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年収5000万円をサラリーマン30代で手にしても不満だった本当の理由とは

LIMO / 2018年3月27日 20時20分

年収5000万円をサラリーマン30代で手にしても不満だった本当の理由とは

年収5000万円をサラリーマン30代で手にしても不満だった本当の理由とは

”仕事はやりがいが第一”と良く言われますが、年収が最も重要という人も中にはいるでしょう。職種によっては大きな収入を若くして手にするケースもあります。ところが、もともと高い年収を目指して頑張っていたはずなのに、それを手にした途端に考えを改めることもあるようです。今回は人生にとってお金とは何か、若くして高収入を手にした人の意見をもとに考えてみたいと思います。

サラリーマン、31歳で年収5000万円超

都内に住むA氏。日本の大学を卒業し、日本の金融機関に勤めたのちに外資系金融機関に転職。仕事で実績が評価されたのと、会社に利益をもたらしたことで、20代後半から給与は上がり続け、31歳の時には年収が5000万円を超えていたそうです。

ところが、ちょうどその頃から「高年収を手にしても、しょせんサラリーマン」という考えが湧き起こって来たのだそうです。会社に利益をもたらし、評価された結果の年収とはいえ、自分の人生でそれに値するものを積み上げてきたのだろうかと考え始めたのがその頃だといいます。

プロスポーツ選手のように自分の実力かという疑問

若くして数千万円もの年収を手にできるのはうれしいものなのでは、という質問にA氏は次のように答えます。

「初めは自分の仕事の結果が給与に反映されて、素直にうれしかったですね。親にもプロ野球選手みたいだねと言われたりして、そうかもなぁと思ったものです。ただ、よくよく考えてみると、高額の年棒を得るプロスポーツ選手のような実力だったのかな...と。自分の実力はあったと信じたいですが、そればかりともいえません」

それはなぜなのか、A氏は続けます。

「そもそも運用する資金は自分のものではありません。自分がリスクをとったように見えますが、しょせんはお客様のお金をうまく運用した結果の一部をもらったに過ぎません。運用も立派な仕事であることは間違いないのですが、”相場つき”といった環境要因もあるので必ずしも実力とはいえないでしょう」

「相場の仕事は運も相当重要です。運も実力のうちといえばそれまでですが、能力が必ずしも明確にならない領域もあるというのが実感です。『え、なんであの人がそんなに儲けたの!?』ということが起きるのが資本市場ですから」

さらにこう付け加えます。

「勤務先が外資系ということもあって、海外の本社からすると日本人である私に給与を支払う場合、円安であれば(本国の通貨の)払いは少なくて済み、円高だとたくさん払っていることになります」

「ある時『お前の給与、本社の相当のポジションの人よりも高いぞ』といわれましたが、確かに私の給与が上がっていったのは円安の流れに乗っていました(笑)。つまり、どこからどこまでが自分の実力かわかりません。為替レートも影響していたでしょ、と言われればそうかもしれないというのが実際のところです」

金融機関でビジネスパーソンとしてのスキルアップはできるのか

金融機関で経験を積んでいくことで、ビジネスパーソンとしてスキルアップしていけるのではないか、そう聞くとA氏は次のように説明します。

「金融機関で市場関係者の多くが感じていることだと思うのですが、いわゆる実ビジネスの現場で修羅場をくぐるのと違い、ビジネスパーソンとして成長しているという実感はないです。もちろん市場のことは経験とともに理解できるようになっているとはいえますが、実ビジネスで通用するかというと疑問もあります」

「これは自分の周りの話であって金融界全体にいえることではないとあらかじめ断っておきたいのですが、自分の上司で国籍を問わず、ビジネスパーソンとして優秀だなと思う人は稀でした。給与が上がるということはポジションも上がるということですが、そうすると社内政治を意識した動きをしなければならない場合も当然出てきます」

「ただ、貯金がある程度できると、給与を維持するために自分が納得できないことをしようという気はなくなっていきました。しかし、そこで踏ん張ってやり切れる人は、さらに上に登って行ったような気はします。やり切ればよかったですかね(笑)」

男の嫉妬は怖い

では、社内政治に巻き込まれないようにしながら、資本市場で経験を積んで結果を出すという道を突き詰められないのか、そう聞いたところA氏の答えは次のようなものでした。

「確かにその通りです。ただ、いったん年収が上がってしまうと、社内政治と無縁でいるのは困難です。そして、若くして高給になると手練れのベテラン層との競争に巻き込まれます。男の嫉妬は国内外問わず恐ろしいものです(笑)」

「資本市場との付き合いなら非常にドライでいいのですが、資本市場で勝負をしているはずなのに、それ以外の人間関係などの要素は正直面倒でしたね。人によって意見は異なると思いますが、年齢を重ねるとともに事業を自分で立ち上げてみたり、経営をしてみたくなったりしました。ありきたりな言葉でいうと、人と接したいということでしょうか。その時に、資本市場というのはちょっと違うのかなと感じ始めました。それで金融業ではない事業を立ち上げたのです」

理想の経営者はどの産業にいるのか

自身で事業を始めた今、目指す経営者はいるのでしょうか。するとA氏は次のようにいいます。

「これも金融業界にいたからかもしれませんが、製造業で一から会社を興して大きくした企業の創業者は尊敬しています。日本電産、キーエンス、堀場製作所、そして製造業ではありませんがソフトバンクなどは素晴らしいと思います」

金融業界に理想の経営者はいないのでしょうか。

「もともと金融は規制業種ですから、暴れん坊よりも調整力がある人が上に立つ産業です」

日本の金融業界に未来はあるのか

では、日本の金融業界をどう見ているのかと聞くと、A氏はこう答えます。

「過去10年を振り返ると、大きく2つのパラダイムシフトがあったように思えます。一つはリーマンショック。そしてもう一つはフィンテックという動きです」

「今後は、金融機関にいれば安泰、そして高給がもらえるという時代ではなくなったと思います。金融業界も人手が不要になっていく領域がますます増えるでしょうし、そうなれば全体の賃金が下がることもあるかもしれません。やはり事業を起こすほうが、金融機関のサラリーマンであることよりもリスクが少ないのではないかと感じます」

給与とやりがい、どちらが大事か

最後に、起業して給与は下がったのではないかとA氏に聞いてみました。

「はい、大きく下がりました。ただ、食べていく分には事足りますし、何よりも毎日自分で作っている事業があるというのが最も大事なことだと思っています。それに、すべて自分に跳ね返ってくるのが醍醐味ともいえます。給与は多いに越したことはありませんが、目の前にやるべきことがあるほうが重要ですよね」

「最近、以前働いていた金融機関の元同僚から盛んに連絡があります。『退職したのでご飯でも食べよう』と。久しぶりに会って話をしてみると、新たに挑戦したいことがあるという人物が意外と少ないことが気になっています。自分にも当てはまりますが、やりたいことがあるのであれば、急速に変化する社会環境を考えると、すぐに行動に移すほうがいいのではないでしょうか」

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