日本の成長企業はマザーズとジャスダックの統合で増えるのか?
LIMO / 2018年1月10日 17時25分
![日本の成長企業はマザーズとジャスダックの統合で増えるのか?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_4939_0-small.jpg)
日本の成長企業はマザーズとジャスダックの統合で増えるのか?
東証1部偏重への変化にも注目
マザーズとジャスダックが統合準備を開始との報道
2018年1月6日に読売新聞は、日本取引所グループ(8697)が新興企業向け株式市場の「マザーズ」と「ジャスダック」を統合する方向で検討に入ると報じています。記事によると、統合の目的は日本を代表する新興市場としての位置づけを明確にして投資家の資金や上場企業を呼び込みやすくし、市場を活性化させることにあるとされています。
ちなみに、日本取引所グループ(JPX)は、これまでのところ統合に関して正式には発表を行っていません。そのため、実際にいつから統合が行われるかは現時点では不明です。また、統合後の新市場の名称が「東証3部」となるのか、あるいはそれ以外の名称になるのかなども不明です。
とはいえ、今後の日本の株式市場の行方を考えるうえでは重要なニュースであると思われます。そこで今回は、その背景や今後の影響について考えてみたいと思います。
東証1部偏重のきらいがある日本の株式市場
まずは、東京証券取引所(東証)のなかで、新興市場がどのような位置づけにあるかについて簡単におさらいをしたいと思います。
2018年1月9日時点での東証における上場企業数は3,603社となっています。このうち、東証1部が2,065社(全体の57%、以下同)、東証2部が521社(14%)、マザーズが246社(7%)、ジャスダック(スタンダード及びグロース)が749社(21%)、さらにTokyo Pro Marketが22社となっています。
一方、2017年11月の1日平均売買代金は、東証1部の3.7兆円(93%)に対して、東証2部は701億円(2%)、マザーズが1,076億円(3%)、ジャスダックが862億円(2%)と東証1部に大きく偏っています。
また、2017年12月末時点の時価総額は、東証1部が674兆円(96%)、東証2部が10兆円(1.5%)、マザーズが5兆円(0.8%)、ジャスダックが11兆円(1.6%)となっており、ここでも東証1部の存在感が圧倒的に大きくなっています。
今回報道された統合案は、東証1部に一極集中している現状を、新興市場であるマザーズとジャスダックを統合し活性化させることで変えていこうとしているということになります。
マザーズとジャスダックの違いとは
次に、マザーズやジャスダックが、そもそもどのようなコンセプトでできたのかを振り返ってみたいと思います。
マザーズは、1999年に既存の東証1部、2部(本則市場)とは異なる新興企業向けの市場として創設されています。特に重視されたのが「高い成長可能性」です。
このため、マザーズには成長企業のステップアップ市場という位置づけが与えられ、2011年にはそのコンセプトがより明確化されました。具体的には、比較的穏やかな上場廃止基準の適用は上場後10年までとされ、それ以降は本則市場と同水準の上場廃止基準が適用され、マザーズへの上場継続か市場2部への上場変更を選択することが求められるようになっています。
一方、ジャスダックの起源は、1963年に日本証券業協会が非上場企業の資金調達の場として設けた株式店頭市場にまで遡ります。これが1983年にベンチャー企業の資金調達の場として新店頭市場に改められ、その後、2004年に取引所免許を取得し、ジャスダックに名称を変更しています。
このように、マザーズと比べると歴史は古い一方、ジャスダックはベンチャー向けではあるものの、とりたてて「高成長」だけを強調した市場ではなく、多様な業態・成長段階の企業向けの市場というコンセプトになっています。
なお、上場申請時に求められる要件を見ると、流通株式の時価総額はマザーズ、ジャスダックともに5億円以上、東証1部および2部は10億円以上、流通株式比率はマザーズが25%以上、ジャスダックは条件なし、東証2部は30%以上、東証1部が35%以上などとなっており、ジャスダック、マザーズともに本則市場に比べると条件が緩くなっています。
マザーズやジャスダックの有力企業は?
直近のマザーズやジャスダックで、時価総額上位3社にランクされる企業は以下の通りです。
<マザーズ>
1位:ミクシィ(2121)
2位:CYBERDYNE(7779)
3位:そーせいグループ(4565)
<ジャスダック>
1位:ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
2位:日本マクドナルドホールディングス(2702)
3位:セリア(2782)
まとめ
上述のように、東証における取引売買代金の9割強が東証1部に集中しています。また、新興市場の売買の中心は個人投資家となっており、海外投資家の存在感は大きくありません。
このため、新興市場を活性化させることで東証1部への偏重を改めるという発想それ自体は好ましい変化であると考えられます。また、新興市場に多数の新たなベンチャー企業を呼び込むことで、日本でも米国におけるフェイスブックやグーグルのような新興企業が大きく育つことにも期待したいところです。
とはいえ、それがマザーズとジャスダックの統合だけで実現されるとは限りません。新興市場に上場している、あるいはこれから上場を目指す企業の全てが高成長を求めているとは限らないこと、また、言葉は悪いですが、上場だけを目的として安住する企業も(本則市場も含めて)存在していると見られるためです。
今後は、日本に成長企業を増やしていくために、マザーズとジャスダックの統合においてJPXが上場要件を「より成長を重視」したものに変えていくのか、さらに、統合以外にも成長企業を増やすための新たな施策を提示していくかを注視していきたいと思います。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
伸び続ける米国二大指数【S&P500】と【ダウ平均】の違いと共通点
MONEYPLUS / 2024年6月24日 7時30分
-
日経平均は小幅に3日続伸、米休場で方向感欠く 出来高・売買代金は年初来で最小
ロイター / 2024年6月20日 16時0分
-
訂正TOPIX定期入れ替え実施へ、銘柄1200程度に絞り込み 初回26年10月
ロイター / 2024年6月19日 23時42分
-
米エヌビディアが時価総額で世界2位へ 理論上の株価は1株0.98ドル→5万8032ドルの仰天
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月14日 9時26分
-
だから日本経済は停滞を続けている…「闇雲に上場を目指しその後成長しない企業が多すぎる」大問題
プレジデントオンライン / 2024年6月7日 9時15分
ランキング
-
120年ぶりの新紙幣に期待と困惑 “完全キャッシュレス”に移行の店舗も
日テレNEWS NNN / 2024年7月2日 22時4分
-
2小田急線「都会にある秘境駅」が利用者数の最下位から脱出!超巨大ターミナルから「わずか700m」
乗りものニュース / 2024年7月1日 14時42分
-
3メルカリの「単発バイトアプリ」利用者伸ばす世相 「何が利点なのか」利用者と店舗の声を聞いた
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 13時30分
-
4「新札ゲットできました」新紙幣求め銀行やATMに行列 導入の狙いは「偽造防止の強化」と「使いやすさ向上」 1万円札は渋沢栄一 5000円札は津田梅子 1000円札は北里柴三郎
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月3日 12時8分
-
5「7月3日の新紙幣発行」で消費活動に一部支障も? 新紙幣関連の詐欺・トラブルにも要注意
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 8時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)