”歯止め”のなくなったトランプ政権、米経済や市場は大丈夫なのか
LIMO / 2018年3月10日 10時10分
”歯止め”のなくなったトランプ政権、米経済や市場は大丈夫なのか
保護主義の始まりは世界経済の不安定化への入り口
3月1日、トランプ米大統領は、「鉄鋼に25%、アルミニウムに10%」の輸入関税措置を課すことを宣言しました。この宣戦布告とも言える「トランプ関税」を巡る国際政治の動向が金融市場を大きく揺るがしています。
通商・貿易戦争への不安に拍車をかけたのは
影響を受けるとされている欧州は、早速反応しました。欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は7日、トランプ大統領が計画する関税賦課は「米欧関係を損なうと同時に、規則に基づく世界の貿易システムにも害を与える恐れがある」とし、「正しい行動ではない」と断じて、EUはこれに対抗し、米国からの輸入品に28億ユーロ(約3700億円)相当の報復関税を課すとの方針を示しました。
経済的なナショナリズムが顕著になり、エキセントリックに表現すれば、通商・貿易戦争に発展する可能性は高まったとも言える状況で、世界の金融市場にとって極めて厳しい展開になる恐れもあります。
この不安に拍車をかけるように、米国家経済会議(NEC)のコーン議長が辞任するというニュースが入ってきました。トランプ政権内で、反自由貿易の流れに対して防波堤の役割を担ってきたと言われるコーン氏の辞任は、トランプ政権が保護主義に陥ることになるのではないかという市場の不安を増幅しました。
実際、トランプ大統領が選挙戦で主張してきた中国を為替操作国に指定する方針を昨年4月に撤回する判断を下した際や、北米自由貿易協定(NAFTA)から離脱せず再交渉のテーブルに着く方針に切り替えた際にも、コーン氏は影響力を発揮したと言われています。
トランプ大統領の強硬姿勢をめぐる楽観論と悲観シナリオ
ホワイトハウスの機能不全や相次ぐ高官の入れ替わりは、トランプ大統領就任以来、日常化してきました。市場も、これまでは重視して来ませんでした。しかし、今回は事情が違うかもしれないことを恐れています。
楽観的な見方としては、今回のトランプ大統領の強硬姿勢への転換は、3月13日のペンシルベニア州下院補欠選挙を意識した「演出」であるとの指摘もあります。また、前述の北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を有利に進めるための戦術という見方もあります。
また、コーン議長一人の辞任で、トランプ政権内の方針が大転換することはなく、欧州連合(EU)の本格的な対抗措置の表明や株価の不安定化に驚き、これまでのように言を左右にして、トランプ大統領が態度を軟化させるという指摘もあります。
しかし、ホワイトハウス内の「良識派」と目されたクシュナー大統領上級顧問も、ロシアに絡む捜査で影響力が低下しており、悲観的な見方が上回る状況です。
悲観シナリオが台頭した場合、心配されるのは、自由貿易体制によって支えられてきた堅調な米国経済が変調をきたすことです。その場合は、米株安への圧力が高まるほか、財政赤字の拡大・FRBのバランスシート縮小による米国債需給悪化・関税率引き上げによる悪いインフレへの警戒感は、米国債への売り圧力となります。
そして、米株や米債が不安定化することは、米ドルへの信認も低下させる危険があります。現に、世界の政府系ファンド(SWF)への聞き取り調査では、今後1年間に米国資産をアンダーウエートにすると回答した比率が先月、43%へ急上昇し、約3分の1が貿易戦争と保護主義が最大のテールリスクだと指摘したことが報道されています(参考:3月7日付ロイター記事(https://jp.reuters.com/article/global-swf-investment-idJPKCN1GK02U))。
筆者は、悲観的なシナリオが実現する可能性はまだ低いと考えていますが、トランプ大統領の今回の判断は、世界経済と市場にとって非常に重要なターニングポイントになる可能性を秘めているということは間違いがないと考えます。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
日本製鉄のUSスチール買収問題の陰に「対中アレルギー」!? 保護主義化が進む米国
まいどなニュース / 2024年9月19日 19時10分
-
保護主義拡大、日本経済に影=対中国、摩擦は不可避―米大統領選
時事通信 / 2024年9月19日 15時24分
-
米大統領選を「静観」する中国。トランプとハリス、どちらの勝利を望んでいるか
トウシル / 2024年9月12日 7時30分
-
「もしトラ」AIが影響予測 米経済は活性化、貿易縮小も
共同通信 / 2024年8月31日 16時14分
-
「ハリスVSトランプ」米大統領選「経済政策」比較...どちらが勝つと世界と日本にプラス? 最悪シナリオは米国債のデフォルト(1)/第一生命経済研究所・前田和馬さん
J-CASTニュース / 2024年8月30日 20時10分
ランキング
-
1ゆうちょ顧客情報を不正流用 日本郵便、かんぽの保険営業に
共同通信 / 2024年9月21日 18時30分
-
2「佐渡島の金山」世界遺産登録、経済効果585億円…政投銀が3年前の試算を上方修正
読売新聞 / 2024年9月21日 17時22分
-
3PAULの「3080円・高級モーニング」超正直な感想 フランス発ベーカリー・カフェチェーンの実力は?
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 8時0分
-
4「うどんみたいな布団」が突如爆売れ、Xで16万いいね 「売れたらラッキーくらいに思ってた」と担当者
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月21日 7時40分
-
5渋谷・おしゃれ飲食街の「インフレ」が進む"裏事情" 立ち飲みのワイン1杯1200円も躊躇なく飲む若者たち
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 9時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください