天国から地獄! 一晩で紙屑同然になったETN投資
LIMO / 2018年2月27日 11時40分
![天国から地獄! 一晩で紙屑同然になったETN投資](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_5387_0-small.jpg)
天国から地獄! 一晩で紙屑同然になったETN投資
なぜ冗談のようなことが起きたのか、今回の教訓は?
ETF(上場投資信託)は個人投資家の需要が高い金融商品
近年、上場投資信託(ETF)は裾野の広い市場規模となりました。ETFとは、特定の指数(日経平均株価など株価指数、原油など商品価格等々)に連動する運用成果を目指した投資信託で、その名の通り、取引所に上場しているものを指します。
その特徴としては、1)連動することを目指す特定指数の種類が豊富、2)ブル型とベア型がある、3)上場株式と同じように売買ができるなどが挙げられます。
たとえば、特定指数を日経平均株価としたETFでは、日経平均レバレッジ上場投信(1570)がブル型、日経ダブルインバース上場投信(1357)がベア型として代表的なETFであり、個人投資家にも一際人気の高い(=売買が多い)ETFとなっています。
ETFに似たETN(指標連動証券)への需要も高まりつつある
ETFと似たような商品にETN(指標連動証券)があります。
ETNは特定の“指標”(ETFは指数)に連動する運用成果を目指した商品ですが、投資信託ではありません。この他にも厳密には様々な違いがあるのですが、上場しているETNは、投資家から見ればETFと全く同じように売買することができます。
そのため、このETNも個人投資家の間で人気が高まってきた商品の1つです。
「S&P500 VIXインバースETN」が実質▲96%安で強制早期償還に!
さて、前置きが長くなりましたが、今から少し前の2月6日(火)、このETNで“大事件”が発生しました。
米国株の上昇を背景に高値圏が続いていた「S&P500 VIXインバースETN」(2049)が、一連の米国株暴落により、運用元の野村證券(注1)から前日(5日)の終値比▲96%安の価格で強制償還されることが発表され、上場廃止も決定しました(既に19日付で上場廃止)。
注1:実際にETNを運用していたのは野村證券の欧州子会社
厳密に言うと少し異なるのですが、たった1日で▲96%下落した挙句に、いきなり上場廃止になったと考えていいでしょう。こんな冗談のようなことが本当に起きたのです。
一晩で紙屑同然に! 冗談のような悪夢が本当に起きた
今回の事象を本当にザックリ言うと、1月中旬に1株40,000円以上した金融商品(ETN)が、約3週間後に紙屑同然になったということです。
これはもう“暴落”という生やさしい表現ですむ話ではありません。
実際には2月7日に基準価格1,144円が償還価格として設定されたため、投資資金を全額失うわけではありませんが、ハッキリ言って“焼け石に水”、二束三文とも言えないレベルでしょう。
参考までに、「S&P500 VIXインバースETN」の価格(終値)の推移を掲載します。年明け以降の毎週末の終値、および、2月からは毎日の終値です。
1月 5日(金):39,600円
1月12日(金):40,100円
1月19日(金):38,200円
1月26日(金):36,500円
2月 1日(木):34,300円
2月 2日(金):34,900円
2月 5日(月):29,400円
2月 6日(火):値が付かず(注2)
2月 7日(水): 1,146円
注2:運用元の野村證券が強制早期償還を発表し、それに伴う基準価格1,144円が設定されました。
一連の米国株暴落で、ETNの連動対象指標が“超”暴落に
このETNの連動対象指標は「S&P500 VIX短期先物インバース日次指数」というものでした。非常に複雑な指標なのですが、簡単に言うと“米国株が平穏に値上がりすると上昇する指数”です。
図表1にあるように、米国株が上昇し続けた今年1月まで、この連動対象指数も上昇したため、その間に多少の山谷はありましたが、このETN価格もほぼ一本調子で上昇し続けたことがわかります。しかし、米国株が下落するとこの指数も下落し、ETN価格も下がる仕組みになっていました。
図表1:S&P500 VIX短期先物インバース日次指数の過去2年間の推移
![](/mwimgs/5/c/-/img_5cffa6b0f38115234f39bdde129fbbb051371.png)
