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財政破綻の瞬間に起きる大逆転を経済評論家がシミュレーションしてみた

LIMO / 2022年4月29日 20時15分

財政破綻の瞬間に起きる大逆転を経済評論家がシミュレーションしてみた

財政破綻の瞬間に起きる大逆転を経済評論家がシミュレーションしてみた

政府や銀行、投資家はどうなったか

国債が暴落し、財政が破綻する瞬間に大逆転が起きるので、財政は破綻しない、という様子をシミュレーションしてみました(経済評論家 塚崎公義)。

日本人投資家も国債を売ると、国債は暴落する

日本人投資家にとって、日本国債は為替リスクのない資産の中で最も安全なものです。したがって、積極的であっても消去法的ではあっても、日本人投資家は日本国債を買うのです。だから国債は暴落しないのです。

もっとも、それでも暴落する可能性はゼロではありません。日本人投資家が国債を売却すれば、国債価格は暴落し、財政は破綻するかも知れません。

しかし筆者のシミュレーションでは、それでも日本の財政は破綻せず、最後の瞬間に大逆転が起きるのです。半信半疑でお読みいただければ幸いです。

【財政破綻のシミュレーション】日本国債の格付が「投機的」に低下

日本政府が巨額の借金を抱え、しかも借金が減る気配が見えない中、米国の格付機関が日本国債の格付を「投機的」に格下げしました。

機関投資家の中には投機的格付の債券保有を禁じている所も多いので、大量の国債が売却されました。また投機家たちも投資家の売りを見越して国債の空売りをしたので、国債価格は文字通り暴落しました。

国債の流通価格が暴落すれば、新規の国債発行は行えなくなります。財政赤字のファイナンスが出来ないのみならず、過去の国債の満期償還もできず、財政は破綻してしまいます。

日本政府に出来る事は何もありませんでした。日銀が紙幣を印刷して当座の必要資金を提供するとしても、それがハイパーインフレをもたらす事は避けられず、財政破綻より更に悲惨な結果を招きかねなかったのです。

誰もが財政破綻を覚悟しました。国債価格の暴落は続き、額面100円の国債がかろうじて30円で取引されている状態でした。

投資家たちは、投げ売りによって生じた損失を見て、深い溜息をつきました。笑っているのは国債を空売りしている投機家だけ。しかし、投資家たちが本当に深いため息をつくのは、まだ先の事なのでした。

【財政破綻のシミュレーション】円からドルと実物資産へ

政府が破産する国の通貨など、持っていたい人はいないので、人々は円を手放そうと必死になりました。実物資産を買い急ぐ人が急増し、耐久性のある物の値段は急激に値上がりしていきました。

しかし、更に速く値上がりしたのは、ドルでした。実物資産よりもドルの方が遥かに流動性が高い(取引量が多く、買いやすい)ので、人々は、円を売ってドルを買ったのです。

ドルは高騰し(円は暴落し)、1ドルは300円で取引されるようになっていきました。政府は必死に外貨準備を売って通貨防衛を試みましたが、1ドルが300円を割る事はなく、その水準を維持するのがやっとでした。

【財政破綻のシミュレーション】政府が突然の勝利宣言・・・大逆転勝利であった

人々が「この世の終わり」を意識して深いため息をついていた時、政府が突然の記者会見を行いました。誰もが財政破綻を宣言するものだと思っていましたが、そうではありません。以下は会見の要旨です。

「我々は、勝利した。1兆ドルの外貨準備を1ドル300円で売却して300兆円を調達し、それを用いて額面1000兆円分の既発国債を額面の3割の値段で購入することが出来た。その結果、発行済みのすべての国債を政府が所有することとなった。我が国政府は今や無借金の超健全な政府になったのである」。

外貨準備の平均購入単価は100円程度でしたから、政府は100兆円の投資元本で1000兆円分の借金を返済した事になります。900兆円の利益です。同額の損失を、世界中の投資家が被った事になります。世界中の投資家が深い深いため息をつきました。

ため息をつく事も出来ずに真っ青になっていたのは、国債を空売りしている投機家でした。なにせ世の中にある国債は全て政府が持っています。空売りを買い戻そうにも、政府が何円で売ってくれるかわかりません。

政府が懲罰的な高値でしか売ってくれない、などという事になったら万事休す。ひたすら「政府がそんな殺生な事をする筈がない」と自分に言い聞かせる事くらいしか出来る事はありませんでした。

【財政破綻のシミュレーション】残骸の整理が始まった

投資や投機は自己責任ですから、損を被った投資家を政府が救済する必要など毛頭ありません。しかし、何事にも例外は存在するもの。それは、銀行です。銀行が投資の失敗で巨額の損失を出すと、貸し渋りが発生したり銀行が倒産したりしかねません。

銀行には「自己資本比率規制」があるため、自己資本が減ると貸し渋りをせざるを得ないし、倒産すると貸出金を回収せざるを得ないのです。日本経済を守るために、そうした事態は何としても避けなければなりません。

そこで政府は銀行に株券を印刷させて、それを買い取ることにしました。今や日本政府は実質無借金ですから、好きなだけ国債を発行して資金を調達できるわけで、調達した資金で銀行の株券を購入したのです。

余談ですが、銀行の印刷した株券は議決権が無いもので、銀行が将来の利益を用いて政府から買い戻すとの特約が付いたものでした。銀行は国有化されたわけではなく、従来通りの経営体制で営業を続けたのです。

銀行が倒産せず、自己資本も回復したので、貸し渋り等も起きず、世の中は何事も無かったかのように元通りになったのでした。投資家の損失と政府の儲け、という1点を除いては、ですが。めでたし、めでたし。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

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