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問題の「本質」をつかむ考え方

LIMO / 2018年2月3日 10時20分

問題の「本質」をつかむ考え方

問題の「本質」をつかむ考え方

ロジカルな人の頭の中

 先日、仮想通貨の取引所・販売所業務を行うコインチェックで、不正アクセスから580億円相当の仮想通貨の流出があり、同社はこの仮想通貨を預けていた全顧客に日本円での返金を発表しました。こういった場合、消費者に対して、「問題の本質」がどこにあったのかを明らかにし、それに対して適切な「解決策」を立て、それを「実行」する必要があります。

 ここまで大きな話でなくとも、ビジネスシーンでは、問題解決を求められることが多々あります。ここでは、『問題解決のためのロジカルシンキング』の著者・生方正也さんが、こういった場面で「問題の本質」を明らかにする、ロジカルシンキング的アプローチを紹介します。

対症療法的アプローチ

 問題解決のアプローチには、大きく分けて2つあります。

 1つは、目の前で起きている問題をその場で解決する「対症療法的アプローチ」です。たとえば、会議中にスマホをいじっている人がいた場合、その人に対して会議中にはスマホをいじらないように注意する、というもの。やることはとてもシンプルです。

 このアプローチはすぐに手が打てて簡単なのですが、別の会議で同じことが起きたり、別の人がスマホをいじり始めたりと、その場では解決できても、いつまでも問題が続いてしまう可能性があります。

ロジカルシンキング的アプローチ

 一方、問題の根本(=本質)に手を打つのが「ロジカルシンキング的アプローチ」です。会議中にスマホをいじっている人がいたら、

・どういう人がスマホをいじるのか
・なぜ会議中なのにスマホをいじろうとするのか

などを分析し、その原因に手を打つ。このようなアプローチで対応策を打てば、他の人も含めて、会議中にスマホをいじるような人は徐々にいなくなっていくでしょう。

では、「問題の本質」を解決して問題の再発を防ぐためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?

「因果関係」を正しくつかむ

 問題の本質とその解決策を見つけるためには、まず原因と結果、つまり「因果関係」の根本を押さえることが必要です。

 しかし、ビジネスシーンでは、さまざまな要素が関係し合っているので、簡単にどれが原因かをとらえるのはなかなか難しいのが現実。

 ときには、原因でないものを原因ととらえてしまい、間違った結論を出してしまうことも多くあります。だからこそ、因果関係を正しくつかむことはとても大切なのです。そのためには、次の「因果関係の3つの条件」に気をつけるといいでしょう。

(1)「時間的順序」が正しいこと
(2)「相関関係」があること
(3)「第三因子」がないこと

 それぞれ、もう少し詳しく説明していきます。

(1)「時間的順序」が正しいこと

 時間軸でいえば、まず原因が先にあり、その後に結果が生じますが、よくこの順序が混乱してしまうことがあります。

 たとえば、職場内で「コミュニケーションの悪化」と「職場の雰囲気が悪くなった」という2つの事実があった場合、どちらが原因でどちらが結果なのか、あなたはすぐに判断できるでしょうか?

 この場合、「Aが起きたから、Bが起きた」と、時間的な順序がはっきりわかる言い方をしてみるといいでしょう。たとえば、「コミュニケーションが悪化するような出来事が起きたから、職場の雰囲気が悪くなった」という言い方です。こうすれば、どちらが原因かはっきりしますよね。

(2)「相関関係」があること

 因果関係がある場合、原因が変化すれば、必ず結果も変化するという「相関関係」があります。

 たとえば「あの営業所に増員したから、営業所の売上高も改善するだろう」という主張は、営業所の人数とその営業所の売上高に相関関係がある、ということがベースになっています。相関関係がなければ、それは単なる「思い込み」ということになります。

(3)「第三因子」がないこと

 上記の(2)の条件を見ると、相関関係があれば、そこに因果関係があるように感じますが、必ずしもそういうわけではありません。2つの事実に相関関係は見られるのに、因果関係がないという場合も多々あるのです。

 たとえば「ビールの売れ行き」と「シャンプーの売れ行き」に相関関係があった場合、「ビールが売れればシャンプーが売れる」という結論を出してもよいでしょうか?

 これには、両者とも「気温が上がれば売上が上がる」という、共通の原因「第三因子」が関係しています。この第三因子を無視してしまうと、コマーシャルがガンガン流れている新商品のビールが売れているときに、「うちのシャンプーも売れそうだ」と誤った判断をしてしまうのです。

 第三因子を確認するときに大切なのが「現実感」です。一見すると関係なさそうな2つのことに意外な関係がありそうだとわかると、「新しい発見をした!」と感じたりするものです。ですが、そこで「現実的に見て、これは原因といえそうか?」と振り返り、必ず因果関係のチェックを行うことをおすすめします。

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まとめ

 最後に、ここまでの話を簡単にまとめてみました。

・問題解決には、その場しのぎの「対症療法的アプローチ」と、本質を解決する「ロジカルシンキング的アプローチ」の2種類がある
・ロジカルシンキング的アプローチでは、問題の「因果関係」を正しくとらえる必要がある
・因果関係には、(1)「時間的順序」が正しいこと、(2)「相関関係」があること、(3)「第三因子」がないこと、の3つの条件がある
・因果関係にはなく、相関関係にあるだけの場合もあるので、要注意

 こうしたポイントをふまえて、ぜひあなたが抱えている「問題の本質」を明らかにしてみてください。

(『問題解決のためのロジカルシンキング』をもとに編集)

 

■ 生方 正也(うぶかた・まさや)

HRデザインスタジオ代表。東京大学文学部卒業。日産自動車、ウイリアム・エム・マーサー(現マーサージャパン)、グロービスを経て独立。人材開発・組織変革に関するコンサルティングや、ロジカルシンキング・仮説思考などの指導・著作活動を行っている。

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