60代「老後の貯蓄がない」は2~3割。定年後【むしろ増える支出】は大丈夫か
LIMO / 2022年6月7日 17時50分
60代「老後の貯蓄がない」は2~3割。定年後【むしろ増える支出】は大丈夫か
夫婦に必要とされる「2000万円」保有の割合とは
平均寿命が伸び続ける日本。厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」によると、日本人の平均寿命は2020年時点で男女とも80歳を超えています。
さらに内閣府の「令和3年版高齢社会白書」によると2025年には65歳以上の人口割合が30%を超えると見込まれています。
長生きは喜ばしいことである一方、「長生きリスク」が気になる方も多いのではないでしょうか。
調査によると、60代で貯蓄がない人は2~3割にのぼることがわかりました。「定年後は支出が減る」と考える方もいますが、実は増える出費もあります。
60代の最新の貯蓄事情とともに確認していきましょう。
60代で「老後の貯蓄がない」割合はどれくらいか
まずは金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)から、最新の貯蓄事情をみていきます。
実態がわかりやすいよう、「二人以上世帯」と「単身世帯」にわけて確認しましょう。
60代のうち二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)
貯蓄額平均値:2427万円
貯蓄額中央値:810万円
金融資産非保有:19.0%
60代のうち単身世帯の貯蓄額(金融資産ほ保有していない世帯を含む)
貯蓄額平均値:1860万円
貯蓄額中央値:460万円
金融資産非保有:28.8%
金融資産非保有、いわゆる「貯蓄なし」の割合は、二人以上世帯が19%、単身世帯が28.8%です。
全体の2~3割は貯蓄がないまま老後を迎えたことがわかります。
また貯蓄額は、二人以上世帯の方が多い傾向にあります。ここで平均と中央値の違いが気になる方もいるでしょう。
平均値とは、すべての値を足して個数で割った値です。これに対し、中央値とは値を大きい順に1つずつ並べたとき、真ん中にくる値です。
貯蓄などばらつきが見られる項目で参考になるのは、実態を表しやすい中央値と言えます。つまり二人以上世帯では810万円、単身世帯では460万円が60代の実態に近いということです。
老後には2000万円が必要だという「老後2000万円問題」も話題となりましたが、到達できているのは二人以上世帯で32.4%、単身世帯で26.1%ですね。
貯蓄なし世帯とほぼ同数なことから、貯蓄格差が垣間見えます。
60代「貯蓄なし」で大丈夫?定年後に増える支出に要注意
ここで「60代以降は年金がもらえるから、貯蓄がなくてもなんとかなるのでは」と感じた方がいるかもしれません。
定年を迎えれば仕事上の付き合いもなくなり、子どもの巣立ちと重なることが多いものです。確かに減る支出はあるものの、実は増える支出もあるのです。
公益財団法人 生命保険文化センター「セカンドライフの生活費は現役時代とどう違う?」を参考に見ていきましょう。
退職によって発生する支出の例
趣味や生きがいのための費用
近所づきあいの交際費
妻の国民年金保険料
国民健康保険料※
※健康保険から国民健康保険へ移るほか、定年退職前の健康保険に引き続き加入する、要件を満たす人が会社勤めの家族の被扶養者になる選択肢もある
定年後は「旅行を楽しみたい」「新しい趣味を始めたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
また自分が祖父母にしてもらったように、孫にお年玉やお祝いをあげることを考えると、月々の出費は意外とかさばります。
冠婚葬祭や健康維持費も増えてくるでしょう。こうした費用についても、あらかじめ考えておく必要があります。
老後に向けて「年金目安額」を知っておく
そうは言っても、「年金で足りるのでは?」という疑問は残ります。確かに年金が高額であれば、年金だけで暮らしていくことは可能です。
しかし日本年金機構の「知っておきたい年金のはなし」によれば、年金だけで生活する高齢者は、もはや5割以下しかいません。
今後の年金受給額は下がる見通しもあるため、自分の年金受給額は目安だけでも把握しておきましょう。
50歳以上の方であれば、誕生月に送られてくるねんきん定期便が参考になります。ただし50歳未満の方に送られてくるねんきん定期便には、現時点でもらえる見込額しか記載されていません。
この場合、ねんきんネットでシミュレーションするのがおすすめです。受給額の目安は社会の情勢や働き方によって変わるので、定期的に確認する習慣をつけたいですね。
まとめにかえて
60代のうち「貯蓄なし」の割合をみていきました。2~3割が貯蓄なしという中、「年金だけで生活する高齢者は5割以下」という事実もわかりましたね。
貯蓄の有無は、退職金や親の遺産だけで決まるものではありません。現役世代のうちから、老後を見据えてコツコツ準備した結果も大きいでしょう。
貯蓄ペースがなかなかあがらないのであれば、国の非課税制度である「つみたてNISA」や「iDeCo」などを使い、資産運用にチャレンジしてみるのも1つです。
掛け金の上限やリスクなどもあるので、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/)
公益財団法人 生命保険文化センター「セカンドライフの生活費は現役時代とどう違う?」(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1156.html)
日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」(https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/seido-shikumi.files/0000000011_0000028374.pdf)
厚生労働省「簡易生命表(令和2年)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/index.html)
内閣府「令和3年版高齢社会白書」(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/zenbun/03pdf_index.html)
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