「自宅で仕事をする」という選択は、幸せなのか、孤独なのか
LIMO / 2018年4月10日 20時20分
「自宅で仕事をする」という選択は、幸せなのか、孤独なのか
プラス面がある一方、仕事時間が増えたという声も
ITなどを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方である「テレワーク(リモートワーク)」。国土交通省が2017年6月に公表した「平成28年度 テレワーク人口実態調査(http://www.mlit.go.jp/common/001187592.pdf)」によれば、勤務先にテレワーク制度等があると回答したのは、雇用者全体のうち14.2%。
現時点ではまだまだ少なく、また、制度があっても対象者が限られるというケースも多いようですが、働き方改革が叫ばれる中で、今後は導入する会社も増えていくのではないでしょうか。一方でやってはみたものの、なかなかうまく使いこなせていないという人がいるのも実情のようです。
今回はベンチャー企業でテレワーク主体で働き始めて間もないAさんと、Aさんの同僚でテレワーク暦10年以上というBさんに話を聞きました。
「全員がテレワーク」。あるベンチャー企業の社員が感じるメリット・デメリット
Aさんは大手企業から「みなし労働時間制」「全員がテレワーク」というベンチャー企業に転職。普段は自宅やコワーキングスペースなどで仕事をし、業務上のやりとりはメールやチャット中心で行っているそうです。
「よく言えばやるべきことに集中できる。柔軟性も高いし効率的といえる」という一方、Aさん自身はテレワークには悩みも多いといいます。「良い面と悪い面って表裏一体だなとしみじみ感じるのです」というAさん、一体なぜそう感じるのでしょうか。
柔軟な働き方ゆえ? 仕事に追われる
まずAさんが挙げたのは「柔軟性」。時間を自由に使えることはAさん自身メリットだと考えています。「朝のラッシュ時間帯に電車に乗らなくてよいですし、病院などにも通いやすい」と、Aさんはテレワークによる日常生活でのメリットをあげます。
一方同僚のBさんも、「通勤時間が省略できるところ。特に女性であればお化粧などといった準備の時間も含めたら、かなりの時間が省略できるのでは。1日のうちの数時間がテレワークによって捻出できるというのは素晴らしいメリットと思います」と話します。
逆に、その柔軟性がマイナスに働くこともあるとAさんは考えています。
「パソコンやスマホとインターネット環境があれば、いつでもどこにいても仕事ができてしまうので、深夜、早朝、休日問わず仕事のやりとりあるのが悩み」というAさん。最近ではスマホが手放せないといい、休んでいるのか休んでいないのかわからない状態になることもあるといいます。
「テレワーク=休んでいる」という偏見?
長年テレワーク主体で仕事をしてきたBさんは、「あくまで一般論として」と前置きしたうえで、Aさんのような心境に陥り、実際に常時稼働状態になってしまう人は少なくないと指摘します。
「テレワークを維持するためには、企業側・個人側双方の管理力がとても重要な要素だと思います。テレワーク=休んでいると職場で思われているのではないか、出勤している以上の成果を見せなければ認めてもらえないのではないか、などと考えてしまった結果、365日24時間開店状態になってしまったという話はとてもよく聞きます」
「成果主義の会社であれば、どのように時間を使っても構わないわけですが、評価者が通勤者よりもテレワークのメンバーに対して成果を高く求めすぎることで、このような状態になってしまうこともあるようです。働きすぎてつらい…とテレワークをやめて通常勤務形態に戻る人もいます」
また、悩みは職場との関係に留まらないといいます。Bさんがこれまでよく相談されたケースは、意外にも「家族が理解してくれない」という悩み。
「家で仕事をしていると、何度説明しても『休んでいる』と思われ色々と用事を頼まれて仕事にならなかったり、自宅勤務なら育児しながらでも大丈夫、というような誤解を家族からも受けるというのですね。多くの場合、育児をしながらテレワークで仕事をこなすのはかなり難しいのが実状ではないでしょうか。実際に手のかかる育児フェーズでは自宅勤務をするにしても子供は保育園に預けているという人も多いようです」
どうしても孤独を感じてしまう
また、テレワークでは、組織のメンバーと顔を合わせないことからコミュニケーションが滞りがちになり、結果、疑心暗鬼になることも多いとBさんは話します。
「こうしたことがつらくて通常勤務に戻っていく人も実際に多いのです。ただ、毎回気にしていてはテレワークは続けられません。良い意味でマイペースを維持できる鈍感力も実はテレワークでは重要なんだろうなと思っています」
Aさんも最近、この「鈍感力」の大切さを痛感しているといいます。
「結局相手の期待にすぐ応えなければ、という気持ちが24時間気が休まらない原因にもなるので、適度にオン・オフを切り替えられるようにならないといけないなと思っています。また、コミュニケーションの問題にしても、いちいち言葉の応酬を目にして心を痛めていてはとてもやっていられないんですよね。結局のところ、自分で折り合いが付けられなければせっかくのメリットも生かせないということなんでしょうね」
テレワークでオン・オフをうまく切り替えるには
Aさんは自宅にこもりきりにならず、コワーキングスペースや図書館も活用しながら仕事を続け、外出を挟むことでオン・オフを切り替えるようにしているといいます。一方のBさんは、実は完全自宅派。オン・オフの切り替えは「できるだけ毎日同じ時間割で行動する」ことでつけているのだそう。
「たとえば9時に開始、13時に昼ご飯、18時には撤収、といったことです。そのほか夜にウォーキングをしたり、時間をかけて食事を作ったりして息抜きをしますね。こうした時間を持つことはとても大切だと感じています」
まとめ
いかがでしたか。AさんはBさんにテレワークの心得を聞いたりして、せっかくの仕組みをうまく活用できるように工夫を続けているそうです。とはいえ、今後テレワークが広く普及していく中では悩む人が増え、解決が求められる課題といえるかもしれません。
「平成28年度 テレワーク人口実態調査」では、テレワークのプラス効果として、「業務効率が上がった」(49.4%)「自由に使える時間が増えた」(44.3%)という回答が多くあがった一方、マイナス効果として「仕事時間(残業時間)が増えた」(46.5%)という回答も多く見られたようです。みなさんは、テレワークについてどのようにお考えでしょうか。
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