【学力格差】は経済力が全てではない。塾で遭遇した格差の真実
LIMO / 2022年7月12日 18時0分
![【学力格差】は経済力が全てではない。塾で遭遇した格差の真実](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_31103_0-small.jpg)
【学力格差】は経済力が全てではない。塾で遭遇した格差の真実
夏休みを前に、子どもの学習の定着について考えているご家庭も多いのではないでしょうか。
一般的に、家庭の経済力の違いが子どもの機会格差を助長していると考えられています。子どもの能力を最大限に伸ばしたいと多種多様な習い事をして才能を見つける。こうしたことができるのは、やはり経済力がなければ難しいものがあります。
とくに経済力の差が顕著に出てしまうと危惧されているのが学力格差です。
小さい頃から学習系の習い事に通っている子もいれば、家庭の経済的な事情で塾通いが出来ず進学を諦める子もいる。明治から昭和の頃の「貧しい子が必死になって勉強し身を立てる」という立身出世は、おとぎ話のような時代になっています。
しかし、お金があれば必ずしも学力が向上するとは限らないのも真実です。
経済力があることは有利だが
経済力と教育格差に関する話で取り上げられることが多いのが「中学受験」です。私立中学に通わせたいと考えた場合は、公立中学とは異なり大まかに以下の教育費がかかります。
入学金
授業料
学校施設費
修学旅行費(公立より高く、海外研修の場合もある)
通学費
昼食費
公立中学校よりも教育費がかかることを十分理解した上で、中学受験に臨みます。さらに、志望校への合格を手繰り寄せるには中学受験に特化した進学塾に通うことが定番です。
小学4年生クラスがスタートする小学3年生の2月入塾が一番多く、そこから塾代が発生することになります。
私立中学入学でもお金がかかりますが、それ以前から通塾費用という教育費を払い続けることになります。中学受験に挑戦するには、事前に「教育費を出せる」と判断できるだけの経済力が必要になってきます。
しかし、中学受験の主役は小学生です。高校受験や大学受験と違い一人で勉強スケジュールや模試の管理など処理できることは出来ず、親の関わりも大切です。
単に経済力の有無で合否が決まるほど簡単なものではありません。
親の関り方は学力にも影響する
塾にやってくるのは、教育熱の高い家庭の子だけでなく中学進学後の定期テストの結果をみて親が慌てて入塾の申し込みをしてきた子など、三者三様の理由です。
基本的に、塾代を出せるだけの経済力があるわけですが、親の年収以上に学力への影響が大きいと筆者が感じたのは、親子関係です。
文部科学省が2019年12月に開いた教育課程部会で配布された資料「家庭の社会経済的背景(SES)が困難な児童生徒への支援について」では、2013年度と2017年度の「全国学力・学習状況調査と保護者調査の結果」を基に、経済力ではなく保護者の意識や関与と学力の関係を指摘しています。
図 保護者の関与と学力の関連の例 <小学校・国語A>
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/2/5/-/img_25474150d6b30db1750ebc2197f5148b192073.png)
出所:文部科学省「家庭の社会経済的背景(SES)が困難な児童生徒への支援について」
読書習慣や親子のコミュニケーションの濃さが、学力向上に繋がっているとしています。筆者もこの点に関しては塾での仕事を通じて同意する点があります。
また、経済的に非常に恵まれている生徒の中にも学業不振の子がいましたが、そうした子達は親子のコミュニケーションが不足気味という共通点がありました。
親側は「お金は払うから後はよろしくお願いします」というスタンスで、子どもと関わり合うことも向き合おうとする気持ちもほとんど感じられず、驚いた事がありました。
裕福で普通の家庭からすると羨ましい程の教育費を出せても、親子関係が不安定で冷めていると学力向上に繋がることはなく、むしろ悪い方に出ることがほとんどです。
文化的活動は教養の土台になる
また、親子のコミュニケーションがあっても読み聞かせや情操教育のような文化的活動が乏しいと、学力の底上げに時間がかかることもあります。
裕福な家庭の子でも幼児期に文化的活動の経験が少ないと、語彙力や知っていることが同学年の他の子達よりも少ない印象を受けたことがあります。
子どもの語彙力獲得を振り返ってみると、授業内で学ぶなど学校を通して身につくものは差がほとんどありません。そのため、語彙力の差が出るのは家庭内での会話や読書に寄るところが大きいです。
乳幼児期から親が積極的に本を図書館で借りてきて読み聞かせをしてきた子と、読み聞かせを家庭ではほとんど行わず、保育所や幼稚園のみという子では触れてきた語彙数の差が生じてしまいます。
そして、親の言動や公園や動物園、博物館といった施設に連れて行き知的好奇心を促してきたかどうかも重要です。
小さい頃から様々な体験を通じて刺激を受けることは「知りたい」という気持ちを育てていきます。学力向上は単に勉強するだけでなく、「知りたい」という気持ちや、目標に向かって努力する気持ちが欠かせません。
幼児期からこうした読み聞かせや情操教育をするかどうかは、経済力以上に親の考えに左右されます。たとえ経済力があっても、こうした分野に興味関心のない親であれば「裕福な子だけれど家庭内での情操教育が乏しい子」になります。
経済力で学力の全てを語るのは無理がある
学力格差を助長するのは経済力、という論調が浸透し「お金で子どもの学力が決まる」と見る向きが強まっています。子どもに様々な体験をさせられるのも、金銭的に余裕があるからです。
しかし、いくら親がお金を持っていて塾通いや沢山の習い事をさせられても、親子のコミュニケーションが不足していたり、家庭内での文化的活動がほとんどなければ「学力向上」は難しくなります。
親子のコミュニケーション、読み聞かせや子どもの情操教育にプラスになる場所へ連れて行くなどし、学力の土台を作っていくことが経済力に関係なく大切なことです。
参考資料
文部科学省「家庭の社会経済的背景(SES)が困難な児童生徒への支援について」(https://www.mext.go.jp/content/1423048_5.pdf)
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