防災対策の観点から東京一極集中を考える
LIMO / 2018年3月11日 21時20分
防災対策の観点から東京一極集中を考える
東日本大震災の経験に学ぶ
東京一極集中を是正するため、固定資産税を増税すべきだと、久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。
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今年も3.11が巡って来ました。まずは合掌です。その上で、今日という日を、過去に学び、将来に備えることを考える日にしたいと思います。
原子力発電をどうするのか、東北の復興をどうするのか等々ありますが、本稿では東京の問題を考えてみたいと思います。
東京一極集中は、防災を考えると巨大なリスクである
東日本大震災の日の帰宅困難者のことは、記憶に新しいと思います。何百万人という人々が押し合わず略奪もせずに整然と歩いている姿は、海外の賞賛を浴びたようですし、幸い大きなトラブルも起きなかったようですが、筆者は非常に大きな危機感を持ちました。
たまたま火災が起きなかったから良かったですが、どこかで火災が起きていたらどうなっていたでしょうか。何カ所かビルが倒れて通れない道があったら、人々は混乱なく迂回できていたでしょうか。一歩間違えれば将棋倒しで多くのけが人が出た可能性もあったはずです。
その時筆者が思ったのは、東京で暮らすということは、「公害」を撒き散らしているようなものだ、ということです。東京に住む人は、周囲に迷惑をかけているのだから、その分のコストを負担すべきだ、ということです。
公害企業のすべてが操業をやめる必要はない
「公害を出している企業はケシカラン! 操業をやめさせろ!」という人は多いでしょうが、ケース・バイ・ケースだと思います。
公害企業が生産を続けるか否かは、自社が生産によって儲かるか否かで決まります。周囲に迷惑を撒き散らしているか否かは考慮されません。これを「外部不経済」と呼びます。外部不経済があるからこそ、政府が公害企業に罰金を課し、「たいして儲かっていないなら操業を停止せよ」と誘導するのです。
大いに儲かっている企業であれば、喜んで罰金を払って操業を続けるでしょうが、政府が公害企業から徴収した罰金を周辺住民に配れば、周辺住民にも不満が残らないでしょう。それなら、公害企業は生産を停止する必要はありません。もちろん、罰金の額が周辺住民の被っている迷惑度合いを上回っていることが大前提ですが。
さて、東京に住んでいる人は、日頃から大都市の汚れた空気をいっそう汚し、混んだ電車をいっそう混雑させ、周囲に迷惑をかけながら暮らしているわけですが、災害の時には自分が歩くことで他人の邪魔になり、他人の避難を妨げかねないのです。
そこで、東京に住む人から「罰金」を取ることが必要です。周囲に迷惑をかけている分の罰金を払っても、なお東京に住みたい人は、そうすれば良いですし、そうでない人は引っ越せば良いのです。
東京の人口を減らすための「罰金」は固定資産税で
公害企業と異なり、東京都民はお互いが加害者であり被害者でもあります。「自分は東京に住み続けるから、お前が出て行け」とお互いが言い合っても問題は解決しません。そこで、適度な罰金を科すことで、東京の人口を減らすことを考えましょう。
優秀な人は、東京で大いに稼いで豊かに暮らせば良いでしょう。どうしても東京が楽しいから、食費を削っても罰金を払い続けて東京に住みたい、という人も良いでしょう。そうでない人は、引っ越しましょう。
以上が基本的な考え方ですが、実際には都民に税金をかけることは問題も多いので、推奨できません。近隣県から東京に通勤する人が増えるだけですから。金持ちと貧乏人に同一金額の税金をかけることも、公平とは言えないでしょう。
そこで筆者が推奨しているのが、固定資産税の増税です。「東京都心にオフィスがある会社で、たいして儲かっていない会社はオフィスを引っ越しなさい。東京で雇っている社員を減らして、地方で社員を雇いなさい」というわけです。
会社ごと地方に引っ越しても構いませんが、本社機能の一部を地方事務所に移管することも可能でしょう。いまやインターネットの時代ですから、たとえば本社の経理部を地方事務所に移し、必要に応じて本社とテレビ会議をすれば充分でしょう。
多少の不便はあるでしょうが、罰金を払うよりはマシでしょう。こうして東京の雇用を減らして地方の雇用を増やすことで、東京の労働者が地方に移住することを促すのです。転勤する場合も転職する場合もあるでしょう。
会社単位ではなく、個人が地方に引っ越すことも歓迎です。東京の楽しさにそれほど魅力を感じない上に、東京にいても高い給料が得られないならば、地方で仕事を探して移住した方が良い、と考える人もいるでしょうから。
こうして東京から地方に移住する人が増えれば、地方創生も進み、一石二鳥でしょう。もちろん、どこの地域が恩恵を受けるのかは、自治体間競争ですから、頑張った自治体だけが恩恵を受けるということになるのかも知れませんが。
なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。
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