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「月8万円の年金が吹っ飛ぶ!」80歳母の認知症介護で発生した<想定外の出費>3例

LIMO / 2023年12月27日 19時55分

「月8万円の年金が吹っ飛ぶ!」80歳母の認知症介護で発生した<想定外の出費>3例

「月8万円の年金が吹っ飛ぶ!」80歳母の認知症介護で発生した<想定外の出費>3例

2023年もあとわずか。認知症の実母を近居で介護する筆者は、毎年この時期から確定申告に向けて、医療費の領収書の整理を行い、通帳の記帳を終え、家計簿を眺めて一年間のお金回りを振り返ります。

我が家は訪問介護や訪問診療といった介護保険サービスをフル活用していますが、認知症が一段と進んだこの1年間は、介護費用や医療費以外の「想定外の出費」がものすごく増えた!という印象。

今回は、認知症の母を介護して7年目を迎えた筆者が、今年発生した「想定外の出費」のうち、インパクト高めな3つについてお話ししていきたいと思います。

※認知症の症状や進行具合はその人によって異なります。医療機関を受診し、信頼できる医師の指示のもとで、適切な療養・介護を行ってください。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

月8万円の年金なのに「毎月の自動引き落としは5万円超」

beauty-box/shutterstock.com

さて、母(80歳・要介護3)の手取りの年金額は、遺族年金も合わせてとひと月8万4000円。

2023年12月、厚生労働省が公表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、シニア女性の平均年金月額を見てみると、国民年金だけなら5万4426円、女性10万4878円です。

女性の年金額としては「極端に高くもなく、低くもなく」といったところでしょうか。ちなみに、年金口座から毎月引き落とされている医療・介護系の費用は以下の通りでした。

訪問介護(ヘルパー):5478円

福祉用具レンタル(手すりなど):7890円

訪問リハビリ(マッサージ):5428円

訪問診療(往診):2万4983円

訪問看護(薬の仕分け・入浴介助):5913円

これだけで4万9692円。加えて、電気代を始めとする公共料金なども上乗せで引き落とされていくわけです。もちろん食費などその他の支出がさらに別にかかります。

シンプルに「年金だけじゃ足りない」というわけですね。

もちろん介護保険や高額介護サービス費、高額療養費など、要介護シニアが頼れる公的助成はいくつかあります。また、民間の医療保険に入って備えている人も多いでしょう。

でも、そういった制度ではカバーしきれない出費がとても多くて、結局は貯蓄の切り崩しになるわけです。

認知症が進み判断能力が衰えていくと、日常生活は想定外のできごとの連続です。その中でも、筆者が今年経験したインパクト高めの出費について、次でお話ししていきます。

【実体験】認知症介護で発生した「想定外の出費」3例

ここからは、認知症の母を介護中の筆者が今年経験した「想定外の出費」の中でも、インパクトが高かった3つについてお話ししましょう。

想定外の出費 その1「補聴器の買い替え」

Iurii Chornysh/shutterstock.com

今年に入ってから、5万円ほどする補聴器を立て続けに3度紛失した母。

初回購入時は自治体の「高齢者補聴器購入費助成制度」を使いましたが、利用できるのは一人1回限り。さいしょの紛失時はメーカーの紛失保証のおかげで助かりましたが、3度目はすべて自腹で支払うことに。

元来きちょうめんな性格だったので、これは想定外の出費でした。

主治医から「補聴器を買うときは紛失保証をつけたほうがいいよ!」と言われてはいましたが、「ああ、このことだったのか」と合点がいきます。

また加齢に伴う聴力の低下は、特に認知症の人にとっては要注意。

「家族との話題に入っていけない」「自分の悪口を言われているのではないか」という気持ちから、孤独感や疑心暗鬼を募らせ、気分の落ち込みや暴言に繋がってしまうことも。

筆者の経験上、補聴器のような取り扱いに注意を要する道具は、できれば認知面が低下する前に慣れておいてもらえると理想的かもしれません。スマートフォンやタブレット端末などもそうですね!

シニアの親御さんには、元気なうちに「使えるデバイスを少しでも増やして慣れておいてもらう」ことを強くお勧めします。

想定外の出費 その2「電気代爆上がり。たぶんつけっぱなしが理由」

takasu/shutterstock.com

さて、母の年金口座の通帳を久しぶりに記帳したら、電気代の跳ね上がり方にビックリ!

