日経平均株価と為替に、通商問題が与える影響は?
LIMO / 2018年4月10日 16時20分
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日経平均株価と為替に、通商問題が与える影響は?
「柏原延行」のMarket View 2018年4月9日
皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
4月になり、昼休みなどに外出すると、新入社員らしき人達を見かけることが多くなっています。私自身が新入社員であったころの出来事を、ふと思い出す今日この頃です。
さて、今回コラムのポイントは、以下の通りです。
トランプ米大統領は5日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税(の対象)を、1,000億ドル積み増しすることを検討すると発表した(合計1,500億ドル(107円換算で16兆円))。1,500億ドルは、米国の中国からの(モノの)輸入金額の約3割にも及ぶ(なお、2017年の中国の米国からの(モノの)輸入金額は約1,300億ドルです)。
4月9日の日経平均株価は21,500円強、米ドル/円は106円後半で推移しており、我が国の市場の反応は限定的(執筆時点の9:30)。
通商問題が市場に与える影響について、論点を整理した。現在発表された内容は、交渉を始める前段階としての案であり、実際に交渉が始まれば現実的な解決策に、話は向かうとの考え方もある。ただし、実際に関税が発動される範囲いかんによっては、下ぶれ材料となる可能性にも留意が必要。
通商問題の本丸と思われる米国と中国との関係について、派手なニュースが飛び交っています。
皆さまも各種メディアなどの報道でご存じのことと拝察しますので、ごく簡単に状況をご説明すると、上記制裁関税として、米国は中国からの輸入品のうち、500億ドル分について、25%の関税を掛けるという措置を発表しました。これを受けて、中国も同規模の報復関税を課すと表明しました。
ロス商務長官やクドロー国家経済会議委員長による市場への影響を緩和させる趣旨の発言があったものの、トランプ大統領は5日に、1,000億ドルの制裁関税積み増しを検討すると発表しています(ちょうど倍返しですね。銀行を舞台をしたテレビドラマを思い出します)。
米国の中国からの(モノの)輸入金額は、2017年において約5,000億ドルなので、現在検討されている金額は、既に約3割にも及んでいます(もちろん、原理的には、金額を現在の3倍程度まで増やすことが可能です)。そして、1,500億ドルは、中国の米国からの(モノの)輸入金額約1,300億ドル(2017年)を上回る金額です(少なくとも中国は対象金額で、1,500億ドルという同金額を実現できません。意図的なものなのでしょうか?)。
4月9日の日経平均株価は21,500円強、米ドル/円は106円後半で推移しており、わが国の市場の反応は限定的であるように見えます(執筆時点の9:30)。
「8日にトランプ大統領が制裁関税をめぐり交渉での紛争解決に意欲を示したとの報道を重視する見方」や「米国と中国との間で行われる貿易に対する措置で我が国は関係ないとの見方」もあるのですが、通常通商問題が過熱する局面では、「貿易黒字国である日本の通貨円の増価(円高)」や「自由貿易に対する脅威→世界的な成長率の下押し懸念→リスクオフの円高→企業収益の悪化」など連想が働いて、株安、円高に見舞われることが多いように思われます。
そこで、頭の整理のために、通商問題が我が国の市場に与える影響に関する論点を整理しました。
図表1:通商問題が我が国の市場に与える影響に関する論点
![](/mwimgs/5/6/-/img_5624b6409ee96dcdee7eb1fb3016bd5f86791.jpg)
出所:筆者が作成。
リスクオフの局面では、株価下落、債券上昇(金利低下)、円高が起こるとの考え方が一般的と思われます。
改めて、図表1を見た場合に、リスク回避的材料は、既に相当程度議論されてきたとの印象を私は持ち、このことが、市場の限定的な反応に繋がっていると考えます。
一方で、リスク選好的要素として、現在の状況を「交渉前のブラフ(威嚇、はったり)」とする見方も一定程度賛同を集めているように思います。この場合、実際に比較的広範囲な制裁関税が実施されると、(少なくともいったんは)市場の下落材料になると考えるべきと思います。
私自身は、ビジネスマンの経験があるトランプ大統領が株価の継続的な下落に繋がるような政策を採用しないと考えているため、通商問題が持続的な株価の下落材料になるとは考えていません。
しかしながら、いかんせんトランプ大統領の考え方しだいで状況が変わってしまう事柄であり、今後の進展に留意が必要です。
(2018年4月9日 9:30執筆)
【当資料で使用している指数についての留意事項】
「日経平均株価」は、株式会社日本経済新聞社によって独自に開発された手法によって、算出される著作物であり、株式会社日本経済新聞社は、「日経平均株価」自体および「日経平均株価」を算定する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有しています。
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