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「遺族厚生年金があるから死亡保険はいらない」の落とし穴。遺族年金の条件とは

LIMO / 2022年5月9日 17時50分

「遺族厚生年金があるから死亡保険はいらない」の落とし穴。遺族年金の条件とは

「遺族厚生年金があるから死亡保険はいらない」の落とし穴。遺族年金の条件とは

厳しくて複雑…「遺族年金」の要件を確認

一家の大黒柱に万が一のことがあった場合に備え、個人で生命保険の加入を検討することがあります。

しかし、ご主人が会社員や公務員であれば「遺族厚生年金があるから死亡保険はいらない」と思っている方が意外と多くいらっしゃいます。

本当に死亡保険を備えなくても大丈夫なのでしょうか?確かに遺族厚生年金は一生涯受け取れますが、それだけで満足な生活を送れるのでしょうか。

後になって「やっぱり死亡保険に入っておけばよかったな…」ということのないよう、しっかり遺族年金の条件などを理解しておきましょう。

遺族年金とはどんな年金か

遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人(または加入していた人)が亡くなったとき、遺族に対して支給される公的年金です。

遺族年金には、遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金があります。それぞれ、亡くなった人が加入していた年金の種類、納付状況、家族構成、年齢などにより、遺族に対して支給される年金額などに違いがあります。

遺族基礎年金は子どもを養育するための年金

遺族基礎年金というのは、子どもを養育するための年金です。たとえば、国民年金だけに加入している自営業などの人が亡くなったときは、遺族基礎年金(国民年金)だけが支給されます。

一方、厚生年金に加入している会社員や公務員が亡くなったときは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。

ただし、遺族基礎年金を受給するには、条件を満たした子どもを育てていることが必要とされます。

支給条件

遺族基礎年金を受給するには、以下3つの条件、いずれかを満たす必要があります。

    被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること

    被保険者が、65歳未満の場合は、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること

    令和8年4月1日前までの期間において、死亡日の属する月の前々月までの1年間で保険料の滞納がないこと

支給対象

死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族が受け取ることになります。

子のある配偶者

子(配偶者がいない場合など)

子の条件には、18歳到達年度の末日を経過していないこと、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級に該当していることなどがあります。

また、配偶者には夫も含まれます。

支給額

遺族基礎年金の支給額は「年間77万7800円+子の加算額」です。

子の加算額は、1人目および2人目は各22万3800円です。3人目以降になると各7万4600円が支給されます。

厚生年金の被保険者なら「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」どちらも受け取れる

厚生年金保険の被保険者だった人が亡くなったときに支給されるのが、遺族基礎年金と遺族厚生年金です。

その際、たとえば亡くなった会社員や公務員の妻に子どもがいなければ、遺族基礎年金は支給されず、遺族厚生年金だけを受け取ります。

一方、妻に子どもがいれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が受け取れます。

支給条件

ただし遺族厚生年金を受給するには、以下3つの条件、いずれかを満たす必要があります。

厚生年金の被保険者が亡くなったとき、または加入中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき(遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を満たした人が対象)。

老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。

1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき。

支給対象

死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

第一順位:配偶者と子

第二順位:父母

第三順位:孫

第四順位:祖父母

遺族基礎年金の支給対象と比べて、範囲が広がりました。

子・孫については、18歳到達年度の末日を経過していない、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の場合が条件です。

また、配偶者には夫も含まれます。夫、父母、祖父母は55歳以上が条件です。

支給額

遺族基礎年金の支給額は、上述のとおり一律に定められています。しかし遺族厚生年金の支給額は、亡くなった人の厚生年金に加入していた期間の報酬額によって異なります。

およその金額としては、死亡した人の老齢厚生年金で受け取る報酬比例部分の4分の3になります。

2020年度(令和2年度)の厚生労働省年金局「厚生金保険・国民年金事業の概況」によれば、遺族厚生年金の平均月額(遺族基礎年金を含む)は8万892円です。

年間の受給額としては、8万892円×12ヵ月=97万704円ほどになります。人により金額は異なりますが、目安として捉えておけばよいでしょう。

遺族厚生年金は、一生涯受給できる年金です。しかし、遺族厚生年金を受給している妻が結婚した場合、遺族厚生年金を受給している子どもが養子になった場合など、失権することになりますので、注意しましょう。

まとめにかえて

遺族年金に含まれる遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取る際の条件には、大きな違いがあります。

もし、「遺族厚生年金があるから死亡保険はいらない」と思い込んで何も確認していなければ、大黒柱が万が一のとき生活資金が不足するかもしれません。

今のうちに、それぞれの支給条件および対象者などをよく理解しておきましょう。

参考資料

日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)

日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)

厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/000925808.pdf)

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