本当に「男性育休」をとった夫婦のホンネ。不安と喜びのリアルな声とは
LIMO / 2022年5月13日 17時50分
本当に「男性育休」をとった夫婦のホンネ。不安と喜びのリアルな声とは
「育児介護休業法」のポイントも解説
男性の育休取得を促すための「育児介護休業法」。
いろいろな企業で育休の取得目標が公表されることもあり、男性でも「身近で育休を取得した人がいる」という方も増えてきたのではないでしょうか。
男性の育休制度をめぐっては
もっと普及してほしい
本当に戦力になるのか不安
などさまざまな声が上がっています。では、実際に育休を取得した父親やその家族はどんな感想を抱いているのでしょうか。
制度のポイントとともに「リアルな声」を見ていきましょう。
実際に「男性育休」を取得した家族の本音とは
制度の概要に触れる前に、実際に「父親として」育休を取得した方の本音をご紹介します。
2人目の出産を機に1ヵ月半の育休を取得したAさんと、自営業の妻の代わりに1ヵ月の育休を取得したBさんの事例を確認しましょう。
Aさんによると、普段から職場の雰囲気は良く、有給は取得しやすい職場環境だったようです。ただし育休中に代わりの人員が補充されることはありませんでした。
女性が育休を取得する場合、人員が補充されることが多いです。期間にもよりますが、ここに「男性育休」の1つ目のハードルがあるように感じられますね。
育休を取るにあたり、やはり不安事項は「給料の減少」でした。そのため育休期間については「ボーナスや給料の低下幅」を計算して決めたそうです。
育児をする上で「大変な時期」は個々で違うため、「できればこの期間までは取得してほしい」という希望が母親にはあるのではないでしょうか。
しかし実際には世帯収入を考え、どこかで落とし所を探るのが現実解となります。
またBさんのケースでは、妻が自営業のため「育休」という制度がありません。収入の心配はあったものの、初めての育児を一緒に行いたいという気持ちから、育休取得に至りました。
ただしBさんの会社でも人員補充は見込めないため、1ヵ月が限界だったようです。
同じく不安事項は「収入減」について。育休中は給与の約3分の2が支給されるとはいえ、夫婦2人とも収入が減るというのは、やはり経済的な不安が大きいといえるでしょう。
男性育休のメリットは複数
一方で、取得したときに感じたメリットは複数ありました。まとめて見てみましょう。
家族の時間が増える
子どものことだけ考えられる
上の子に愛情を注げたので、赤ちゃん返りの予防に一役買った
母親の大変さに気づけた
子どもの「初めて」を一緒に経験できた
誕生日などのイベント準備に時間が割ける
家事スキルがあがったので復職後も協力しやすくなった
上記のように、メリットも複数あります。「給料減」や「職場の人に気を遣う」というデメリットがある一方で、家族にとってのメリットは高いようです。
では家族の「本音」はどうでしょうか。
パパに育休をとってもらって良かった?妻の本音
Aさんの場合、妻も同じく育休を取得していました。
2人目の出産でしたが、お兄ちゃんのときとは違う体力の低下を感じ、出産後もなかなか体調不良が治らなかったようです。
ただし育休手当が減ることを懸念して、育休期間は延長しないことに決めました。広く普及している「女性の育休」でも、やはり経済面での不安は払拭されないようですね。
夫が育休を取得したことに関しては、「お兄ちゃんのお世話も頼めたので本当に助かった」ということです。
Bさんの場合、経済的不安はさらに大きいものでした。自営業なので自分自身の収入はゼロに。しかし「今は貯金ができない時期」と割り切り、夫婦で育児を楽しむことを優先できたようです。
ちなみに国民年金には、「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」があります。
出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間免除されるという制度です。自営業者が出産・育児をするときには、こうした制度を最大限利用することが大切ですね。
AさんもBさんも経済的不安を抱えていたものの、夫の育休には肯定的な感想を抱いていました。SNS等で厳しい声があがることもありますが、「他の人にもおすすめしたい」と感じたようです。
「育児介護休業法」とは?かんたん解説
これまでも段階を経て改定されてきた育休制度ですが、2022年4月1日からさらに3段階で改正が行われています。
2022年4月1日施行分の2つのポイント
「雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化」として、雇用環境の整備や制度の周知、意向確認が徹底されます。
また「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」として、雇用期間が1年あることという条件を撤廃し、広く取得できるように拡大されました。
2022年10月1日施行分の2つのポイント
「産後パパ育休(出生時育児休業)の創設」や「育児休業の分割取得」にて、父親の育休が柔軟に取得できるようになります。
2023年4月1日施行分のポイント
「育児休業取得状況の公表の義務化」により、従業員数1000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務づけられます。
こうした改正は今後も進むことが予想されますが、普及するためには乗り越えるべきハードルがあることも事実です。
育休取得の現状
厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、女性の育休取得率は81.6%、男性の取得率は12.65%です。
女性に比べればまだまだ少数派ではあるものの、推移を見ればここ数年で急激に上昇していることがわかります。
一方で「育休期間が5日未満の取得者の割合は28.33%」ということも明らかになっています。
「新生児期」や「里帰りから帰ってからの数日」など、夫がいてくれることで心強いコア期間はあるものの、「5日未満」の育休ではできることも限られます。
今後の制度改定にともない、男性育休が家族の戦力となる形で普及されることが望まれます。
まとめにかえて
男性の育休について、実際に取得した家族の本音や制度改正のポイントから見ていきました。
制度というハード面が整備されても、支える企業のソフト面ではまだハードルが残されています。
しかし数年前とは確実に情勢が変わり、取得率は今後も伸びていくことが予想されます。ここまで制度が整ってきたのは、先輩たちが長い期間をかけて声を上げ続けた結果とも言えます。
制度に課題が見つかるのであれば、次の世代につながるよう改善を求めていきたいですね。
参考資料
日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」(https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20180810.html)
厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/07.pdf)
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf)
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