ところが、米国株は2月2日(金)にNYダウが▲666ドル安の大幅下落となった後、翌営業日の5日(月)は同じくNYダウが一時▲1,500ドル超安となる記録的な急落となりました(いずれも米国現地時間)。
当然、対象指標である「S&P500 VIX短期先物インバース日次指数」も大幅下落となり、翌6日(火)の東京市場で当該ETN価格が暴落となったのです。
「早期償還条項」が即刻実施されて“ゲームオーバー”
もう1つ重要なことは、このETN(S&P500 VIXインバースETN)には、「早期償還条項」という特約に似た条件が付いていたことです。それは、対象連動指数が前日終値を▲20%以上下回った場合は早期償還となる内容です。
ただ、実際には、この対象指数が1日で▲20%以上下落することは“まずあり得ない”と思われていたようです。
ところが、米国時間の5日(月)に一時▲90%近い下落となり、この「早期償還条項」が即刻適用されてしまいました。
恐らく、このETNを購入した多くの個人投資家は、“一体何が起きたのか?”と狐に包まれたまま、投資資金を(ほぼ全額)失っていったのでしょう。
ETFやETNへの投資は、商品説明書をよく読んでから判断を
このようにETFやETNでは、連動対象指数(指標)によっては、今回のような“まさか?” “えっ、冗談でしょ?”というような急激な価格変動が起こり得ます。特に、ETNでその傾向が強いようです。そして早期償還条項が適用されて、いきなり「ゲームオーバー」になることがあり得るのです。
“大丈夫、そんなこと起きるわけないよ”と高をくくっていたことが、今回は実際に起きたのです。
なお、ETFでも稀に繰上償還が起きる場合があり得ます。
証券投資の原則は「自己責任」
ETFやETNに投資する時は、その商品説明書をよく読んで判断することが必要です。ただ単に“上がりそうだ、儲かりそうだ” “チャートの形が良い”だけでなく、今回のような早期償還条項が付いているのか、連動指数は乱高下しやすいのか等をよく把握しておきましょう。
ましてや、“証券会社から勧められた”だけで投資するのは危険です。100%安全な金融商品はありません。最後は「自己責任」であることをお忘れなく。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
新NISAでもETFに投資できる! リアルタイムで売買可能なメリットの一方、デメリットも? ざっくり解説!
Finasee / 2024年7月1日 19時0分
-
「もしトラ」、為替介入、欧州選挙などリスク満載!それでも日本株は見直し買いで上昇!?
トウシル / 2024年7月1日 13時35分
-
AI関連で注目のエヌビディアに連動するブルベアETFを新規取扱いスタート!(6/27~)
PR TIMES / 2024年6月27日 18時15分
-
米大統領選初の討論会、フランス総選挙で政治リスク台頭!外国人が日本株離れする理由
トウシル / 2024年6月24日 23時15分
-
毎月2万円以下なら「オルカン」と「S&P500」はお勧めしない…新NISAで「素人が本当に買うべき金融商品」とは
プレジデントオンライン / 2024年6月7日 8時15分
ランキング
-
1バナナ・パイン・マンゴーが… 軒並み値上がりの“ワケ” 試す人が増えている国産バナナとは…!【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月3日 21時19分
-
2ローソン、7月24日上場廃止 KDDIとポイント経済圏の拡大などを目指す
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月3日 17時46分
-
3NHKが34年ぶりの「赤字」でも止まらない肥大化 総資産の6割超を現預金と有価証券が占めている
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時0分
-
4子供いない夫婦「相続で失敗しない」1つの方法 家庭裁判所で「調停」が必要になるケースもある
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時20分
-
5LCCピーチの「運賃プラン」刷新へ! これまでより良くなる?それとも… 「より分かりやすく」がテーマ
乗りものニュース / 2024年7月3日 18時22分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)