理解できない校則「ブラック校則」はなぜ無くならない?文部科学省の見解とリアルな現場
LIMO / 2022年6月13日 17時50分
理解できない校則「ブラック校則」はなぜ無くならない?文部科学省の見解とリアルな現場
都立高校の例を確認
ひと昔前では大きな声で指摘されることもなかった理不尽な校則、いわゆる「ブラック校則」。近年はメディアでも大きく取り上げられ、そのたびにSNS上が否定的な意見で埋め尽くされることもしばしばあります。
髪型から靴下やスカート丈の長さなど、大人になると驚くほど「細かい校則」が存在していることを思い出し「あれは何の意味があったのだろうか」と思う人もいるでしょう。
SNSにより「そういう校則は当たり前だった」という空気感を打破するきっかけにもなりました。SNSを介し、かつてブラック校則で悩んだ大人や現在進行形でブラック校則に悩まされている中学生や高校生の声が、世間に広まりやすい時代になっています。
こうした世論の声を受ける形で、文部科学省は2021年6月に「校則の見直し等に関する取組事例について」を告知。
これを受ける形で、東京都教育委員会では今年3月に発表した「都立高等学校等における校則等に関する取組状況について」内で、髪の毛の色を黒色に染め直すといったブラック校則の代表的な校則の廃止が決定されたと報告しました。
理不尽なブラック校則ができた理由
家庭のように規模の小さく身近な集団にも「家庭内ルール」があるように、大小問わず様々な組織にルールが存在しています。学校生活での規律である「校則」ですが、ここまで大きなものになったのでしょうか。
現在の学校制度は戦後に整備されていきました。「校則」の転機となったのは旧文部省が1965年に発行した「生徒指導の手引き」の存在を無視できません。
当時問題となっていた若者の非行行動を改善すべく、学校での生徒指導の在り方が浸透していきます。
まえがきには以下の文章が記載されています。
「非行対策は、本来生徒指導の消極的な面であるが、学校における考え方や扱い方に時には誤りも見られるし、当面の大きな問題であるので、本書においては、この問題についても重点的に取り上げた」
その後、1980年代に校内暴力が全国的な問題となり、1981年に改訂版が発行され生徒指導で「トラブルの芽を事前に摘む」という考えが加速していきました。
厳しい校則を設けて生徒を管理するというシステムが、構築されていったことになります。
その後、2010年に文部科学省が「生徒指導提要」を刊行するまでの間、1981年版が教育の現場で「生徒指導のガイドライン」の扱いになっていたことになるのです。
【ブラック校則と言えど…】長年の習慣を全て変えるのは容易ではない
時代が変化しているのに、いつまでも1980年代風の校則では生徒や保護者も違和感を覚えるのはあたりまえのことです。ほとんど変化のなかった校則が、令和に入り見直しへと少しずつ切り替わってきているのは喜ばしいことです。
文部科学省は「校則の見直し等に関する取組事例について」の中で、「校則は、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内において定められるものです」と記しています。
メディアで取り上げられている校則は「必要かつ合理的な範囲内」を逸脱しているものも多く、迅速な対応が求められます。しかし、長きにわたり全く変わってこなかった全てを一度に校則を変えていくことは容易ではありません。
前時代的な校則であっても、基本的に公立学校では人事異動が定期的に行われます。そのため、どうしても前例を引き継ぐ形で校則も代々受け継がれています。「どうしてこの校則が追加されたのか」という背景が分からず、積極的に変える気持ちは芽生えません。
さらに、中学や高校は3年で卒業するため、たとえ生徒が名乗りをあげて校則を変えていく取り組みをしても、非常にタイトなものになります。
理想としては負の遺産のようなブラック校則をなくしたいけれど、それだけに注力することも難しいという現実があるのです。
校則は自由と責任の問題にもつながる
「○○中学校は、10年前の修学旅行で◇◇で問題を起こしたから今でもそこ行けない」という、都市伝説のような話を耳にした経験がある人は少なくないでしょう。何か問題が起きたら、校則や修学旅行での規則が厳しくなるということはよくあります。
筆者の身近でも、問題児の多かった学年の修学旅行では持ち物も最低限になり、班別行動の範囲や時間も大幅に縮小し、お土産代用のお小遣いも近隣の小学校の中で最低金額という小学校がありました。
問題が多発した学年が卒業してから徐々にルールは緩和されていったそうですが、このように学校側としては「何かある前の防止策」として厳しくすることは実際あります。校則は学校内での法律のような存在ですが、自由な行動には責任が伴います。
ブラック校則の問題解決は国の指針でも「絶えず積極的に見直すべき」とされています。改善または廃止するには教員だけではなく、在校する子ども達も積極的に関わって責任を自覚し、自主性を高めていくことも必要です。
時代の空気が確実に変わっている今、一方的に批判するのではなく「状況を変えていこう」と一歩前進することも、ブラック校則の是正に繋がるのではないでしょうか。
参考資料
文部科学省「校則の見直し等に関する取組事例について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00004.htm)
東京都教育委員会「都立高等学校等における校則等に関する取組状況について」(https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2022/files/release20220310_03/01.pdf)
文部科学省「生徒指導上の諸問題の推移とこれからの生徒指導-データに見る生徒指導の課題と展望-」(https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/1syu-kaitei/1syu-kaitei090330/1syu-kaitei.zembun.pdf)
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