「まずは3年」は新卒の就職で本当に正しいのか?現在の新卒世代の会社選びの夢と現実
LIMO / 2022年4月30日 6時55分
「まずは3年」は新卒の就職で本当に正しいのか?現在の新卒世代の会社選びの夢と現実
このゴールデンウィーク(GW)も2023年3月卒予定の学生の方は就職活動で忙しいという方も多いのではないでしょうか。
就職は長い人生の中でも、多くの方にとって重要なライフイベントといえるのではないでしょうか。
そう考えると最初に就職する会社選びは非常に重要ということになります。
その一方で、若い世代の離職率は常に話題となります。
では、実際にどのくらいの離職率があるのでしょうか。
今回は、厚生労働省の資料や3年以内離職経験者の話などをもとに見ていくことにしましょう。
大手金融機関を2年で辞めてしまった若者のその後
都内私立大学の文系学部を卒業して国内大手金融機関に就職したAさん。
国内外の金融機関を中心に面接を受け、晴れて第一志望の金融機関にGW中に内々定をもらったといいます。大学のゼミの同級生などと比べると早いほうだったといいます。
また、入社後の配属では当初の希望通りではなかったものの、資産運用のプロフェッショナルの経験を積むことができる職場に配属され、周りから見れば順風満帆のスタートを切ったように見えていました。
しかし、Aさんはその金融機関を2年程度で辞めてしまいます。
その理由については以下のように話します。
「周りの環境から自分の10年後が何となく想像できてしまった」
「先輩や上司は優秀で毎日勉強になりましたが、自分がどこまでやれるのか外で試してみたかった」
こういいます。
Aさんはその後、外資系金融機関でキャリアを積んだといいます。
「新卒で入社した同期で会社を辞めたのは私がかなり最初の方でした。その後、同期も様々な理由で退職していった話は聞きましたが、入社後すぐに転職していった同期の理由のほうがポジティブだったように思います」
「入社後時間がたっての転職理由は、思うように昇進しないとか、体調を崩したとか、どちらかというと後ろ向きの理由だったと思います」
では、どの程度の割合の人が入社後3年以内に離職するのでしょうか。
3年以内に辞める新卒は約3割
2021年10月22日に厚生労働省から発表された「新規学卒就職者の離職状況を公表します」をもとに見ていくことにしましょう。
厚生労働省の資料からは、平成30年3月大学卒の離職率は31.2%とざっくり3割だということがわかります。
その内訳も、1年目で11.6%、2年目で11.3%、3年目で8.3%と、年次を経るにしたがってその割合が小さくなっています。
では、その離職率、どの会社でも同じなのでしょうか。
会社規模が小さいほど離職率は高い
同じく厚生労働省の資料によれば、新卒大卒就職者の会社規模別の離職率は図表のとおりです。
傾向で言えば、事業規模が小さいほど離職率が高く、事業規模が大きくなるほど離職率が低くなるといえます。
全体合計
H29年3月卒:32.8%
H30年3月卒:31.2%
5人未満
H29年3月卒:56.1%
H30年3月卒:56.3%
5~29人
H29年3月卒:51.1%
H30年3月卒:49.4%
30~99人
H29年3月卒:40.1%
H30年3月卒:39.1%
100~499人
H29年3月卒:33.0%
H30年3月卒:31.8%
500~999人
H29年3月卒:29.9%
H30年3月卒:28.9%
1000人以上
H29年3月卒:26.5%
H30年3月卒:24.7%
では、業界ごとに離職率はどうなっているのでしょうか。
産業別の離職率はどうか
ここからは同様に厚生労働省の資料から、主な産業別の離職率についてみていきましょう。
全体合計
H29年3月卒:32.8%
H30年3月卒:31.2%
宿泊業、飲食サービス業
H29年3月卒:52.6%
H30年3月卒:51.5%
教育、学習支援業
H29年3月卒:45.6%
H30年3月卒:45.6%
小売業
H29年3月卒:39.3%
H30年3月卒:37.4%
医療、福祉
H29年3月卒:38.4%
H30年3月卒:38.6%
金融業、保険業
H29年3月卒:24.8%
H30年3月卒:24.2%
電気・ガス・熱供給・水道業
H29年3月卒:11.4%
H30年3月卒:11.1%
このようにみていくと、一口に3年以内の離職率といっても、業界ごとにかなり差があることがわかります。
最も離職率が高いのが「宿泊業、飲食サービス業」で、最も低いのが「電気・ガス・熱供給・水道業」だということが見えてきます。
最初の就職先で長く勤めようと思えば、会社選びもそうですが、業界選びも重要ということが見えてきます。
「最近の若者は…」とは言うが本当はあまり変わっていない離職率
「最近の若者は…」というセリフは、以前はよく耳にしましたが、現在はどうなのでしょうか。
もっとも、その「最近の若者」の行動、ここでいう離職率はいつの時代もそう大きく変わっていないのが実際です。
厚生労働省の資料によれば、昭和62年から平成30年卒までの大卒の3年以内の離職率をみると、特にここ10年くらいは、ざっくり3割を挟んでもみ合いの展開となっています。
また、最近10年の若者よりも、平成10年から18年卒業の場合の方が離職率も高いということが見えてきます。こうした背景は就職氷河期世代とそうでない世代の差があるのかもしれません。
このように、景気の状況などのよっても差はありますが、時代や世代とともにその傾向が極端に大きな変化を示しているかというと必ずしもそうではないと見えます。
こうしてみてくると、「最近の若者は定着しない」というのも必ずしも正しくはなく、むしろ、過去で見ると平均的な水準にあるとすらいえます。
会社選びは慎重に
前出のAさんはこう言います。
「大学卒業後に就職した会社はなんだかんだ言ってもそのあともついて回ります」
「その後に転職を経験しましたが、面接時には『ああ、あそこにいたの。XXさん知ってる?』というような会話にはよくなりました」
「そこで共通の知り合いなどがいれば、妙な安心感が生まれるようで、その後の面接もうまくいった気がします」
「新卒で大企業に入るメリットは意外に少なくないかもしれません」
こうみると、最初に就職する会社選びは、様々な視点で慎重に検討したいところです。
参考資料
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00004.html)
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