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【介護×相続】実家を継ぎ親の介護を終えた姉。気ままに暮らす妹に覚えた「人生を後悔するほどの不公平感」とは

LIMO / 2024年2月13日 7時30分

【介護×相続】実家を継ぎ親の介護を終えた姉。気ままに暮らす妹に覚えた「人生を後悔するほどの不公平感」とは

【介護×相続】実家を継ぎ親の介護を終えた姉。気ままに暮らす妹に覚えた「人生を後悔するほどの不公平感」とは

そして、姉妹は他人になった。

来たる2025年は、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる年。働き盛りの世代の中には、親の介護が自分ごととなっている人も多いでしょう。

「私は親の介護をしているから、相続では他の兄弟姉妹よりも多くの遺産をもらえて当然だろう」こう考えている人もいるのでは?

でも、「介護をしているから、遺産を多くもらえる」ということは、相続制度を定める民法で定められていることではないのです。

今回は、多くの家庭の相続に関わった経験を持つ相続診断士さんから聞いた、「介護への貢献をめぐる相続トラブル例」をまじえながら、生前対策の大切さについて考えていきます。

「親を介護した人が多くの遺産をもらえる」という法律はない

現在の相続制度を定めている民法には、「親を介護した人が多くの遺産をもらえる」という記載はありません。

むしろ民法900条4項には「子が数人いるときは、各自の相続分は、相等しいものとする」と記載されています。

親の介護をしていても、していなくても、遺産を相続できる割合は法律上同じなのです。

民法には「寄与分」という制度がある

民法904条2項には、「寄与分」という制度が定められています。

寄与分は、亡くなった親の家業を無給で手伝っていた、療養介護を献身的に続けていたなど、「特別な寄与」をした相続人に認められるもので、認められた分だけ多くの財産を相続できるという制度です。

寄与分を認めてもらうことは難しく、金額も少額

寄与分を認めてもらうには、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。

また、条件として寄与行為が、親族として通常期待される程度を超えている必要があります。

具体的には「仕事をやめて親の家業を無償で手伝った」など、かなりの寄与を行う必要があります。寄与分を家庭裁判所に認めてもらうハードルは高いといえるでしょう。

また、家庭裁判所から認められたとしても、期待するほどの金額を寄与分としてもらえることは難しいのが現実です。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

「そして、姉妹は他人になった」介護への貢献をめぐる相続トラブル

実際にあった介護への貢献度をめぐる相続トラブルを紹介します。

A子さんは関東近郊にある比較的裕福な家庭に長女として生まれました。

父親は地元の金融機関で働く傍ら、休日は兼業農家をしており、母親は専業主婦。兄弟姉妹は2歳年下の妹のB美さんがいます。

「お見合い結婚で実家を継いだ姉」 vs「同級生と結婚して自由に暮らす妹」

姉「親の決めた相手とお見合い結婚。実家の農作業を手伝う跡取り娘」

A子さんは両親から「長女として家の跡を取るように」と幼い頃から聞かされていたので、何の迷いもなく、年頃になると両親の決めた相手とお見合いをして、結婚しました。

そして、両親と同居をして農作業を手伝いながら、長年生活しています。

妹「学生時代のボーイフレンドと結婚。都心で働くキャリアウーマン」

一方、妹のB美さんは学生時代から付き合っていた男性と結婚し、結婚後は東京にマンションを購入して生活しています。

B美さんは学生時代の専攻を生かした専門職に就き自由で充実した人生を楽しんでいる模様。実家に戻ってくるのは、お盆とお正月の年に2回ほどです。

親の介護、そして相続……。

月日は流れ、両親が80歳代になり、介護が必要になりました。

特に母親は認知症を患い、物忘れに加え、度々暴言を吐くようになったとのこと。A子さんは両親と同居していたので、介護を一手に引き受けました。

1日3回の食事作りから、トイレやお風呂の介助など日常のことを行うのはもちろん、認知症の母親が度々吐く暴言にも、心を痛めながら、ひたすら耐えたということです。

そして、10年弱に及ぶ介護の据え、父親と母親が立て続けに亡くなり、相続が発生しました。

姉が妹に対して抱いた「人生を後悔するほどの不公平感」

葬儀がひと段落したところで、妹のB美さんが遺産分割についてこう言ったのです。

「お父さんとお母さんの遺産は法律通り、姉妹で半分ずつ分けることで問題ないよね!この家と土地は売る?もし売らないでお姉ちゃんが住み続けるようなら、預貯金は全部私がもらうことになるね」

A子さんは納得がいきません。

「私は跡取りとしてお見合い結婚をして、農作業を手伝って、介護まで10年間した。それなのになんで、遺産はあなたと半分ずつに分けなればいけないの!あなたは好き勝手生きてきたじゃない!私が遺産をすべてもらって当然だわ!」

と主張をしました。

そして、A子さんとB美さんの2人は自分の主張を曲げず、家庭裁判所の調停にまでもつれ込みました。調停の結果、基本的には法定相続分通り2分の1ずつで分け、A子さんにはわずかな寄与分を認めるという結果になったということです。

A子さんは寄与分の少なさに驚くとともに、家のために今まで尽くしてきた自分の人生を悔やむようになり、妹のB美さんとも、その後一切連絡をとっていないとのことです。

遺産相続で揉めないためには、親に生前対策を行ってもらうことが大切

A子さんと妹のB美さんが介護と遺産相続で揉めないためには、両親が健在のうちに、遺言書を作成したり、生命保険を活用したりするなど、生前対策を行う必要がありました。

遺言書の効力は法定相続分よりも強いため、遺言書でA子さんに多くの遺産を遺すと書いてもらっていれば、A子さんはB美さんよりも多くの遺産を手にすることができました。

また、生命保険は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象ではありません。死亡保険金受取人をA子さんにした生命保険に加入してもらっていれば、A子さんの受け取る遺産額はB美さんよりも多くなったことでしょう。

まとめ

親に行っている介護という行為を、遺産という形に結びつけるためには、親と相続についてきちんと話し合い、遺言書を作成するなどの生前対策を行う必要があります。

A子さんの二の舞にならないためにも、兄弟姉妹の道徳感情や、寄与分をあてにすることなく、「親が元気なうちに」行動を起こしておくことが大切であると言えるでしょう。

参考資料

eGOV法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

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