「大学の2018年問題」への対応策〜日本電産永守社長が語る
LIMO / 2018年1月26日 20時40分
![「大学の2018年問題」への対応策〜日本電産永守社長が語る](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_5075_0-small.jpg)
「大学の2018年問題」への対応策〜日本電産永守社長が語る
「4つの大波」を長期的なビジネスチャンスへ
「4つの大波」が続々と到来する日本電産
いよいよ決算シーズンが始まり、その皮切りとして日本電産の決算説明会が1月24日に行われました。説明会には、同社の創業者で現在も経営トップである永守重信会長兼社長の発言を直接聞くため、いつものように多くの機関投資家、証券アナリスト、マスコミ関係者が集まっていました。
今回の決算説明会で特に強調されたのは、創業以来の「4つの大波」が続々と到来しているということでした。
「脱炭素化の波」(クルマの電動化の急速な進展)、「ロボット化の波」(人手不足などを背景にしたロボット活用の急速な広がり)、「省電力化の波」(省電力性能が高いブラシレスDCモータの急速な採用増)、「物流革命の波」(農業や物流分野でのロボット・ドローンの活用の急速な伸び)の4つの波が一気に同社に押し寄せているということです。
これらの「波」は当然ながら同社にとっては大きなビジネスチャンスとなります。その一方で、こうした新規需要の拡大を取り込むためには、それに対応した人材の育成が中長期的な課題にもなります。
今回の決算説明会では「人材をどのように育成、獲得していくのか」といった趣旨の質問がありましたが、これに対して永守氏は、「2018年問題」というあまり聞きなれない言葉を取り上げ、その問題に対する取り組みについて語っています。
「2018年問題」とは何か
「2018年問題」とは、大学に入学する18歳人口が減少することです。18歳人口は今年44歳を迎える方が18歳であった1992年度の約205万人をピークに、2009年度には約121万人にまで落ち込んでいます(下図参照)。
その後は現在に至るまでほぼ横ばいで推移してきましたが、2018年以降再び減少し、2031年には99万人まで減少することが予測されています。
人口に関する予測は、将来予測のなかで最も的中率が高いものとされています。そのため、このトレンドは現実のものとなる可能性が高く、とりわけ大学経営を考えるうえでは大きな問題となっています。
ただし、永守氏は今年4月から京都学園大学の理事長に就任するとはいえ、大学経営の危機を語ったわけではありません。経営者の立場から、今後は大学生だけでなく新卒者も減少に向かうという危機に対して、同社や永守氏自身の取り組みが語られたのです。
18歳人口の推移(単位:万人)
(/mwimgs/d/f/-/img_df4402c5162fb03da790c65aa21db10442503.jpg)出所:内閣府資料
英語が話せる人材を育成、2022年には工学部を新設
永守氏は、「企業は顧客が欲するものを開発し販売するのに、大学はそうはなっていない」、つまり日本の多くの大学が、新卒者を採用する企業の役には立っていないことが大きな問題であると言います。
とりわけ、43か国で事業を展開している同社としては、新卒者に英語力が不足していることが決定的な問題であるとしています。
永守氏は、第2外国語まで授業を受けながら英語すらまともに使えないのであれば英語に集中すべきと考え、今後、京都学園大学ではTOEICが650点以下の学生は卒業させないことも検討しているとのことでした。
また、京都学園大学に2022年に新設予定の工学部では、モータ、ロボット、EVのエンジニアを中心に育成していく方針であるとのことです。
永守氏は、工学部を新設する理由として、「なにもノーベル賞を取る学生を育成しようとは思っていない。即戦力となる学生の育成をしたい」と述べ、新設の工学部は同社で必要とされる技術の習得を目的に運営していくとしています。
現状、同社はこれまで長年かけて育成してきた東南アジアのエンジニアを日本に招き、技術者不足を補っていますが、2020年代後半には、永守氏の肝いりで新設される京都学園大学工学部出身者の活躍が期待できそうです。
まとめ
今回の決算説明会では、永守氏が大学教育に本格的に取り組むことが改めて確認できました。
大学教育を変えていくためには、それなりの時間と労力が必要です。そこにあえて取り組むのは、それだけ「4つの波」が大きく、また長期間続くトレンドであり、同社にとって大きなビジネスチャンスとなることに永守氏が強い確信を持っているからだという見方もできるのではないかと感じられました。
18歳人口の減少は誰にも止めることはできませんが、自らがリスクを取り、その危機を大きなビジネスチャンスに変えていく同社の取り組みを、今後も大いに注目していきたいと思います。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
少子化で減り続ける若手社員…膨らむミドルシニア社員の活用が企業の課題に
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月30日 12時0分
-
佐賀に新大学は必要?「県内進学率16%」の危機感 地元で賛否、少子化や定員割れでも大学作る意義
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 8時10分
-
岸田社長を「今回は本物」 ニデック総会で永守氏
共同通信 / 2024年6月18日 18時9分
-
永守重信の教育に対する思い 奨学金制度「KUAS未来奨学金」新設
PR TIMES / 2024年6月11日 18時15分
-
中堅は「給料減」 相次ぐ大手企業の「初任給アップ」の背景にある悲しい事情
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月11日 7時15分
ランキング
-
1小田急線「都会にある秘境駅」が利用者数の最下位から脱出!超巨大ターミナルから「わずか700m」
乗りものニュース / 2024年7月1日 14時42分
-
2ローソン、7月24日上場廃止 KDDIとポイント経済圏の拡大などを目指す
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月3日 17時46分
-
3メルカリの「単発バイトアプリ」利用者伸ばす世相 「何が利点なのか」利用者と店舗の声を聞いた
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 13時30分
-
420年ぶりの新紙幣に期待と困惑 “完全キャッシュレス”に移行の店舗も
日テレNEWS NNN / 2024年7月2日 22時4分
-
5「新札ゲットできました」新紙幣求め銀行やATMに行列 導入の狙いは「偽造防止の強化」と「使いやすさ向上」 1万円札は渋沢栄一 5000円札は津田梅子 1000円札は北里柴三郎
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月3日 12時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)