪そうならば金融緩和を予想した人々が株とドルを買う人がいて、実際に株とドルが値上がりしたりするわけです。
そうなると、「他の市場関係者が注目している物は、自分もしっかり注目しておかないと儲ける事ができない」と考える投資家たちが一層注目するようになるので、ますます注目される、という好循環?が生じているわけです。
ケインズはこれを「美人投票」と呼んでいます。言葉の由来はともかくとして、「何が真実かを追求するよりも、他人が考える事を予想して先手を打つ事が儲けにつながる」といった意味だと考えて下さい。
市場関係者は、数ある項目の中で特に業況判断DIに着目していて、その中でも特に大企業製造業のものに注目しています。
株価に直接影響を与えるのが大企業の収益であり、すでに発表された企業の決算よりも今後発表されそうな決算の数字を予想するのが株式投資で儲けるための重要な仕事だとすると、企業が今現在の業況についてどう考えているかを知りたいのは当然の事ですね。
株式投資家のみならず、為替を売買する人も、業況判断DIに注目しているようです。製造業のうちで輸出産業を見ている、という事もあるかも知れませんが、主因は「美人投票だから」でしょう。
景気予想屋は幅広い項目をじっくり見る
市場関係者向けに情報発信をする株価予想屋は大企業製造業の業況判断DIを特に重視しますが、景気予想屋は幅広い項目をじっくり見て全体感を掴もうとします。
景気を予想する上で最も重要なのは、設備投資計画かも知れません。設備投資は金額が大きい上に増減の幅が大きいので、景気に与える影響が非常に大きいのですが、企業がどのような計画を持っているのかという事は経済統計からはわからないので、アンケート調査がとても重要なのです。
ちなみに、設備投資は年度途中で計画が浮上したり年度末にかけて未実行に終ったりするので、季節性があります。したがって、前年同期との比較が重要なのですが、今回のように世界情勢が大きく動いている時には、前回との比較も同様に重要となります。
それ以外の項目も幅広く見るわけですが、たとえば雇用判断DIは労働力不足の状況を知る上で重要ですし、今の局面では販売価格判断DI、仕入れ価格判断DIなどが注目されるでしょう。
アンケートの癖には要注意
ちなみに、アンケート調査には癖があるので、要注意です。筆者が最も注目しているのは、販売価格判断DIが常に仕入れ価格判断DIを下回っているという事です。
もしも本当に販売価格の上昇率が常に仕入れ価格の上昇率を下回っているとするならば、過去に多くの企業が倒産しているはずなのですが、そうはなっていませんね。
日本人は物事を慎重に考える傾向がありますし、対外的にも「儲かりますか」と聞かれると「いいえ」と答える傾向があります。したがって、「販売価格は上がりそうもないけれども仕入れ価格は上がりそうで、困っている」と常に回答するわけです。
それでもアンケート自体には意味があります。たとえば販売価格判断DIと仕入れ価格判断DIの平均を企業の物価判断だと理解すれば良いわけです。さて、今回はどれくらいのインフレ予想なのでしょうか。発表が楽しみです。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。
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