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「ハードウェア+テック」で最先端を走るイノベーション都市「深セン」の魅力を探る

LIMO / 2018年1月11日 17時20分

「ハードウェア+テック」で最先端を走るイノベーション都市「深セン」の魅力を探る

「ハードウェア+テック」で最先端を走るイノベーション都市「深セン」の魅力を探る

なぜこの街はメガトレンドを生み出せるのか

“歴史上最速で成長した”といわれるほどの街は香港でも北京でもなかった

中国に「歴史上最速で成長した街」と称されることもある都市があります。それが、深セン(深圳)です。中国南東部、香港に隣接するこの都市は、以前は人口約3万人の漁村にすぎませんでした。それが1980年に中国政府によって経済特区に指定されて以降、飛躍的な成長を遂げているのです。現在の人口は約1,200万人。米国のシリコンバレーに匹敵する新たなイノベーション都市として世界の注目を集めています。

深センは漁村から港湾へ、そしてグローバル企業・製造業のOEM拠点へ、さらにはイノベーションハブへと急速に進化してきました。今や中国全土から一旗あげてやろうと息巻く人々が集まってきます。そうしたこともあってか、人口構成で見るとそのほとんどが労働人口で、お年寄りが少ないことも都市の特徴のひとつです※1。また、公用語は北京語で、隣接する香港とも違う独特の立ち位置を築いています。

また、深センは裕福な一面ものぞかせます。一人当たりGDPは中国主要都市で1位※2、国際特許出願数も1位※3。企業は113万社※4もあり、単純計算ではなんと約10人に1人が社長という計算になります。シリコンバレーがそうだったように、自ら立ち上げた会社を売ってお金持ちになった人がベンチャーキャピタルを始めるといったエコシステムもできあがっています。

※1 2015年。出所:深セン市統計局
※2 2015年。主要都市とは、一線都市(国際的な大型都市)および新一線都市(一線都市に次ぐ大都市)とされる19都市。出所:CEIC
※3 2016年。出所:中国国家知識産権局
※4 2015年。出所:深セン市統計局

深センには海外留学した若者が戻ってくる

ところで、中国人の富裕層の多くは子供を海外留学させます。こうした留学組はこれまで留学先で就職してしまい戻ってこないケースが多かったのですが、最近では学業を終えて中国に戻る人が増え、その帰国比率は78%(52万人)にものぼります※5

なぜ戻ってくるのかといえば「母国に帰ってきた方がビジネスチャンスがあるから」だといいますから、実にしっかりしたものですが、サンフランシスコやニューヨークでの暮らしを経験してきた人に「同じような環境で働ける」といって選ばれやすいのが深センだというのです。

実際に「中国の未来」ともいわれる深センは、新たなイノベーションが浸透しています。街中を電気自動車が走り、どんなお店でも支払いはスマホでできます。タクシーやレンタサイクルもスマホがあれば簡単に予約できます。一人カラオケ機や美顔パック自動販売機など、新しいビジネスをテストする場所としても用いられているようです。

また、深センの大手企業のオフィスはおしゃれで、各国のフードコートがあったり、バスケットコートがあったり……いわゆる米国西海岸的な雰囲気を醸し出しているところも多くあるようです。

こうしたことでも優秀な人材を引きつけられるのが深センの強みの一つといえるでしょう。

※5 2015年。出所:中国統計年鑑

深センの成長をけん引する産業とは

実は筆者自身、十数年前に、現在のように世界中から注目を浴びる前の深センを訪れたことがあります。昨年、久しぶりに訪れた深センは急成長・再開発により劇的な変貌を遂げ、見違えるほどきれいな街並みになっていて当時の面影はありませんでしたが、十数年前の電子街の名残りがリノベーションされた雑居ビルの並ぶ街角のそこここに現存しているのを見つけ、「昔ながらの深セン」を感じて懐かしい気持ちになりました。

実際のところ、深センを代表する企業はやはりハードウェア系の企業です。小さなスタートアップが多く、いろんな部品をつくる企業が居を構えています。

ここから大きく成長した企業も数多くあります。たとえば、2006年に創業し飛躍的成長を遂げたドローンで有名なDJIは深センに本社を置く企業として知られます。また、テンセントやファーウェイといったIT系の会社のお膝元でもあります。そして深センにはこうした大企業が投資の対象とするような、あるいはシナジーがありそうなテクノロジー企業もたくさん存在しています。

「ハードウェア+テック」が深センの産業を端的に表しているといえるでしょう。

深センには証券取引所も。どんな企業が上場しているのか

深センには証券取引所があります。中国の証券取引所といえば上海をイメージする人も多いかもしれませんが、実際のところ上海と深センではかなり様相が違います。上海はブルーチップ(いわゆる優良株)、金融や不動産が多く上場している一方、深センは製造業やIT企業、新興企業が多く上場しています。また、中国の有望なスタートアップ企業は深センでの上場を目指すことが多いといわれ、深セン証券取引所は世界でももっとも株式新規公開(IPO)が多い市場の一つとしても知られています。

個人投資家比率が非常に高く、良くも悪くも熱しやすく冷めやすいという部分はありますが、非常に活気がある市場だといえます。

上場している企業をいくつかご紹介しましょう。まず、監視カメラの会社ハイクビジョンです。ビデオ監視カメラのメーカーとして世界的な地位を築いていており、100以上の国や地域で同社の製品が採用されています。近年、人工知能を用いた映像認識にも力を注いでおり、政府が掲げるスマートシティ構想においても重要な立場を果たすと期待されます。

また、2016年にはドイツのロボット企業であるKUKAの買収で有名になった中国白物家電の最大手のひとつ、ミデア・グループや、外資企業の参入が極めて困難な中国の地方政府や警察、銀行などの多くを顧客とし、音声認識技術に強みを持つベンチャー企業・アイフライテックも最近急速に時価総額を上げ、市場での存在感を増しています。また、オンライン金融サービス大手のイースト・マネー・インフォメーション、スマートフォンの製造などで知られるZTEも深センを代表するイノベーション企業といえます。

ざっと見ただけでも、深セン証券取引所はハードウェアやテクノロジー、ヘルスケアなどにおける最先端の企業が数多く上場しています。海外企業の参入が困難な中国本土市場における、次世代のイノベーション企業を探すのに適した取引所と言えるかもしれません。

おわりに

中国は巨大な国内市場を持ち、政府の強力なトップダウンのもと最新技術の社会への導入や、産業振興が図られています。アリババやテンセントなど、近年世界でも存在感を強めているイノベーション企業も中国から出てきました。今後、これらの企業に次ぐ新星の登場も期待されます。

そうした企業が生まれるエコシステムを兼ね備えた、あるいは中国全土の次世代の企業が上場をめざすのが深センという都市です。その進化はまだまだ続きそうです。


(本稿は中国・深セン証券取引所に上場している企業を例示していますが、当該銘柄の売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、日興アセットマネジメントが運用するファンドにおける保有・非保有および将来の銘柄の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません)

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