ネクタイ業界の窮地~クールビズ本格導入から13年目の夏が来る
LIMO / 2018年5月3日 20時20分
ネクタイ業界の窮地~クールビズ本格導入から13年目の夏が来る
この間のネクタイ国内生産は約▲60%の激減
早くも5月1日からクールビズがスタート!
現在真っ只中のゴールデンウィークが終わると新緑の季節となり、ここから初夏に向かうまでの数週間が1年で一番過ごしやすい季節と言われています。しかし、今年は桜の開花も例年になく早く、4月後半は全国各地で連日のように夏日となるなど、(4月としては)記録的な“暑さ”になったようです。
そして、5月1日からは環境省を中心に早くもクールビズがスタートしました。6月1日から導入する企業も少なくないようですが、そこから10月末までクールビズが続くことになります。
クールビズが始まると、あの暑苦しい真夏を思い起こす人も多いのではないでしょうか。
クールビズの正式な定義・内容はあるのか?
ところで、クールビズって何のことでしょうか?
実は、クールビズにはガチガチに決められた定義はありません。一応、夏期に行われる環境対策などを目的とした衣服の軽装化キャンペーンを意味しているようですが、実態としては“ノーネクタイ、ノージャケットのカジュアルなビジネスウェア”と考えていいでしょう。そして、実質的には男性のみが対象になっていると思われます。
10数年前は真夏でもネクタイをキチッと締めるのが当然だった
男性サラリーマンの中には、“クールビズのおかげで、昔に比べれば夏の暑さもしのぎやすくなった”と感じている方も多いと推察されます。
今から10数年前までは、どんな酷暑でも社内・社外を問わず、男性会社員はネクタイ着用が当然でした。誰一人、少なくとも表立っては愚痴一つこぼさずにネクタイを着用していたのです。
真夏に喉元を締め付けるネクタイのあの苦しさは、女性に理解してもらうのは難しいかもしれません。あの苦しさから解放されるだけで、少なくとも気分的には涼しくなるのは確かでしょう。
クールビズの本格導入は小泉政権が旗振り役となって2005年から
さて、今では当たり前となった夏季期間のクールビズですが、本格導入されたのは2005年(平成17年)からです。当時の小泉政権が旗振り役となり、多くの国会議員や地方議員にも“奨励”したことで、日本社会に根付くきっかけとなりました。
しかし、この新しいドレスコード(服装基準)が認知されようとした2005年6月、日本ネクタイ組合連合会が当時の小泉首相、および各閣僚に抗議声明文を提出しています。
ご記憶にある方もいらっしゃるでしょう。声明内容は正確に覚えていませんが、“クールビズの影響でネクタイの売上が減少する”というものだったと記憶しています。すると、小泉首相は“これをビジネスチャンスに変えてほしい”という内容の返答をしたと、筆者は鮮明に覚えています。
いずれにせよ、日本ネクタイ組合連合会が、クールビズの浸透に深刻な危機感を持ったことは確かです。あれから12年強が経過していますが、実際にネクタイの需要はどうなったのでしょうか。
クールビズ導入後、ネクタイ需要は恐ろしいほど激減
結論から言うと、ネクタイ需要は恐ろしいほどに激減しています。
日本ネクタイ組合連合会を構成する大組織の東京ネクタイ協同組合によれば、ネクタイの国内生産本数は、平成17年の約1,164万本から平成27年には約470万本へと▲60%減っています。また、輸入品を含めた本数で見ても、同じく4,026万本から2,205万本へ▲45%以上の減少です。
平成27年を最後にデータ更新はありませんが、平成28年以降に急回復しているとは考え難い状況です。
これだけ需要が激減して、何の影響もないはずがありません。しかも、国産ネクタイの需要激減が著しいことを勘案すると、ネクタイ業界では廃業に追い込まれた業者も少なくないと推察されます。
結果として社会ニーズの変化に対応できなかったネクタイ業界
実は、民主党政権が本格始動した2010年、日本ネクタイ組合連合会は当時の環境大臣にクールビズの廃止を陳情しています。自民党が無理でも、民主党なら理解してもらえると考えたのでしょうか。
心情的には理解できないことはありません。しかし、クールビズ導入から5年も経過してなお、新たな一手を打てなかったところに、ネクタイ業界の限界を感じます。結果として、ネクタイ業界は社会ニーズの変化に対応できなったと言えるかもしれません。
今後も、こうした些細なことで始まる社会ニーズの変化により、消滅する業界、淘汰される業界、そして、新たに興隆してくる業界があるでしょう。それをじっと注目してきたいと思います。
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