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公務員に就かせたい親、公務員に魅力を感じない子ども。実際の給与事情にせまる

LIMO / 2022年5月10日 17時50分

公務員に就かせたい親、公務員に魅力を感じない子ども。実際の給与事情にせまる

公務員に就かせたい親、公務員に魅力を感じない子ども。実際の給与事情にせまる

安定志向の親ほど持つべき視点

親が子どもに就いてほしいと願う職業。それはいつの時代も「公務員」が上位を独占しています。

株式会社クラレはこの春に小学校に入学する子ども4000人とその親4000人を対象にアンケートを実施し、「将来就きたい職業」「就かせたい職業」を調査しました(2022年4月5日公表)。

「男の子の親」の1位は公務員で、なんと4人に1人が希望している現状にあります。また「女の子の親」では公務員が2位で、2年連続で過去最高比率となりました。

一方で、人事院の調査によると「国家公務員に魅力を感じない」という学生の本音が垣間見えました。

親と子どもでは「職業」に対する価値観が相違していることが予想されます。

調査でわかった「国家公務員」に対する学生のイメージ

人事院が2022年3月25日に公表した「本年度就職活動を終えた学生を対象とする意識調査」によると、国家公務員に対する学生のイメージは次のようなものでした。

周囲の人に誇れる職業である(75.8%)

国を動かす仕事などスケールが大きい(71.9%)

国民のためにやりがいのある仕事である(71%)

これらの肯定的な意見は7割以上を占め、一見「国家公務員」に対するイメージはいいように捉えられます。

ではなぜ国家公務員という職業を選ばないのでしょうか。主な理由は次のものでした。

出所:人事院「本年度就職活動を終えた学生を対象とする意識調査」

採用試験の勉強や準備が大変(76%)

業務内容をこなすことが大変そう(61%)

業務内容に魅力を感じなかった(58.4)

超過勤務や深夜・早朝に及ぶ勤務が多そう(55.3%)

国家公務員になるハードルの高さもさることながら、業務内容や勤務環境を理由に挙げた方が目立ちました。

国家公務員のイメージとして「人間関係や職場の雰囲気が良さそう」と回答した人は3割にとどまるなど、環境に対して肯定的な印象を持つ人も少ないようです。

「周囲に誇れる仕事。でも魅力を感じない。」

これが国家公務員に抱く率直な印象なのです。

親が「子どもに公務員を目指してほしい」と願うワケ

一方で、親の目線では「公務員になってほしい」と願う人が多いようです。

先ほどの株式会社クラレの調査では、過去のアンケートでも「公務員」が根強い人気を誇っています。

出所:株式会社クラレ「2022年版 新小学 1 年生の「将来就きたい職業」、親の「就かせたい職業」」

20年前である2002年の調査に遡っても、「男の子の親」では1位、「女の子の親」では2位のままです。

公務員には「景気に左右されない」というイメージがあるため、安定を願う気持ちが表れるようです。

では本当に「公務員」は安定できる職業なのでしょうか。次は実際の給与事情についてみていきましょう。

国家公務員の給与事情

ここからは国家公務員の給与事情にせまります。人事院「令和3年国家公務員給与等実態調査の結果」から、毎月の給与を確認しましょう。

国家公務員といっても職種によってさまざまなので、ここでは「うち行政職俸給表(一)」に限定してまとめてみます。

国家公務員のうち行政職俸給表(一)の平均給与月額

出所:人事院「令和3年(2021年)国家公務員給与等実態調査」

本府省:45万71円(40.6歳)

管区機関:40万7894円(44.7歳)

府県単位機関:39万2309円(44.7歳)

その他の地方支分部局:38万1686円(43.3歳)

施設等機関等:35万340円(38.7歳)

()内は平均年齢です。また平均給与月額に俸給と諸手当(地域手当、広域移動手当、俸給の特別調整額、本府省業務調整手当、扶養手当、住居手当、単身赴任手当(基礎額)、寒冷地手当、特地勤務手当等)は含まれますが、特殊勤務手当や通勤手当、超過勤務手当などの実費弁償的または実績支給である給与は含まれません。

どこで働くかによってもばらつきが見られますが、全体としての平均は40万7153円でした。

2019年の平均は41万1123円なので、若干減少していることがわかります。「景気に左右されない」といわれる公務員ですが、実は民間の水準に合わせて調整が行われます。

近年ではコロナ禍で水準が下がった民間に合わせ、国家公務員のボーナスも引き下げられました。

「倒産・解雇」というリスクは会社員よりも圧倒的に少ないものの、「給与が劇的に高い」というわけではありません。

しかし親としては、子どもにこうした安定性を求めてしまうのでしょう。

「子どもの進路に寄り添う」親に大切なこと

親が子どもに就いて欲しい職業の代表格「公務員」。しかし学生にとっては、「周囲に誇れる仕事だが魅力を感じない」が本音でした。

言うまでもなく、子どもの未来は子どもが決めるものです。ただし子どもの幸せを願うのが親心ですよね。できれば苦労をせず、安定した職業を選んでほしいと思う方が多いものです。

子どもの進路に寄り添うには、「イメージ」よりも「客観的な事実」が重要となります。給与事情は公表された資料をもとに、じっくり分析してみましょう。

また2022年4月からは、高校の家庭科で「資産形成」の授業が始まりました。こちらの授業では、例えば「正規職員と非正規職員の生涯賃金の差」なども学びます。

「仕事の内容」「やりがい」だけでなく、賃金という大切な視点を学ぶことで、子どももより冷静に進路を選択することが望まれます。

その時に、親として客観的なアドバイスができることが理想ですね。いつの時代でも情報が武器となります。

参考資料

株式会社クラレ「2022年版 新小学 1 年生の「将来就きたい職業」、親の「就かせたい職業」」(https://www.kuraray.co.jp/uploads/624b81c283893/enquete2022_1.pdf)

人事院「本年度就職活動を終えた学生を対象とする意識調査」(https://www.jinji.go.jp/kisya/2203/gakusei-isikityousa-bessi.pdf)

人事院「令和3年(2021年)国家公務員給与等実態調査」(https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/koumu_jittai.pdf)

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