新興国が、グローバルな株式市場のリスク要因になる可能性は?(その3)
LIMO / 2018年5月29日 16時15分
新興国が、グローバルな株式市場のリスク要因になる可能性は?(その3)
「柏原延行」のMarket View 2018年5月28日
皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
本コラムは2018年5月22日公開の『新興国が、グローバルな株式市場のリスク要因になる可能性は?(その2)(http://www.toushin-1.jp/articles/-/6110)』の続きです。自動車関税の問題について早急にお伝えしたかったため、コラムの順序が前後し、恐縮です。
さて、今回の記事のポイントは、以下の通りです。
これまでのコラムでは、新興国の脆弱性懸念は、「①米国の金利上昇は、新興国からの資金流出を誘発するという新興国全体の問題」と「②一部新興国の脆弱性(ある国の固有の問題)」から成り立っていることを説明した。そして、トルコなど一部の国では、固有の脆弱性が大きくなっていることに言及した。
「①米国の金利上昇は、新興国からの資金流出を誘発するという新興国全体の問題」が発生しているかをチェックするためには、「新興国の株価指標」の値動きに注目すべきである。そして、(その2)の記事ではこの株価指標を「先進国の株価指標」比で分析した。2011年頃から見ると、先進国が優位な局面が多かったが、足元では新興国優位に展開していることがポイント。
新興国が優位な局面は、米国の金融政策ではなく、商品価格が上昇している局面で優位に立つことが多いと思われる。
念のため、通貨についても、前回利上げ時と今回利上げ時の代表的な新興国通貨の動きを考察する。前回米利上げ時の新興国通貨の値動きを見るかぎり、「米国利上げ時に、新興国からの資金流出」という現象は、通貨の方向性を決定するレベルでは、発生していないように思われる。
私は、これまでのコラムでもお伝えしてきたとおり、メイン・シナリオとして、米国の経済成長率の加速を想定しています。そして、(その2)のコラムでご説明したとおり、「新興国株価指数/先進国株価指数」 (図表1の注書きをご参照)の動きは一定程度トレンドを形成することが多いとも考えています。
加えて、「新興国株価指数/先進国株価指数」の動きは、商品(資源)価格との連動性が高く、商品価格が強含みで推移するときは、新興国株価指数が優位にある場合が多いと考えています。
そして、商品価格は、原則として需要と供給の2つの要素から決定されますが、米国の経済成長率が加速する局面では、世界経済も好調に推移し、商品の需要が高まると考えることが自然です。
「新興国株価指数/先進国株価指数」と「商品価格の値動きを表す指標であるCRB指数」の動きを見ると、新興国が優位な局面は、商品価格の上昇局面で多いことが分かります(図表1)。
それでは、最後に前回(図表2)、今回(図表3)の米利上げ局面での主要な新興国通貨の動きを示します。図表2を見るかぎり、前回の利上げ局面で、通貨の方向性を決定するレベルで新興国からの資金流出が起こったと解釈することは難しいように感じます。
「米国の金利上昇⇒米国への資金還流+新興国からの資金流出⇒新興国の通貨危機」は、直観的には心配になるロジックですが、投資判断のためには、過度な心配も、また有益でないと考えています。
(2018年5月25日 9:00頃執筆)
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