金融商品における手数料の明確化、英国はどう改革したか
LIMO / 2017年12月29日 21時35分
金融商品における手数料の明確化、英国はどう改革したか
英国に学ぶ-RDRという制度変更の影響
手数料の明確化とは何を求めるのか?
手数料に対する注目度がこれまでになく高まっています。つみたてNISAでは販売手数料なしと設定されましたし、金融庁は従来の「手数料の透明化」から一歩進めた「手数料の明確化」を推進しています。
「手数料の明確化」は、手数料の中身をそのサービスと結び付けて明らかにすることを求めていて、これは英国における「消費者向け金融商品の販売に関する改革(Retail Distribution Review;RDR)」と呼ばれる大きな制度変更に通じる議論といえます。
そこで、今回からこのRDRの概要とそれがもたらした影響を3回に分けてまとめてみます。
販売手数料バイアスを排除するために
英国金融当局は2001年6月に「Treating customers fairly after the point of sale」と題するレポートを発表して、「ハイレベルな原則(Principles)を構築して、全ての金融機関に(中略)顧客利益を尊重させ、顧客を公正に扱うことを求め」ました。これは2017年3月に公表された日本の「顧客本位の業務運営」に通じるところがあります。
このレポートに続いて、2005年には投資アドバイスの自由化、さらに2006年7月にRDRが第3弾として発表されました。
個人投資家に対する投資サービスで継続的に発生している課題は、不適正販売、高転売率、非継続的ビジネスモデルなどであると指摘し、これに対する対応策として導入されたのが、“運用会社や保険会社から販売会社やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)への手数料の戻しは全廃し、IFAの資格要件の厳格化を進める”ことでした。
金融商品ごとに手数料が設定されているのは、アドバイザーに手数料の高いものを販売する「販売手数料バイアス」を強め、市場全体から消費者のために効率的な商品を選ぶことを阻害すると判断したのです。
RDR導入の手数料への影響
2013年1月に手数料を廃止して、アドバイス・フィーを導入しました。この変化を、投資信託を例に考えてみましょう。
たとえば2012年12月までは、販売手数料が3%なら100ポンドの投資信託の投資額は、一度、運用会社にわたり、そのなかから3ポンドの販売手数料が差し引かれ、これが運用会社からアドバイザーに戻されます。投資家の資金は97ポンドだけが運用に回され、運用会社は資産運用チャージ(信託報酬のうちの運用報酬部分)をその運用資金のなかから受け取っていました。
この方法だと、消費者にとってこの手数料が見えにくいこと、アドバイザーが手数料の大きい商品を優先して消費者のニーズや志向を無視しがちになることが問題とされました。
これを全て廃止し、代わりにアドバイザー(販売会社)は投資家から運用のアドバイスを行うサービスの対価としてアドバイス・フィーを受け取るというルールに変わりました。投資家は100ポンド投資するとそれがそのまま運用会社で運用に回されます。そのアドバイスに対する対価は別にアドバイス・フィーとして、投資家がアドバイザーに直接支払うことになります。
その影響として、運用会社は自社の投資信託の魅力を上げる一貫として資産運用チャージを引き下げる方向に動くことになりました。
ただ、アドバイス・フィーはそのサービス内容に連動することから、必ずしも投資金額に比例するような形にはならず、結果として少額の投資家には相対的に高く、高額投資家には相対的に安くなるといった傾向になりました。全体として、アドバイス・フィーを投資金額に対する比率で見ると投資家の負担は上昇したといわれています。
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