確実に拡大が見込める介護市場での成長戦略とは
LIMO / 2018年1月4日 12時20分
確実に拡大が見込める介護市場での成長戦略とは
東証1部上場のソラストを例に考えてみる
介護市場は成長産業
人口減少や輸出競争力の低下、海外への生産移管などで国内の市場は縮む一方であると言われるなか、介護市場は今後の日本における数少ない成長分野です。実際、厚生労働省の試算によると、介護市場は現在の約10兆円から2025年度には21兆円へ約2.1倍という急拡大が見込まれています。
それは、超高齢化社会が確実に訪れるためです。すでに日本人の約27%は65歳以上の高齢者となっていますが、2025年には全人口の2割弱が75歳以上という超高齢化社会に突入すると予測されています。
個別企業の業績予想は、テクノロジーや規制の影響、さらに戦略の巧拙などにより3年先でも外れることは珍しくありません。まして2025年という7年先を正確に予想することは至難の業です。
一方、超高齢化という人口動態に関しては、戦争などの予測不能な事態が起きなければ、10年先でも正確な予想が比較的容易であると言われています。よって、介護市場が成長する可能性は極めて高いと見られます。
中小企業が多くM&Aが有効に機能する介護市場
介護市場に取り組む上場企業には、ニチイ学館(9792)、ツクイ(2398)、セントケア・ホールディング(2374)、ソラスト(6197)などがあります。ただし、大半が中小企業であるため、デイサービスだけを例にとると上位10社でも市場全体に占める割合は約5%程度に留まります。
もちろん、株式会社化や上場で大企業となることが必ずしも介護事業のサービスの質や従業員の待遇改善に直結する保証はありません。とはいえ、社会的な責任を自覚した信頼できる大企業が現れることは、ユーザーや従業員にとって”良いこと”である可能性は高いと考えられます。
このため、成長が見込める一方で寡占化が全く進んでいない介護市場においては、M&Aによる規模の拡大戦略が有効に機能すると考えられます。
M&Aで成長を目指すソラスト
では、具体的に介護市場におけるM&Aはどのような企業が行っているのかを、ソラストを例に考えてみたいと思います。
同社の2017年3月期の売上高は654億円、売上構成比は医療事務関連受託事業が78%、介護事業が19%、保育事業が2%で、現在積極的なM&A戦略により介護事業を第2の柱とすることを目指しています。
具体的には、介護事業の売上高を2017年3月期の125億円から、「早急に」300億円にまで引き上げることを目標としており、そのために2017年3月期には11件の案件(合計で年間18億円の売上高)を実行し、また2018年3月期にはベストケア(2017年9月期売上高30億円、株式取得額32億円)、日本ケアリンク(2017年3月期売上高42億円、株式取得額20億円)の2件のM&Aを完了しています。
ちなみに、2017年3月期の介護事業の売上内訳(単体ベース)は、訪問介護が23%、デイサービスが28%、グループホームが16%、有料老人ホームが10%、居住介護支援が5%などとなっており、特定の分野に偏らず、トータルに取り組むことが特色となっています。
また、M&Aにより売上が拡大しても利益が伴うのかが気になるところですが、同社では長年にわたり医療事務事業で蓄積してきたIT技術や人材マネジメント(人事管理やトレーニングなど)に関するノウハウを買収先に早期に移植することで、シナジー効果を発現させ、採算性を改善させていく考えです。
なお、2017年3月期の介護事業の営業利益率は6%でしたが、同社では2021年3月期には10%とすることを目標としています。
まとめ
12月20日に発表された同社の11月の介護サービス利用者数は、訪問介護では前年同期比+26%増、デイサービスが+95%増と、M&A効果もあり高い伸び率となっています。今後もこうした高い成長が続くのかをまずは注目したいところです。
また、同社は不断の業務効率の見直しにより、作業あたりの従業員数を減らす一方で、そこで生まれた利益は処遇改善により従業員に還元する取り組みをこれまで行っています。このサイクルが今後も順調に進むかどうかも注視したいところです。
さらに、長期的には課題先進国である日本で蓄積した介護のノウハウを海外展開にも活かすことが可能かも注目していきたいと思います。
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