【介護】83歳父が認知症に。48歳専業主婦が後悔する「親が認知症になる前にやっておくべきだった3つのこと」
LIMO / 2023年12月18日 20時35分
【介護】83歳父が認知症に。48歳専業主婦が後悔する「親が認知症になる前にやっておくべきだった3つのこと」
離れて暮らす親の「終活」どこまで把握できていますか?
年末年始、久しぶりの帰省をする人も多いでしょう。みなさんは離れて暮らす親の終活について、どこまで把握できていますか?
厚生労働省の推計によれば、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると見込まれています。
認知症が進むと、家族が代理で暮らしやお金にまつわる情報の管理を行う必要が出てきます。親や自分自身が「そうなった時」に備え、たいせつな情報の共有をしておきたいものですね。
最近、離れて暮らす83歳の実父が認知症と診断された佳子さん(仮名・48歳専業主婦)は「父が認知症になる前に、もう少し“終活”を手伝ってあげればよかった」と後悔している模様。
今回は佳子さんのエピソードを交えながら、「親が認知症になる前に聞いておくべき3つのこと」について考えていきます。同じく認知症の親を介護中である筆者自身の経験談も紹介します。
※記事中のエピソードはすべて実話に基づくものですが、個人の特定を避けるためインタビュー内容の一部を改変しています。また、認知症の症状や進行具合はその人によって異なります。医療機関を受診し、信頼できる医師の指示のもとで、適切な療養・介護を行ってください。
83歳父に認知症の診断が
埼玉県に住む佳子さん(仮名48歳・専業主婦)には、故郷の福岡県で一人暮らす83歳の父がいます。佳子さんを含む子どもたちはみな独立して遠方住まい。
早くして妻に先立たれて10年ほど、「身の回りのことはほとんど自分でやってきた」が口癖でしたが、最近、物忘れが増えたり感情のコントロールが難しくなってきました。つい最近、コンロを空焚きしてボヤ騒ぎを起こしたことをきっかけに心療内科を受診。認知症がある程度進んでいる状態であると医師から診断を受けたそうです。
現在、介護保険サービスを組み合わせて利用するとともに、佳子さんを含む3人の子どもたちが交代で遠距離介護を行っています。専業主婦の佳子さんはきょうだいの中でも最も時間の融通が利きやすいため、今後介護のキーパーソンとなることは確実です。
大学入学と同時に実家を出た彼女にとって、父との生活は30年ぶり。「父が認知症になってしまう前に、きちんと聞いておけばよかったと後悔していることが3つあります」と佳子さんは言います。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【親が認知症になる前にやっておくべきこと その1】既往症や服薬歴の確認
佳子さんが最初に挙げたのは「既往症や服薬歴」。
「父の保険証やお薬手帳の保管場所については以前から教えてもらっていましたが、若い頃の既往症・服薬歴についても確認しておけばよかったと後悔しています。
ここ数年の受診歴や服薬歴についてはお薬手帳や病院の予約票などからある程度は推測できましたが、現役時代の健康状態についてはさっぱり……」と佳子さんは言います。
認知症の兆候に気付いて受診をした際、主治医から今後の治療のためにこれまでの病歴や薬歴を詳しく聞かれたとのこと。
健康情報を時系列で記載したノートを、玄関先に置いておくのもおすすめ
親の認知面がしっかりしているうちに、持病や既往症などの情報を把握したメモを作っておくことで、認知症以外の急な病気やケガなどの際にも役立ちます。
ちなみに筆者は親の病歴を時系列で記載したノートを、玄関先の救急隊が目につきやすい場所に置いています。救急搬送の際に受け入れ先の病院を探してもらうときにも非常に役に立っていると実感します。
【親が認知症になる前にやっておくべきこと その2】交友関係や思い出の場所を聞いておく
ふたつめに挙がったのは、父の交友関係や思い出の場所などでした。
「現役時代の父は、いわゆる『企業戦士』。夜討ち朝駆けで働いていました。私たち家族と過ごす時間が少なかったので、若い頃の交友関係、例えば毎年届く年賀状の差出人たちとの関係などが把握できていないんです。
年賀状のやりとりが“形だけ”の関係だった場合は、相当長い間疎遠になっているでしょうし、例えば今後父が施設に入所したり、将来亡くなった時にお知らせすべき相手がいるのかなど、できれば知っておきたいですよね」
と佳子さんは話してくれました。
今朝のごはんは覚えていなくても、幼少期の記憶は鮮やかというケースも
認知症の人は、最近起こったことを記憶にとどめておくのは難しいけれど、昔のことは鮮明に覚えているというケースが少なくありません。
今朝の朝ごはんを食べたかどうか忘れてしまっても、幼なじみとのエピソードや現役時代の勤務先の電話番号などは鮮明に記憶に残っているケースを筆者は何人か見てきました。
昔の幸せな記憶を蘇らせてあげる
これは筆者の実体験ですが、認知症の母を訪ねてきた叔父(母の弟)が、「姉貴、昔の家の間取りを覚えている?」とおもむろに紙を取り出し、記憶をもとに見取り図を描き始めました。
するとそれまで無表情だった母の顔が生き生きと輝き、「ここが押し入れ。金魚鉢は下駄箱の上に……」と、昔暮らした家の様子をつまびらかに説明し始めたのです。
楽しく幸せな時期を一緒に過ごした人たちとの交流は、ときに認知症の人の心を明るくしてくれるものなのでしょう。この先認知症が進行すれば、家族の顔さえ忘れてしまう可能性もあります。
思い出話や写真を交えながら、昔の幸せな風景を記憶に蘇らせてあげることは、本人の心の安定に繋がり、それが介護する側の家族の不安や緊張がほぐれるきっかけにもなるのです。
もちろん、認知症の進行によってはそれが叶わないこともありますが。
【親が認知症になる前にやっておくべきこと その3】お金のことを再確認
