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【NHK】受信料を廃止して税金で運営する場合を考察。メリットや注意点とは

LIMO / 2022年7月7日 6時15分

【NHK】受信料を廃止して税金で運営する場合を考察。メリットや注意点とは

【NHK】受信料を廃止して税金で運営する場合を考察。メリットや注意点とは

NHKの受信料は問題が多いので、廃止してNHKを税金で運営してみるのはどうかと筆者は考えます。(経済評論家 塚崎公義)

NHKの受信料は逆進的でコスト高

所得税は、所得が高い人ほど適用される税率が高いので、所得が2倍になると支払う税額が3倍にも3倍にもなりかねません。こうした税制を累進課税と呼びます。

これに対し、消費税は税率が原則として一定なので、所得も消費も2倍の人は支払う消費税が2倍で済みます。これを、金持ち優遇税制だという意味で「逆進的だ」と呼ぶ人もいるわけです。

消費税を逆進的と呼ぶか否かは別として、NHKの受信料は逆進的だと言って間違いないでしょう。

出典:日本放送協会「受信料の窓口」

NHKの受信料は、「貧しくてテレビが買えない人」は支払わなくて良いのでしょうが、貧しくてもテレビを持っている人は金持ちと同額を払わなくてはならないわけですから。

もう一つ、NHKの受信料は徴収コストが高そうだ、ということも問題でしょう。誰がテレビを持っているのかを調べて、払ってくれるように要請し、断られても粘り強く要請を続ける必要があるとすれば、徴収コストは大変大きなものと予想されます。

そうであれば、NHKは受信料で運営するのをやめて、税金を投入すれば良い、と筆者は考えています。税務署はどうせ徴税しているのですから、何かの税を少しだけ増税して受信料相当額の税収を確保すれば良いので、手間がかかりませんし、逆進性の問題も緩和されるはずです。

国営放送は政府のいいなりかを考える

税金で運営するようになると、NHKが政府の言いなりになって、政府に都合の良い番組ばかり放送するようになる、と懸念する人も多いでしょうが、筆者はそうした懸念は持っていません。

第一の理由は、放送内容への介入等々をするつもりであれば、今でも出来るわけで、「税金で運営するようになると事態が悪化する」というわけでは無いからです。現在政府が介入しているのか否か、筆者は知りませんが、今現在介入しているとしてもしていないとしても、現状が続くだけの事です。

第二の理由は、国立大学の教授たちが必ずしも政府に都合の良い研究や提言等をしているとは限らないからです。たとえば仮に、国立大学の教授たちをNHKの役員にしたとしても、政府の都合の良い番組ばかり作るようになるとは、筆者にはどうしても思われないのです。

「受信料を払った人だけ見られる」には無理がある

NHKは受信料を払った人だけが見られる、という制度設計は、理屈上はあり得るでしょう。現在すでに、有料放送を行なっている民間企業もありますし、NHKのBS放送もそうです。NHK全体を同じ扱いにすれば良い、というわけですね。

ただ、障害者向けの番組のように、有料放送に馴染まないけれども必要だ、という番組もあります。最低限そうした番組は税金で放送する必要があるでしょう。

選挙の際の政見放送や災害の際の報道なども、公共性の観点から税金で運営するのが良いと思います。

ニュース番組も、中立的な立場からの放送が必要で、それを担うのはNHKであるべきだ、という考え方もあり得るでしょう。もっとも、これについては国民的な議論が必要でしょうね。

他にも、色々ありそうです。たとえば美術品を紹介する番組はどうでしょうか。国立の美術館や博物館は税金で運営されているわけですから、国立の美術館や博物館の展示物を放送するのは税金でも良さそうです。文化や芸術を広めるというのは政府の役割の一つでしょうから。

もっとも、絵を見るのが好きな人等にとっては娯楽番組かも知れませんから、そういう人の事を考えると、民放の娯楽番組と同じ扱いをするという考え方もあるでしょう。そのあたりは、国民的な議論を深めていく必要がありそうです。

NHKを税金投入企業と民間企業に分社化しよう

一方で、NHKの番組の中にも娯楽番組は数多く見られます。そうした番組は、税金で放送するべきではありません。

一つには、税金はもっと有効に使おう、という事ですが、もう一つには官業が民業を圧迫してはいけない、という観点も重要でしょう。

そうなると、NHKを分社化して、税金を投入すべき番組は官営NHKが担当し、娯楽番組等は分社化した民営NHKが担当することになるでしょう。

その際には、上記のように税金で運営すべき番組とそれ以外の切り分けをどうするか、という問題があります。

ただ、ほかにも重要な課題がありそうです。といのは、受信料の支払いが実質的に任意になるわけですから、受信料収入が激減し、民営NHKが大幅赤字に陥るという可能性も考えておく必要があるからです。

長期的には民営NHKの規模を受信料収入に見合う所まで再構築する必要があるのかも知れません。現在すでにNHKで働いている人が定年退職によって自然減していくまでの間は、ある程度政府による補助金などを交付する必要があるかも知れませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから>>(https://limo.media/list/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)

参考資料

日本放送協会「受信料の窓口」(https://www.nhk-cs.jp/jushinryo/)

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