ノーベル経済学賞で注目の「ナッジ理論」をおさらい
LIMO / 2018年1月23日 21時20分
ノーベル経済学賞で注目の「ナッジ理論」をおさらい
ビジネス、今日のひとネタ
昨年のノーベル賞では文学賞や平和賞が話題になりました。被爆者の方のスピーチは印象的でしたね。ところで皆さん、ノーベル経済学賞をとったのは誰かご存知でしょうか? 米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授です。この方は行動経済学の専門家で、彼が提唱したのが「ナッジ理論」。一体どういった考え方なのでしょうか?
ナッジ理論って?
「ナッジ(nudge)」は、英語で「そっと後押しする」という意味で、行動経済学においては「社会や環境、そして自分にとってよりよい行動を促すこと」を指しています。
身近な例でいうと、コンビニのレジの前に足跡をつけておいて、そこに並ぶことを誘導するということや、特定のメニューにだけ「おすすめ」を表示することなどが挙げられます。ここで大事なのは、「あくまで消費者には選択の余地を残した上で、自発的に選択したという感覚を与えること」です。
この考え方を公共政策にいち早く取り入れたのが欧米。イギリスでは2010年、アメリカでは2015年から、「ナッジ」を政策に活用しています。実際に、納税率や臓器提供カードの所持者数を上昇させるなどの結果が出ています。
日本でもいよいよ実行
そして日本では、環境省の委託によって、日本オラクルとシンクタンクの住環境計画研究所に加え、関西電力などのエネルギー事業者5社が参加する「ナッジ実証実験」が開始されることが、先日発表されました。
この事業は二酸化炭素の排出量を削減することを目標にしていて、国内の30万世帯を対象にしています。この事業のキモとなるのが、各世帯に定期的に送られるレポートです。このレポートは、各世帯に合わせてパーソナライズされており、電気・ガスの使用量やその推移に加え、省エネのためのアドバイスなどが記載されます。
省エネを促すことに利用
実はこのアドバイスの部分に、「ナッジ理論」が取り入れられるのです。
たとえば、「エアコンの代わりに扇風機を使えば、電気代が◯◯%下がりますよ」と書いても、省エネ行動を促す効果はあまり期待できません。しかし「あなたとよく似たご家庭はすでに扇風機を使っていますよ」や「あなたの電気料金はよく似たご家庭より年間で2万円上回っています」と記載すると、行動経済学でいう社会規範や損失回避の心理が働き、省エネをしようという気持ちが促されるのです。
なお、参加しているエネルギー事業者には、電力自由化で競争が激しくなる中での顧客サービスとしてこの事業に期待しているという面もあるようです。このプロジェクトに限らず、今後、「ナッジ理論」が社会にどのように取り入れられていくか、注目していく必要がありそうですね。
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