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【認知症介護】48歳長女、警察に介護放棄を疑われ限界寸前です。鬼電のたびに動悸が…

LIMO / 2023年12月17日 7時5分

【認知症介護】48歳長女、警察に介護放棄を疑われ限界寸前です。鬼電のたびに動悸が…

【認知症介護】48歳長女、警察に介護放棄を疑われ限界寸前です。鬼電のたびに動悸が…

家族関係も悪化「誰か助けて!」

2023年12月13日、認知症のアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の保険適用が承認され、開発元エーザイは、12月20日に販売開始を発表しました。

「あと5年、この薬が早く国内承認されていたら、私の介護生活は違うものになっていたかもしれない……」

認知症の実母を在宅介護する千秋さん(48歳・仮名)は、ちょっと複雑な表情で、こう言います。

今回は、実母の「介護放棄」を疑われた当事者家族のリアルなエピソードを交えながら、認知症の在宅介護の限界点や、家族が抱える苦悩について考えていきます。

認知症の症状は「緩やかに、確実に」悪化

主な登場人物

千秋さん:48歳・夫と娘2人の4人家族、実母宅から徒歩10分のマンションに暮らす

実母:80歳・要介護3、認知症中度。8年前に夫が亡くなったあとは一人暮らし

認知症の実母を近居で通い介護する千秋さんは、都内出版社に勤務する編集者。週に3日のテレワークは母の暮らす実家を仕事場とし、週2回だけ出社する勤務スタイルです。実家で過ごす日には食事を作り置きして冷蔵庫に入れています。

認知症を患う80歳の実母は、要介護3。60歳代初頭に重いうつ病を患いメンタルクリニックを受診していたため、比較的早い段階で軽度認知障害(MCI)の診断が下されていました。

ただし、うつ病を含むいくつかの持病の薬との飲み合わせの関係で、 認知症の進行を遅らせる薬の服用を始めた時期はかなり遅かったのだそう。

認知症の初期段階から連日続く「問題行動」

kusabana/shutterstock.com

認知症の初期段階では、金銭管理ができなくなったほか、連日同じ食材を買ってきて冷蔵庫で腐らせてしまう、娘やヘルパーが財布を盗んだと疑う、などの問題行動が連日続いたとのこと。

実はこれらが認知症の典型的な症状だと知った千秋さん。訪問介護や訪問看護などを始めとする「介護保険サービス」をフル活用し、夫や娘たちの協力を得ながら乗り切ってきたのだと言います。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

昼夜問わない「鬼電」の始まり。着信音に動悸

Irina Danyliuk/shutterstock.com

その後認知症の症状は緩やかに悪化。見当識障害(※)から、不安になると昼夜問わず千秋さんの自宅の固定電話を鳴らすように。

「私が実家にいないときは、ほぼ30分おきに自宅や携帯電話に着信が入ります。着信音とランプの光はもはや恐怖。鳴った瞬間から動悸呼び出し音の『幻聴』まで聞こえるようになってしまいました。

夜中の電話は地獄ですね。とらなければ延々に鳴り続ける。着信音を消音モードにすることも考えましたが、万が一火事が起こったときなどを考えると、踏み切れませんでした」

電話機の発信履歴からは、千秋さん宅が不在の場合は家族や友人宅に延々とダイヤルしていた様子が分かりました。長年疎遠になっていた親族や知り合いも含まれており、電話の相手先からの苦情が千秋さんに直接入ったこともあったそうです。

「なぜ電話をかけたのか理由を聞いても、当の本人は『電話なんてかけていない』の一点張り。まったく記憶にないようで、声を荒げて猛抗議してきました」

やがてその「鬼電攻撃」の範囲は千秋さんたちが想像もしていなかった相手先にまで及ぶように……。

※見当識障害:時間や場所が分からなくなること

警察から電話が……「介護放棄を疑われたとき」

yamasan/istockphoto.com

そんなある日、オフィスで働く千秋さんの携帯電話に実母宅の電話番号から着信が。折り返してみると、「A警察の者」と名乗る男性が状況を説明し始めました。

「お母さんから『娘がずっと来ていない。ほったらかしにされている。食べるものもない。このままだと命が危ない』と110番通報があり出動しました。娘さん、電話代わってもらえますか?」

