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ハリルホジッチ・サッカー日本代表元監督解任劇は日本企業では意外によく見る風景か

LIMO / 2018年4月18日 10時15分

ハリルホジッチ・サッカー日本代表元監督解任劇は日本企業では意外によく見る風景か

ハリルホジッチ・サッカー日本代表元監督解任劇は日本企業では意外によく見る風景か

コーポレートガバナンスから見る日本サッカー協会分析

ハリルホジッチ・サッカー日本代表元監督が2か月後にロシアで開催されるFIFAワールドカップ(W杯)を前に解任されました。このことは多くの人にサプライズとして受け止められ、連日報道が続いています。

その議論の中心は、ハリルホジッチ元監督の解任の理由や、その後任として日本サッカー協会の技術委員長であった西野朗氏が新監督に就任したことなどです。こうしたことは日本の企業でも起きるのでしょうか。今回はコーポレートガバナンスの観点も含めて考えていきましょう。

西野朗監督就任に違和感を感じる背景とは何か

ハリルホジッチ元監督の解任劇をめぐる議論は、W杯を目の前にして行われたこと、またハリルホジッチ監督とともにA代表をサポートし、その強化をともに図っていたはずの西野朗元技術委員長が今回は責任を取ることなく、後任として日本代表の新監督に収まったのはなぜかということに集中しています。

この一見すると複雑そうに見える議論も、「誰が誰のボスで、誰が誰に雇われているのか」を考えれば比較的理解がしやすいと思います。

A代表監督といえども、日本サッカー協会に招聘されて、その任務に就いているわけです。つまり、ハリルホジッチ元監督と日本サッカー協会の契約内容の詳細はさておき、ハリルホジッチ元監督の上司は日本サッカー協会です。

また、そのサッカー協会の中で実質的にA代表の強化から監督のスクリーニングなどを行っているのが技術委員会だとするならば、技術委員長の西野氏はハリルホジッチ元監督のサポート役というよりは、むしろ間接的な上司、または現場での上司であったともいえます。

こう考えれば、今回は外部から招聘した人材が雇い主の期待通りに機能しないと、現場も田嶋幸三日本サッカー協会会長も判断し、解任を決めたのにすぎないということが分かります。

技術委員長であった西野氏が新監督として就任するのは不合理か

では、西野氏が新監督に就任したことはどう考えればいいのでしょうか。

もし西野氏がハリルホジッチ元監督のスタッフであれば、一緒に解任されるということになるのでしょうが、西野氏は日本サッカー協会の技術委員長なので立場は逆です。外部から雇ってきた監督が機能しないかどうかを査定する側です。

この点、選手とのコミュニケーション問題も含め、日本サッカー協会が期待した通りに機能しないという理由でハリルホジッチ元監督を解任したのであれば、A代表の強化を図ってきた西野氏にはそうした監督に仕事を続けさせた責任があるのではないか、という指摘はあろうかと思います。これはもっともな指摘です。

ただ、話を一見ややこしく見せているのは、西野氏が日本代表監督を評価する側、つまり技術委員長であったことに加え、アトランタ五輪やガンバ大阪などで実績のある監督経験者だったということです。

監督経験者は自分の戦術がいつでも最高と思っているのでは

こういうと「技術委員長は実績のある監督経験者であるべきじゃないのか」という指摘もあろうかと思います。ただ、ここで考えていただきたいのは、西野氏が監督として疑問が残るような実績しか残していない人物であれば新監督に選ばれていなかっただろうということです。日本サッカー協会がハリルホジッチ元監督を解任したとしても、別の監督を探してくるという選択をしたはずです。

監督という職業を選ぶ人は、現役であれ、また現場を長らく離れていたとしても、「自分の戦術は常に世界で一番」と考える人が多いのではないでしょうか。もっとも、こう思えない人に監督業は続けられません。これはサッカーチームの監督に限らず、金融の世界でプロ投資家と呼ばれるファンドマネージャーも同じです。ファンドマネージャーも常に自分の投資戦略がベストであるとして資金を集めるものです。

今回の話のややこしさは、「自分のサッカー監督としての戦術がまだ世界で通用すると考えている(可能性のある)雇う側が、現場の指揮者で雇われる側の監督を評価している」という点にあると考えます。

ハリルホジッチ氏の解任劇は会社でもよくある風景

こうした状況は実は日本の会社でもよくある風景です。

とある経営者が、自分がこれまで担当していた事業が軌道に乗ったので、後任にそのビジネスの現場の切り盛りを任せ、自分自身は会社全体の経営に専念するポジションに移行したとしましょう。

ところが、後任に任せた後に、その事業の調子がおかしくなったとします。できる経営者の場合、そのときに別の人物を当てるのではなく、自らが再び現場に戻ってくるということは意外によく見る風景です。

たとえば、代表取締役社長でありながら、兼XXX事業本部長などというタイトルがついている社長も見かけます。これは会社によって事情は異なりますが、よくあるケースとしては、いったんは別の人物に事業を任せたが、その人物が役不足だったので経営者自身がその事業を「巻き取った」ということです。

経営者からすれば「お前は頼りにならないから、自分でもう一度現場も全部見る」という状況です。社会人経験が長い方は、そうしたシーンを目にしたことがあるのではないでしょうか。

これで日本はW杯で勝てるのか

こうしてみると、今回の問題は、監督を目利きする立場の技術委員長が監督の働きが期待通りでないと評価して、自らが責任を取ったというように見えます。

ただし、コーポレートガバナンス上で問題なのはここです。今回の技術委員会の責任の取り方を監視し、評価するのは誰かということです。西野監督はW杯では結果を出してくれるかもしれませんが、それは結果論に過ぎません。その前に新たに西野監督を選任した技術委員会の判断が正しかったのかという評価が必要でしょう。

また、チームの強化方針や監督選定などが技術委員会の仕事だとすれば、日本代表が世界で勝てるのかを決めるうえでは技術委員会の役割が大きいといえます。技術委員会の役割とその結果をより透明化させることで、今回のような混乱はなくなるのではないでしょうか。

今回は突然の出来事だったので、解任と新監督の選任プロセスは外部によく見えてきませんでした。今後はサッカー日本代表がより強くなるために、ガバナンス強化にも検討すべき余地があるように思えます。

ー賽は投げられた。ここまできたら西野ジャパンに期待したいー

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