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株価急騰をマネックスGにもたらした仮想通貨2つのサプライズ

LIMO / 2018年5月10日 10時35分

株価急騰をマネックスGにもたらした仮想通貨2つのサプライズ

株価急騰をマネックスGにもたらした仮想通貨2つのサプライズ

1カ月間で株価は最大2倍超、約10年ぶりの高値水準に

際立つマネックスグループの株価上昇

メガバンクなど金融セクターの株価が今一つ冴えない中、マネックスグループ(以下「マネックスG」)の株価上昇が際立っています。

マネックスGは、中核子会社のマネックス証券を始めとするオンライン総合金融サービスの持株会社です。東京証券取引所に上場しているのはマネックス証券ではなく、持ち株会社のマネックスGになります。

1カ月間で株価は最大2倍超、約10年ぶりの高値圏

3月下旬まで概ね350円前後で推移していたマネックスGの株価は、4月に入ってから年初来高値を更新し続け、5月7日には2008年7月以来となる約10年ぶりの700円台を付けました。5月8日には一時735円まで上昇し(終値は714円)、企業価値を示す時価総額はわずか1カ月強の間に2倍超に拡大したことになります。

なお、5月9日は急ピッチな株価上昇による高値警戒感から大幅反落(終値は前日比▲51円の663円)となりましたが、依然として約10年ぶりの高値圏にあります。

マネックスグループの過去6カ月間の株価推移

コインチェック社の買収(完全子会社化)が牽引役

マネックスGの株価急騰をもたらした要因は、コインチェック社の買収に他なりません。

ご存じの通り、コインチェック社はビットコインなど仮想通貨取引所サービスを運営する大手企業の1つです。しかしながら、今年1月26日に同社が取り扱う仮想通貨の1つであるNEM約580億円(注1)が不正流出した件で信用が一気に失墜した結果、事実上の経営危機となりました。

注1:不正流出検知時のレートで換算した概算額

その後、金融庁から2度にわたる業務改善指導を経た後、流出被害に遭った顧客に約470億円を返還していますが、一部ユーザーとは今後も裁判係争になる可能性が高まっています。

こうしてある種の“信用危機”に陥ったコインチェック社を、マネックスGが買収(完全子会社化)することになり、今日に至っています。

4月の株価をコインチェック社買収の経緯とともに振り返る

まずマネックスGによるコインチェック社買収の経緯を、マネックスGの株価と一緒に振り返ってみましょう。なお、株価は当該日の終値です。

4月3日:一部メディアがマネックスGによるコインチェック社の買収を報道(424円、前日比+80円高)

4月6日:マネックスGが買収を正式発表(480円、同+80円高)

4月16日:マネックスGによる買収が完了、コインチェック社の新経営体制発足(590円、同+18円高)

4月26日:マネックスGの決算発表(670円、同+100円高)

この経緯と合わせてマネックスGの株価チャートを見ると、今回の株価急騰が大きく2段階に分けて起きたことがわかります。その第1段階がコインチェック社買収の時期(4月3日~7日)であり、第2段階が決算発表直後(4月26日~)です。

ここで注目すべきは、第2段階での急騰でしょう。

コインチェック社の買収発表が第1のサプライズ

コインチェック社買収の発表前後(一部の先行報道含む)に株価が急騰したのは、いわゆる“サプライズ”もあったでしょう。その一方で、コインチェック社を買収することで発生する様々なリスクが懸念されたことも事実です。不正流出事件の訴訟問題に加え、そもそも論として、仮想通貨ビジネスに対する疑念も大きかったでしょう。

実際、4月上旬は代表的な仮想通貨であるビットコインの価格が一時70万円を割り込むなど低迷していました。コインチェック社の買収が完了した4月16日以降、株価が伸び悩んだ要因の1つと考えられます。

強烈なインパクトを残した第2のサプライズ

ところが、4月26日に行われたマネックスG決算発表で、第2の“サプライズ”が起きました。発表資料によれば、コインチェック社の2018年3月期業績は以下のようになっています。

売上高:626億円

営業利益:537億円(営業利益率は85.7%)

税引前利益:63億円(不正流出に伴う特別損失▲473億円控除後)

ちなみに、前期(2017年3月期)の営業利益は7億円程度と見られます。

想定外の高収益だった仮想通貨ビジネス

マネックスGの税引前利益が86億円(2018年3月期実績)ですから(注2)、コインチェック社買収による業績拡大への期待が高まるのは当然です。今まで謎のベールに包まれていた仮想通貨ビジネスが、とんでもない高収益であることが判明したのです。“えっ!こんなに儲かっているの?”と驚いた人も多かったはずです。

注2:マネックスGとコインチェック社の会計基準が異なると推察されるため単純比較は困難

もちろん、今後は買収による「のれん代」の償却負担も発生しますが、マネックスGの買収対価が36億円であることから、大きなマイナス要因になる可能性は低いと考えられます。

今後は、マネックスGの収益拡大だけでなく、買収した仮想通貨ビジネスの立て直しや、さらなる事業拡大にも注目が集まると見られます。株式市場ではやや期待先行の感は拭えませんが、この高まる期待に対して、マネックスGがどのように応えていくか注目です。

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