認知症の在宅介護【これが起きたら限界です】50歳代会社員が母の老人ホーム入所を即決した決定的なできごととは
LIMO / 2024年2月5日 19時55分
![認知症の在宅介護【これが起きたら限界です】50歳代会社員が母の老人ホーム入所を即決した決定的なできごととは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_53112_0-small.jpg)
認知症の在宅介護【これが起きたら限界です】50歳代会社員が母の老人ホーム入所を即決した決定的なできごととは
【一覧表つき】トイレの介助、暴力、被害妄想などの認知症の症状「施設入所のきっかけとは?」
厚生労働省の推計によると、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症となることが見込まれています。
認知症の人とその家族が抱える困難さは、トイレや入浴、食事などの日常行為のほかにも、対人関係や金銭管理まで様々。認知症の家族を在宅介護する人の中には、「介護保険サービスと家族の協力で乗り切るつもり」という人もいるでしょう。
家族構成や住まいの環境によってはそれが可能かもしれません。住み慣れた我が家で家族と過ごす時間が、認知症の人の気持ちに安心感を与えることができているなら、それは理想的だと言えます。
しかし、認知症の症状には個人差があります。少しの手助けで在宅で暮らせる人もいれば、介護サービスをフル活用しても解決に繋がらない人も。
筆者は認知症の実母(80歳)の老人ホーム入所を決断したばかり。冷蔵庫から出した生肉をかじるなど、認知面の低下が著しい中でも在宅介護を続けるつもりだった筆者が、その方針を180度変えることになったできごととは?
「これが起きたら在宅介護を続けることは絶対にできない」と筆者が感じた実体験を交えながら、認知症の在宅介護の限界点について考えていきます。
※認知症の症状や進行具合には個人差があります。信頼できる医師の指示のもとで、適切な療養・介護を行ってください。
介護施設入所のきっかけ、トップは「認知症」
LIFULL seniorが2023年8月に公表した介護施設入居に関する実態調査 2023年度」によると、回答者2000人中の46%が、介護施設への入居を決めたきっかけとして「認知症」と回答。
認知症の症状には個人差がありますが、以下が入所のきっかけとなったものとして挙がっています。
【一覧表】介護施設入所のきっかけになった「認知症の症状」とは
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/0/c/-/img_0c84e13e43d837ce1f00e6a3f241b904184316.jpg)
出所:株式会社LIFULL senior「介護施設入居のタイミングに関する調査「きっかけは認知症」が46%と最多」PR TIMES(2023年8月3日)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000049958.html)
排泄の失敗をする:32.3%
お金の管理ができない:29.0%
怒りっぽくなる、暴力をふるう:18.2%
食事のトラブルを起こす:17.2%
外出して戻れなくなる、家を間違える:16.7%
被害妄想に囚われる:16.4%
不安を訴える:16.1%
幻視、幻聴:13.5%
エアコン等が利用できない、気温に合わない服装:12.7%
睡眠障害:12.5%
火の始末ができない:12.3%
うつ、無気力:11.0%
買い物トラブルを起こす:6.7%
わからない:3.4%
トイレの介助が必要となった時点で、介護に費やす時間は大幅に増えます。また、自分でお金の管理ができなくなってきたら要注意。金融機関の口座が凍結されて、その後の介護費用を親の資金からまかなうことが難しくなる可能性もあります。暴力や暴言がひどい場合は、介護する家族のメンタルがじんわりと蝕まれていく可能性が。
筆者の母の場合「家族やヘルパーさんがお金や通帳を盗んだ(=物盗られ妄想)」「真夏でもフリースジャケットを着用(=見当識障害)」など、ありとあらゆる問題行動が見られました。
しかし、介護保険サービスをフル活用し、家族が頑張ればどうにかなるだろうと、先の見えないトンネルをさまよい続けた7年間でした。施設に預けることを幾度となく考えましたが、費用面での不安や、心情的な折り合いがつかずに足踏みをしていたのです。
でも、ある決定的な出来事により、筆者は在宅介護から施設介護へ舵を切ることを決めました。
「これが起きたら在宅介護を続けることは絶対にできない」と筆者が感じたこととは?
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
これはダメ!絶対。在宅介護の限界点が見えた瞬間
電子レンジでも火事は起こり得る
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/c/0/-/img_c04abfab30508092a8c7b766c9a1dd89259377.jpg)
Grigvovan/shutterstock.com
認知症がどんどん進行していった場合、遅かれ早かれ「在宅介護の限界点」は訪れます。トイレ介助やお金の管理、大量の洗濯物の山との格闘などは、体力と気力と愛情があれば乗り切れるかもしれません。
でも、「これが起こったら絶対に在宅介護を続けるべきではない」ことを一つだけ挙げるとしたら、筆者は迷いもなく「火事に繋がるトラブル」と言えます。
ガスコンロをやめてIHコンロを使っていたとしても、誤った使用方法により発火する恐れがあります。電子レンジでも注意が必要です。本来加熱NGであるアルミホイルなどを温めてしまったり、食材を加熱しすぎたことで発火に繋がる危険性は十分あるのですから。
ちなみに筆者の母の場合は、パンらしきものを「チン」し過ぎたことで電子レンジより発火。ボヤで済んだことはもちろん不幸中の幸いだったとはいえ、「ボヤを出した時点で、在宅介護を続けることは難しい」と判断しました。
自分が頑張れば最後まで在宅介護で乗り切れるだろうという根拠のない自信は、いま考えると実に傲慢でした。隣家に飛び火していたらどうなっていたのだろう……。
まとめにかえて
在宅介護から施設入所への切り替えには、金銭面、心理面で高いハードルがあります。
決定的なできごとが起こらない限り、「もう少し、在宅介護を頑張ってみよう……」と気持ちを奮い立たせて介護を行う人も少なくないでしょう。とはいえ家族ができることには限界があります。
認知症介護を経験して何がキツかったかと聞かれれば、「愛情や親切心を踏みにじられるような場面が、日常茶飯事だったこと」と筆者は答えるでしょう。ふつうの介護(あえてこう呼びます)との決定的な違いは、本人と意思疎通が図れないという点。
きれいごとではなく。介護を家族だけで抱えこむことは絶対に避けた方がよいと筆者は考えます。認知症の人を適切な医療機関や介護施設に繋ぐことも、立派な「介護」にあたるのですから。
認知症の進行速度は人それぞれですが、長期戦を覚悟で在宅介護に挑む場合、介護者はじんわりとした重い負荷から逃げることができません。
介護保険サービスを中心とする社会資源や、介護休暇や介護休業を活用しながら、仕事と介護の両立を図り、自分自身の暮らしを守ることも忘れないでください。
苦しい介護生活の中で、介護する側の心のバランスが崩れることは珍しくありません。
使命感に駆られるあまりまわりが見えなくなるケースもあるでしょう。介護者の小さな我慢が積み重なった結果起こってしまう不幸なニュースもしばしば耳にします。
知人や親族など、身近な人にSOSを出せる勇気も忘れずに持っておいてください。
参考資料
厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop101.pdf)
株式会社LIFULL senior「介護施設入居のタイミングに関する調査「きっかけは認知症」が46%と最多」PR TIMES(2023年8月3日)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000049958.html)
東京くらしWEB「誤った使用方法によるIHクッキングヒーターの事故に注意!」令和5年3月10日(https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/anzen/test/ih_press.html)
東京消防庁「火災に注意!電子レンジを安全に使用しましょう」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/range/index.html)
独立行政法人製品評価技術基盤「オーブントースター「1.食品が過加熱で発火」(https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/2021052701.html)
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