「父の年金額も資産も把握していたつもりでした。また投資用のマンションを1室、賃貸に出して不労所得があることも知っています。
私たちきょうだいは、認知症が進むと金融機関の口座が凍結されたり、不動産の売買ができなくなったりする可能性があることを最近知りました」
と佳子さんは話してくれました。
「父からは、『もし介護が必要になったら証券口座にある投資信託の解約と、投資用のマンションの売却を頼む。老人ホームの費用は十分まかなえるはずだ』と聞いていたので資金面は安心してきたのに……。家族が売買を行うことができくなると困ります。急いで家族信託を検討しましたが、認知症になってしまってからでは締結できないのですね。自分たちの知識不足を悔いるばかりです」
と佳子さんは困惑しながら話します。
認知症で「資産が凍結される」リスク
金融機関に認知症であることを知られると、判断能力が十分ではないとみなされ「口座が凍結される」可能性があります。口座が凍結されると、本人や家族であっても資金を動かすことができなくなるのです(※)。
「家族信託」と「成年後見制度」は、その解決策として挙げられます。
※ただし、金融機関によっては、入院や介護施設費用との請求書など「資金が必要な理由が分かる書類」などを提示することで、相談に応じてくれる場合もあるようです。(参考:一般社団法人全国銀行協会「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」(http://%E9%A0%90%E9%87%91%E8%80%85%E3%81%94%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E6%84%8F%E6%80%9D%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E3%81%84%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E9%A0%90%E9%87%91%E3%81%AE%E5%BC%95%E3%81%8D%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85%E8%B3%87%E6%96%99))
家族信託と成年後見制度
このうち家族信託は高額なコストが不要で比較的気軽に利用できる制度ですが、認知症になる前に信託契約を結ぶ必要があり行う必要があります。よって佳子さん父のケースでは対象外。
一方、成年後見制度の利用には家庭裁判所への申し立てが必要となり、時間とコストがかかります。
実は筆者自身、認知症の実母の資産を管理していくうえで成年後見人制度の利用を検討中の一人。しかし、この制度はまだ我が家にとって気軽に利用を決断できるものではないと感じています。
後見人には親族以外の人が選ばれる可能性が高いこと、さらに「本人が判断能力を回復して裁判所取り消し審判を受けない限り、本人が亡くなるまで成年後見人制度をやめることができない点など、ハードルの高さを感じている人は筆者だけではないでしょう。
離れて暮らす親の情報、どこまで把握できていますか?
今回は親が認知症になる前にぜひ聞いておきたいことをテーマにお話ししました。佳子さんは「もっと早く、父の終活を手伝ってあげていればよかった」と後悔しています。
ちなみに、株式会社エコリングが2023年11月22日に公表した調査結果によると、「親の終活状況を知らない」「今まで終活について話したことがない」と回答した人は実に7割を超えています。
年末年始は家族の心の距離を縮めることができる絶好の機会。親が元気なうちに、色々なことを話しておけると良いですね。
お金や医療にまつわる重要な情報、そして懐かしく幸せな思い出。
たとえ認知症とは無縁で天寿をまっとうできた場合でも、これらは介護の方針を決める際や、いずれ訪れる相続などの手続きに役立ちます。家族の歴史を刻むうえでも、親が元気なうちにぜひとも聞いておきたいものです。
みなさんは離れて暮らす親の「終活」、どこまで把握できているでしょうか。
参考資料
厚生労働省 知ることから始めよう こころの情報サイト「認知症」(https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=WwE9LLpYbVZTIDMI)
厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop101.pdf)
一般社団法人全国銀行協会「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/pr/news320326.pdf)
法務省「家族信託とは?」(http://%E5%AE%B6%E6%97%8F%E4%BF%A1%E8%A8%97%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F)
一般社団法人家族信託普及協会「家族信託とは?」(https://kazokushintaku.org/whats/)
厚生労働省「成年後見はやわかり ご本人・家族・地域のみなさまへ 成年後見制度とは」(https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/)
株式会社エコリング「72%の人は自身の親の終活状況を「把握していない」と回答。親の死後を考えると終活は"してほしい"??ホンネを徹底調査!」(PR TIMES)2023年11月22日(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000132880.html)
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