メモリー投資活発化で「得した企業と、そうでない企業」
LIMO / 2018年3月27日 9時45分
メモリー投資活発化で「得した企業と、そうでない企業」
半導体装置メーカーの17年売上高から見えた増収率の差
半導体製造装置などを中心に市場調査・リサーチを手がける米VLSIリサーチ社が、2018年3月に半導体製造装置メーカーの売上高ランキング(2017年実績、速報値)を発表した。
半導体メーカーの積極的な設備投資によって、半導体製造装置市場は歴史的な好景気に沸いており、ランキング上位企業も前年に比べて高い増収率を達成した。ただ一部にはこうした恩恵を享受することができず、市場全体の成長率を下回る企業がいたのも事実だ。とりわけ、17年は3D-NANDを中心にメモリー投資が非常に活況で、装置メーカーが抱える顧客基盤によって増収率に大きな差が出た。
首位はAMAT、上位4社ではLamが成長率トップ
速報値は世界の約350社の半導体製造装置メーカーを対象にした調査結果。各社売り上げには装置売り上げに加え、サービス・サポートの売り上げが含まれている。17年市場全体は前年比28%増の693億ドルとなり、15年から3年連続の2桁成長となった。
トップは引き続き米Applied Materials(AMAT)となった。17年売上高は同33%増の132億ドル。同社は00年以降、11年に一度ASMLにその座を奪われたが、それを除けば長年首位を守り続けている。
上位4社まではいずれも30%以上の伸びを記録しており、市場全体の成長率を上回っている。なかでも、Lam Researchが同50%増と最も伸びており、3D-NANDの好調で主力のエッチング装置を中心に高水準の出荷が続いた。
国内トップの東京エレクトロンも同43%増と高成長を記録。コーター&デベロッパーに加え、熱処理成膜装置や成膜装置、洗浄装置などメモリー投資拡大が大幅なプラス成長につながった。
上位4社以外で増収率が目立ったのが、日立国際電気だ。熱処理成膜装置を中心に事業展開する同社はもともと、メモリー比率が高い会社で知られ、とりわけサムスン電子の売り上げ構成比が高いことが特徴。17年はこの傾向が顕著に表れ、上位15社のなかで最も高い成長率を記録した。
なお、同社は日立グループの事業の選択と集中の一環から、半導体製造装置事業を米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に売却。18年6月から「Kokusai Electric」として再スタートを切る予定だ。
SCREENと日立ハイテクは1桁台の成長率
一方で、SCREENセミコンダクターソリューションズや日立ハイテクノロジーズなどの日系企業の増収率は1桁台と、市場全体の成長率に比べてやや物足りないものとなった。
両社の成長率が低位にとどまったのは、ロジック/ファンドリー比率が高いことが理由だ。SCREENの場合は洗浄装置を主力に展開、顧客もTSMCやインテルなどのロジック系が上位を連ねる。17年のロジック/ファンドリー投資も決して低い水準ではなかったが、メモリーほどの盛り上がりはなく、TSMCにおいては17年後半に設備投資に一度ブレーキをかけており、この煽りを受けた。特にSCREENが得意とする枚葉式洗浄装置(ウエハー1枚ごとにチャンバーで洗浄する)はロジックラインで主に用いられるもの(注・最近はDRAMなど一部メモリーでも採用)であり、この影響が大きかった。
日立ハイテクもインテルが最大顧客だ。エッチング装置や測長SEMなどを主力に展開するが、インテルは昨今、設備投資のなかでもメモリー向けが伸びており、ロジック向けに限れば横ばい~微減という状況だ。
18年は引き続き、メモリー投資が牽引するかたちとなるが、3D-NAND一辺倒だった17年に比べてDRAM投資も一気に増え、メモリー投資におけるDRAMとNANDの割合はバランスの取れたものとなる。ロジック顧客のウエイトが高い企業にとってはもどかしい展開が続くが、18年後半からは7nm世代向けの投資(TSMCの場合はEUVを用いた「7nm+」)が本格的に立ち上がる見通しであるため、業界にはロジック投資に対する期待感も渦巻く。
(稲葉雅巳)
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