老々相続よりも高齢者の資産を消費へ回すことの経済効果
LIMO / 2018年4月13日 21時35分
老々相続よりも高齢者の資産を消費へ回すことの経済効果
デキュムレーションが持つ意味
「人生100年時代」のデキュムレーション(資産の引き出し)
「人生100年時代」という言葉がたびたび使われるようになってきました。長い人生は働き方を変えるだけでなく、改めて長い人生を豊かに過ごすための資金についても考える機会になります。
特に退職後の期間においても、これまで以上に資産運用への関心が高まることになりそうです。退職後のお金との向き合い方は、資産運用を継続しながら、効率的に引き出し、人生の最後まで資産を持続させることが大きなゴールです。
これがデキュムレーション、資産活用の基本的な考え方です。しかしその包括的な考え方や施策は日本ではまだ十分に整理されておらず、一方でその経済効果についても十分に検証されていないように思われます。
資産形成の課税繰り延べと引き出しへの誘因
あまり知られていないのですが、米国には個人退職口座(IRA)など所得税非課税で蓄積した資産は、70.5歳を過ぎると一定額以上引き出さなければペナルティが課される仕組みがあります。
所得に税金を課すのは一般的で、現役時代の課税が退職時まで繰り延べられていると考えるわけです。とはいえ、資産を引き出さないままにしていれば課税されず、相続資産として引き継がれることになるため、強制的に引き出して消費に回すような仕組みといえます。
また英国でも、退職時に確定拠出年金(DC)の資産を引き出す際にはその年の所得として課税されますが、引き出し型の金融商品へ資産を振り向ける場合には課税の繰り延べという税制優遇があります。これで退職後の生活のための資産を一括消費ではなく、年金引き出しへと誘う仕組みがあります。
日本でも、こうした制度を急ぎ検討する時期に来ているのではないでしょうか。
デキュムレーションの経済効果
特に退職後に資産を引き出して生活に充当する、いわゆるデキュムレーションには、消費への刺激という経済政策としての側面もありそうです。超高齢社会では人口減少と相俟って消費の減退が懸念されるのですが、高齢者が安心して資産を使えるならば消費の底上げに直結するはずです。
いくら供給サイドで労働生産性を高めても、国内需要の拡大が滞れば経済成長はままならないでしょう。高齢者が将来の生活に対して過度の不安を抱えることなく、安心して資産を消費に回せることは大きな意味を持つと思います。
フィデリティ退職・投資教育研究所の試算では、年間の相続総額は46兆円と推計され、その66%が現金・有価証券で相続されています。
もしこの金融資産が少しずつ消費され、結果として毎年相続される金融資産の20%が消費に回るとすれば、6兆円の消費喚起効果が見込まれ、GDPを1%以上押し上げる計算になります。その波及効果も考えるならさらに大きな効果も見込めます。
そもそも相続では、超高齢者から高齢者への老々相続が多く、相続資産が高齢者のなかで滞留する傾向が強いと指摘されています。その流れから資産を消費に回すような施策や行動パターンは、超高齢社会における経済政策として不可欠なものと言えます。デキュムレーションの持つもう1つの重要な側面です。
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