『私をスキーに連れてって』から30年、スキー場は復活するのか
LIMO / 2018年1月17日 21時20分
『私をスキーに連れてって』から30年、スキー場は復活するのか
日本スキー場開発の業績から考える”目利き力”の重要性
今年はウィンタースポーツが盛り上がる?
1月も中盤、いよいよ冬本番です。今年は平昌冬季五輪が開催されることから、いつもよりウィンタースポーツの話題に触れる機会が多いのではないでしょうか。
また、1月16日の日経平均が取引時間中にバブル経済崩壊後の最高値を更新するなど、景気にもなんとなく明るさが見えてきたことから、久しぶりにスキーにでも出かけようかとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
ところで、皆さんは『私をスキーに連れてって』という映画をご存じでしょうか。原田知世主演のこの映画は、かつて日本中がスキーブームに沸いていた1987年11月21日に公開された作品です。
公開当時の日経平均は、直前に起きたブラックマンデー(10月19日)の影響もあり2万2,500円前後で推移していましたが、その後、バブル経済の進展とともに上昇し、1989年12月29日 には最高値 3万8,957円を記録しています。
そして、今年はこの映画が公開されてから30周年となります。
株式市場では、“バブル経済が再来しそうだ”という声が時折り聞かれるようになってきましたが、スキー場のほうは、いったいどのようになっているのでしょうか。
長野県のスキー場利用者はピーク比で3割の水準に
結論から先に述べると、日本のスキー場は日経平均とは対照的に、まだまだ低迷した状態にあります。そのことを確認するために、日本で最もスキー場が多い長野県のデータを見てみましょう。
昨シーズン(2016年11月から2017年5月)の延べ利用者数は661万4千人と前年比11%増となっています。ただし、ピークであった1992年に比べると約3割の水準に留まり、水準自体は1970年前半と同程度まで落ち込んだ状態です。
ここ数年は6~700万人台で推移しており、下げ止まりの兆しが少し見られるものの、まだまだ低迷を脱してきれていないのが実態です。
では、今後、日本のスキー場はどうなっていくのでしょうか。そのことを考えるために、東証マザーズに上場している日本スキー場開発(6040)という、文字通りスキー場を開発し運営している会社を通して考えてみたいと思います。
厳しい環境下でも過去5年間、営業黒字を継続している日本スキー場開発
日本スキー場開発は2005年に日本駐車場開発(2353)の子会社として設立され、2015年4月に東証マザーズに上場しています。現在、長野県(白馬、志賀、上田)に6カ所、群馬県(沼田)と岐阜県(奥美濃)にそれぞれ1カ所の合計8か所のスキー場を運営しています。
2017年7月期実績は、売上高が62億円(前年比+10%増)、営業利益が4.4億円(同4.4倍)となり、期初計画に対しては下振れしたものの増収増益を確保し、営業利益は過去5年間連続して黒字を確保しています。
また、2018年7月期の会社予想は、売上高が同+5%増、営業利益は同+36%増の増収増益が見込まれています。このように、スキー場の市場全体が低迷するなかで、同社の業績は比較的堅調です。
数あるスキー場のなかから優良物件を選択する”目利き力”がカギに
事業環境が厳しいなかで同社が堅調な業績を確保できている理由としては、スキー場運営の改善やインバウンド需要を取り込むための営業努力などの地道な努力の結果が大きいと思われます。また、それ以上に重要なことは、スキー場を取得する際の“目利き力”ではないかと考えられます。
長野県の場合、昨シーズンのスキー場数は94カ所(このうち営業中は85カ所)ありましたが、これはスキー場が最も多かった1996年の110カ所に比べて15%の減少に留まります。先述のように、スキー場利用者がピーク比で7割減となっていることに比べると、極めて緩やかな減少に留まっている、つまりスキー場は余っているということになります。
一方、スキー場は雪質、ゲレンデの大きさ、周辺施設(温泉など)といった様々な条件により優劣が決まります。このため、玉石混交な状態にある多数のスキー場のなかから、優良物件だけを選び取るという“目利き力”が、スキー場運営事業の成否を大きく左右すると考えられます。
まとめ
同社が1月11日に開示した2017年12月のスキー場来場者数は22.8万人(前年同月比6%増)でした。期初計画ではウインターシーズン期間中(11月~翌年5月まで)の来場者は前年並みを想定していたため、それに比べると、まずまずな出だしであったということになります。今後は平昌五輪や景気回復の影響を見極めながら、この好調が継続していくかが、まずは注目されます。
また、中期的には同社の目利き力を活かし、新たなスキー場の取得を継続していけるのか、さらに、業界全体として競争力を失ったスキー場の淘汰が進み、供給過剰状態が是正されていくのか、若者世代をスキー場に取り戻すための施策が強化されていくのか、なども注目していきたいポイントです。
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