優待株の吉野家、株価が今もコロナ前を回復できない「本当のワケ」とは
LIMO / 2022年4月6日 9時30分
![優待株の吉野家、株価が今もコロナ前を回復できない「本当のワケ」とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_28715_0-small.png)
優待株の吉野家、株価が今もコロナ前を回復できない「本当のワケ」とは
日経平均株価やTOPIXがコロナ蔓延前(2020年年明け頃)の水準を上回った中、吉野家ホールディングス(9861)の株価はいまだ超えることができていません。
それはなぜなのか。
今回はその背景を解説します。
吉野家の株価はどのように推移したのか
吉野家の株価は2022年4月5日の終値で2,383円でした。
2021年12月30日の終値である2,321円と比較すると、小幅に上回った水準です。
しかし、新型コロナウイルスの感染が広まる前の水準、具体的には2019年の大納会(2019年12月30日)の終値である2,902円と比べると、17.9%下落した水準です。
実はコロナ前の水準である2,902円は、2010年以降でも最高値圏に位置する株価でした。
そして吉野家は、コロナ蔓延以降この2,902円という水準を一度も上回ったことがありません。
株式会社吉野家ホールディングスの株価推移
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/c/4/-/img_c48aea0d0be8b07dd6d32964c861dc7030833.png)
日経平均株価やTOPIXは2019年12月30日の終値を足元で大きく上回っているにもかかわらず、なぜ吉野家は上回れないでいるのでしょうか。
吉野家の業績はどのように推移したのか
株価がコロナ蔓延前を上回れない理由を説明する前に、まず吉野家の業績を振り返ります。
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/d/2/-/img_d2331d626bc3a832da7c40985f7e24c913287.png)
出所:株式会社吉野家ホールディングス IR情報
営業利益の推移
2017年2月期:1,865百万円
2018年2月期:4,019百万円
2019年2月期:104百万円
2020年2月期:3,926百万円
2021年2月期:-5,335百万円
2022年2月期(会社予想):2,700百万円
コロナ前と置いた2019年12月30日はこの中で、2020年2月期に当たります。
2020年2月期というと、営業利益が3,926百万円と、前後の期と比較してかなり好調な期でした。
また、2022期2月期の営業利益予想もこの金額に達しない見通しです。
では、株価が今もこの時の水準を上回れていないのは、業績だけが要因なのでしょうか。
吉野家の業績に対して投資家はどのような期待を持ったのか
結論から言うと、業績だけではなく「会社と投資家それぞれの予想のミスマッチ」も要因だった可能性があります。
株価は一般的に、「期待」「事実」のふたつの要素で動きます。
期待とは、「今後、この会社は業績が伸びそうだ」という未来に関する投資家の思惑です。
ここで、2017年2月期1Qから2022年2月期3Q累計までの、各決算における営業利益の「対通期計画の進捗率」を見てみます。
なお、通期の進捗率とは、3Q累計決算発表時点の通期予想と実績を比較したものです。
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/2/c/-/img_2c1fe808f73f91f99ce7d46dc3c2f15518351.png)
出所:株式会社吉野家ホールディングス IR情報
2017年2月期
1Q:4.4%
2Q累計:27.8%
3Q累計:35.3%
通期:54.9%
2018年2月期
1Q:17.0%
2Q累計:48.5%
3Q累計:59.0%
通期:91.3%
2019年2月期
1Q:-4.3%
2Q累計:5.0%
3Q累計:-51.1%
通期:9.5%
2020年2月期
1Q:104.4%
2Q累計:293.6%
3Q累計:80.3%
通期:109.1%
2021年2月期
1Q:57.0%
2Q累計:68.6%
3Q累計:61.3%
通期:61.3%
2022年2月期
1Q:-7.6%
2Q累計:26.8%
3Q累計:51.7%
こう見ると、2020年2月期の1Qと2Q累計での進捗率が上半期のタイミングにもかかわらず100%を超え、通期予想を超過していたことがわかります。
2Q累計に至っては、293.6%にものぼっています。
これを受けて投資家は「今後、業績予想が大幅に上方修正されるだろう!」と見越して多く買いを入れたのではないでしょうか。
その結果、株価が近年で最高値の水準を付けた可能性があります。
しかしその後、3Q単体で営業赤字を計上するなどして営業利益の伸びは減速し、3Q累計時点の進捗率は80.3%まで下がり、通期実績も当初計画比109.1%での着地となりました。
業績予想の上方修正を期待していた投資家からすると失望を誘ったようで、3Q決算の発表以降株価は急落し、そのタイミングでコロナの蔓延が始まりました。
まとめにかえて
いかがだったでしょうか。
冒頭に記載した「日経平均株価やTOPIXは2019年12月30日の終値を足元で大きく上回っているにもかかわらず、なぜ吉野家は上回れないでいるのでしょうか」という問いについて、「投資家の期待を背景に、コロナ前に株価が過剰に上がっていたから」というのがひとつの可能性として考えられるのではないでしょうか。
今後の吉野家の業績・株価動向に注目です。
参考資料
株式会社吉野家ホールディングス IR情報(https://www.yoshinoya-holdings.com/ir/)
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