電話を代わった実母は泣き叫びながら、こうまくし立てたそうです。

「親をこんな状態でほったらかしにして、よく仕事なんてできたもんだ。ずっと顔を見てない。電話もしていない。あんた私をこの先どうするつもりなの。死ねばいいと思っているワケ?あんな婿とは離婚して戻ってきなさい!」

最後に母と会ったのは前日の夜。上等なステーキ肉を焼いて「明日は一日会社に出勤だから来れないよ。カレンダーにも書いておくからね」と伝えたはずなのに……。

「母をなだめた後、先の警察官と再び話しましたが、やるせない気持ちになりました。

『お母さん、娘さんがずっと顔を見せてないって言ってるんですよね。最後に会ったのはいつ頃?』『でも認知症の診断がおりているんですよね?長いこと一人きりにしていたんですか?』『ケアマネージャーやヘルパーなどの支援は受けていますか?』」

と矢継ぎ早に訊ねられました。決して私を責める口調ではありませんでしたが、きっと介護放棄(ネグレクト)を疑っているんだろうな、って思うと切なくなっちゃって……」

と無力感をにじませながら話してくれました。

これ以上家族に迷惑はかけられない

Salim Hanzaz/shutterstock.com

千秋さん家族は不眠に悩まされ、ストレスはMAXに。かつては介護に協力的だった千秋さんの夫や娘たちも「おばあちゃん」に対し冷ややかな態度をとり始め、家族の会話も激減。

「もうこれ以上、母のことで自分の家族に負担をかける訳にはいかないと思った。この先も、母との同居はあり得ない」と千秋さんは言います。

認知症の不安定な精神状態に加え、もともと内臓疾患を持つ母を受け入れてくれる施設は決して多くはないと覚悟しています。実際にいくつかのホームから話を聞いたところ、医療依存度の高さから、ひと月40~50万円程度かかっても不思議ではないことが分かりました。

費用面でリーズナブルな特養(特別養護老人ホーム)は数年待ちとも聞いていますし、そもそも医療依存度の高い人の受け入れが難しい施設が多いと聞いています。

昼間はデイサービスに通所してもらい、居宅サービスの回数を増やしながら在宅で看取りまでを行う、自分の通い介護の頻度を上げる、といったことしか思い浮かばないのだと千秋さんは言います。

介護は「家族の絆を試す試練」でもある

出所:株式会社LIFULL senior「介護施設入居のタイミングに関する調査「きっかけは認知症」が46%と最多」PR TIMES(2023年8月3日)(http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000049958.html)

介護は、家族の絆を試す試練でもあると筆者は考えます。今回のケースでは「千秋さんと実母」「千秋さんと、夫・娘たち」のそれぞれが良好かつ安全な状態で暮らしていけるのかを考える必要がありそうです。

昔どんなに愛情があふれた家族だったとしても、「在宅介護の限界点」はそう遠くはないうちにやってくるでしょう。

ちなみに、LIFULL seniorが2023年8月に公表した「介護施設入居に関する実態調査 2023年度」によると、回答者2000人中の46%が、介護施設への入居を決めたきっかけとして「認知症」と答えています。

2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計される今。こんな状況が、みなさんにとっても「他人事」ではなくなる日が、いつか来るかもしれません。

参考資料

厚生労働省「レケンビ®点滴静注」(一般名:レカネマブ)日本においてアルツハイマー病治療剤として12月20日に新発売(https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202374.htm)

厚生労働省「軽度認知障害」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/kibou_00007.html)

株式会社LIFULL senior「介護施設入居のタイミングに関する調査「きっかけは認知症」が46%と最多」PR TIMES(2023年8月3日)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000049958.html)

厚生労働省 知ることから始めよう こころの情報サイト「認知症」(https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=WwE9LLpYbVZTIDMI)

厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop101.pdf)

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