1人暮らしの高齢者世帯、前年同時期には1万円台だったものが、今年の夏は3万円台、秋以降は4万円台にまでアップしていました。

「さすがにこれは、最近の電気代高騰とは別のところに原因があるはずだ……」

そういえば、最近は使っていない部屋の照明やエアコンなど、ありとあらゆる部屋で電気のつけっぱなしが見られるようになっていたことを思い出しました。

最初は「単純な消し忘れかな?」程度でしたが、実はリモコンやスイッチの扱いができなくなっていたことも大きな原因だったようです。

操作方法が分からなくなったり、指の力が弱くなりボタンが押せなくなってしまったりしたことも、つけっぱなしの原因だったのだと思います。

真夏に暖房をガンガン効かせ、テーブルの上の食べ物は傷みかけている、という日もあったっけ……(※)。

※認知症の人の「見当識障害(自分のいる場所や、いまの季節や時間が分からなくなる)」は、筆者の母の例のように、本人や家族の日常生活にも大きな影響を与えます。

想定外の出費 その3「町内会に莫大な寄付金!?」

myboys.me/shutterstock.com

筆者が最も驚いたのは「町内会の寄付金」。毎年町内会の集金係さんに渡す、神社の夏祭りの寄付金です。

筆者が知る限りでは、母はこの手の寄付金には「ケチる」人で、過去30年以上いつも500円玉1枚だったはず。ところが今年は「金伍萬円」を渡していたのです!例年の100倍となると、まさに「莫大な寄付金」ですね……。

のちに筆者はこれを、町会掲示板の「ご芳名欄」で知ることになります。

「通販で高額な買い物をしたり、オレオレ詐欺に騙されたりするとかじゃなくて良かったじゃん!」

と、家族で苦笑いしましたが、これをきっかけに、母の通帳・ハンコなどの貴重品は筆者が預かることに。手元に置いておく現金も「5万円以内」と決めました。

ところで「一般的な介護費用」ってどのくらい?

出所:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」(http://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf)

介護にかかるお金にはもちろん個人差がありますが、ここからは平均的な介護費用に関するデータについてみておきましょう。

生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、平均的な介護費用の月額(※)は「在宅で4万8000円、施設なら12万2000円」。また、一時的な費用の合計だけで約74万円という結果に。

また、介護期間の平均は約5年。一時的な費用の合計と月々の費用のトータルは、在宅介護で約370万円、施設介護で約820万円となります。

ただしこれらは介護費用が「0円」だった人も含めた平均額です。

※公的介護保険サービスの自己負担費用を含む

【推計】認知症の介護費用ってどのくらい?

さいごに、認知症の人の介護や医療にかかる費用の平均についても、慶應義塾大学と厚生労働省の共同研究の結果の一部を見てみましょう。

2015年に公表された研究結果によると、認知症にかかる1人当たりの費用は以下のように推計されています。

【推計】認知症の人の医療費(1人当たり)

入院医療費:34万4300円(月額)

外来医療費:3万9600円(月額)

【推計】認知症の人の介護費(1人当たり)

介護サービス利用者1人当たりの在宅介護費:219万円/年

介護サービス利用者1人あたりの施設介護費:353万円/年

まとめにかえて

今回は、認知症介護にかかった「想定外の費用」について、筆者の経験を交えながらお話ししたあと、一般的な介護費用や、認知症の介護費用に関するデータも見てきました。

認知症の会と生活は思いもよらない出来事の連続。すでに飛んでいったお金はどうにもなりませんが、一つ一つのトラブルから学び、さらなる事件を防ぐ手立てはできるはず。筆者の場合は、お金の管理や玄関の施錠などが適切かどうかを見直すきっかけにしてきました。

2025年は「団塊の世代」がすべて75歳になる年。厚生労働省の推計によると、このころ実に高齢者の5人に1人が認知症の人になると見込まれています。

長生き時代のいま、「認知症介護」の当事者になる可能性は誰にでもあるといってよいでしょう。

ちなみに、前掲の慶應義塾大学と厚生労働省の共同研究による推計では、認知症介護において家族などが無償で行うケアにかかるコスト(=インフォーマルコスト)は、時間換算で週に24.97 時間、金額にすると年額382万円。

この金額は、日本の女性の給与所得者の平均年収313万円を超えています()。

仕事と介護を両立する「ビジネスケアラー」も増えるいま。昭和のひところとは異なり、介護は家族だけで抱えこむものではなくなりました。

介護保険サービスを中心とした社会資源をフル活用しながら、シニアの親の暮らしとお金を守っていけると良いですね。

参考資料

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/001180700.pdf)

一般社団法人日本補聴器販売店協会「自治体における補聴器助成事業実施状況(2023.6.1現在)」(https://www.jhida.org/about/detail.php?no=193)

厚生労働省 e-ヘルスネット「認知症(にんちしょう)」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-036.html)

生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」(https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf)

慶応義塾大学医学部「認知症の社会的費用を推計」-認知症患者や家族の生活の質の向上のため最適な解決の手がかりに-(2025年5月29日)(https://csr.keio.ac.jp/pdf/2014%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC.pdf)

国税庁「令和4年分 民間給与実態調査統計」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/000.pdf)

厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf)

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