もめる裁量労働制〜深夜や休日労働の手当てが全てなくなるわけではない
LIMO / 2018年2月26日 17時20分
もめる裁量労働制〜深夜や休日労働の手当てが全てなくなるわけではない
”残業代ナシ制度”と呼ばれるのはどんな場合?
裁量労働制とは?
平成28年ごろから国会で始まって、いまだに決着を見ない「働き方改革」の一連の議論。その中で、労働時間の管理を働く側に委ねようとする裁量労働制の拡大も議論の対象になっています。
裁量労働制は、あらかじめ決めた時間を働いたものとみなす、みなし労働時間制の一つの形態として労働基準法に定められているものです。労働基準法ではみなし労働時間制として次の3つを規定しています。
事業場外みなし労働時間制
専門業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制
このうち、1. は在宅勤務や、営業職など外出が中心で労働時間の管理ができないケースで導入されます。
直行直帰のように、労働時間が正確に把握できない場合にあらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度であり、始業終業時は会社に戻ってくるといった場合や、業務終了後に上司に詳細な報告が必要となるようなケースでは導入できません。
これに対して、2. と3. は労働時間の管理自体は可能な場合でも、業務の効率性などの面から、始業や終業の時間を働く側に委ねたほうが業務上都合がよい職種が対象です。ただし、導入できる職種は法律で定められていて、どの労働者にも導入できるわけではありません。
例としては、専門業務型裁量労働制は商品の研究開発や、プログラマーなどスキルが重視される専門的な職種に対して導入できます。企画業務型裁量労働制は経営企画などの非定型的な業務やプロジェクト単位で動くような業務を行う労働者に対して導入できます。
裁量労働制でも深夜労働や休日労働の手当は必要
専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制は、あらかじめ労使間で取り決めた上で、労働基準監督署に届け出た時間を働いたものとみなします。
たとえば、「8時間働いたものとみなす」というように定めれば、実際の労働時間が短いか長いかに関わらず、毎日8時間働いたことにするというわけです。法律上、「みなす」といえば、それを事実として取り扱うということを意味しますので、日常使うイメージ以上に結構強い言葉なのです。
8時間と届ければ、毎日8時間働いたことになりますし、9時間と届ければ、毎日9時間働いたことになります。9時間働いたものとみなす場合、1時間は残業時間となりますので、残業手当の支給が必ず発生します。また、休日や深夜に働けば、その分の手当は必要です。
1日の労働時間を8時間にみなすとしても、休日や深夜の時間帯に働いたことによる割増についてまで免除されるわけではないのです。つまり、裁量労働制であっても、毎日の就業時間の管理は会社で行わなければならないということです。
裁量労働制の今後は?
この裁量労働制について、営業職にも拡大しようという議論もされています。裁量労働制ではない通常のみなし労働は、労働時間を管理できる場合には適用できません。
スマホが当たり前になった今では、会社の外で働いていても、労働時間の把握が容易になりました。しかし、営業職を裁量労働制の対象にすれば、労働時間の把握ができる場合でも、労働時間のみなしが可能となります。成果を出せば1日4時間程度の勤務でもOKといった働き方を認めることで、効率的な勤務を促すという狙いがあります。
一方で、1日12時間働いても、1日8時間とみなせば、深夜労働や休日労働でない限り残業代が出ないということで、残業代ナシ制度などといわれることもあります。
なかなか労働改革の法案が固まらない状況が続いていますが、改正により裁量労働制も拡大されるのか、現状のままなのか、労使双方にとって注目です。
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