朝ドラ「半分、青い。」で鈴愛を魅了した少女漫画は今や壊滅状態?
LIMO / 2018年6月7日 21時25分
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朝ドラ「半分、青い。」で鈴愛を魅了した少女漫画は今や壊滅状態?
秋風羽織が熱く語った漫画の素晴らしさはいずこへ
NHK朝ドラ「半分、青い。」はまずまずのスタート
4月から始まったNHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」が概ね好評のようです。人気を測る重要なバロメーターである視聴率を見ると、放送開始からの平均視聴率は19.9%です。確かに20%の大台をわずかに割っているので、絶好調とは言い難いのは否めません。
しかし、新年度である4月開始の朝ドラは、多くの視聴者の生活パターンが変わるため、最初は伸び悩む傾向があります。ちなみに、昨年の前半期の朝ドラ「ひよっこ」も、6月末まで1度も20%(週間平均)を超えたことがありませんでしたが、後半から急速に上昇しました。
また、古い時代を舞台にした作品から現代を舞台にした作品に移行すると、視聴率が低迷する傾向も見られます。いわゆる“朝ドラブーム”と称されるようになった2012年以降でも、「純と愛」「まれ」などの視聴率は伸び悩みました。
そうした観点からも、今後の「半分、青い。」の視聴率にも注目したいところです。
「半分、青い。」の主人公はバブル末期に超人気少女漫画家へ弟子入り
さて、「半分、青い。」では、バブル経済がピークから崩壊し始める時期、具体的には1989年~1990年代前半が舞台となっています。まだ携帯電話やメールなどが日常的ではなく、パソコン普及も黎明期直前だった時代です。
そして、永野芽衣が演じる主人公の楡野鈴愛(にれのすずめ)が漫画家を志して、豊川悦司が演じる超売れっ子少女漫画家の秋風羽織(あきかぜはおり)に弟子入りし、日々苦闘しているのが現時点でのストーリーです。
また、この作品を観ていると、当時は少女漫画が大人気だったことが伺えるシーンが数多く出てくるのも特徴です。
直近は少女漫画雑誌や女性向けコミック誌の休刊が相次ぐ
普段、少女漫画雑誌を読まない人でも、理髪店や病院、コインランドリーでの待ち時間や、飲食店などで一度は手に取った経験があるのではないでしょうか。
ところが、このドラマから約30年後になる現在、少女漫画雑誌の休刊・廃刊が相次いでいます。
特に、今年2018年に入ってからは休刊に踏み切る少女漫画雑誌(一部「女性向け」も含む)が多く見られ、4月末に「ARIA」、5月末に「別冊花とゆめ」が最終号発売をもって休刊(事実上の廃刊)となり、「月刊YOU」も10月半ばで休刊することを正式発表しました。
少女漫画雑誌が深刻な苦戦状態に陥っていることが推測できます。
現在の少女漫画雑誌の発行部数ランキング
そこで、最近の少女漫画雑誌の発行部数状況を見てみましょう(女性向けコミック誌は含まず)。2018年1~3月の実績は以下の通りです。なお、カッコ内に記載した増減率は、最初が対1年前比、次が対10年前比です。
第1位:「ちゃお」、約45万部(▲5%減、▲51%減)
第2位:「りぼん」、約15万部(▲14%減、▲54%減)
第3位:「別冊マーガレット」、約13万8千部(▲19%減、▲55%減)
第4位:「花とゆめ」、約11万6千部(▲7%減、▲55%減)
第5位:「LaLa」、約10万6千部(▲13%減、▲39%減)
第6位:「Sho-Comi」、約9万7千部(▲5%減、▲50%減)
第7位:「なかよし」、約8万8千部(▲8%減、▲73%減)
注1:発行部数は各誌1号当たり(例:6月7日号)の平均発行部数、日本雑誌協会の印刷証明書付きベース。
注2:10年前との増減は2008年4~6月実績と比較。
少女漫画雑誌は1年前比で▲10%減、10年前比で▲50%超減の激減
各誌によって多少の違いがありますが、1年前より約▲10%減、10年前より約▲55%減というところでしょうか。10年間で半減以下に落ち込んでおり、しかも、最近は減少率がいっそう拡大していることが分かります。
ちなみに、過去のピーク時の発行部数を見ると、「りぼん」が約240万部(1994年)、「なかよし」が約210万部(1993年)、「別冊マーガレット」が約180万部(1986年)であり、これら3誌はピークの10分の1未満に激減しています。
一方で、「ちゃお」のピークは約107万部(2003年)、「花とゆめ」が約50万部(1985年)、「Sho-Comi」(旧:少女コミック)が52万部(1993年)であり、ピークから激減しているものの、10分の1までには至っていないようです。
「りぼん」「なかよし」「別冊マーガレット」等を見ると、まさしく“山高ければ谷深し”というところでしょうか。
注3:ピーク時発行部数は各誌の公称ベースを採用、一部は筆者推定。
少年漫画雑誌も同様の壊滅状態
ちなみに、同じベースで少年漫画雑誌を見てみると、
第1位:「週刊少年ジャンプ」、約176万部(▲8%減、▲37%減)
第2位:「週刊少年マガジン」、約81万5千部(▲15%減、▲54%減)
第3位:「週刊少年サンデー」、約29万8千部(▲7%減、▲66%減)
となっており、少女漫画雑誌に限らず、漫画雑誌全般に激減状態を見ることができます(『あの「少年ジャンプ」も激減! 発行部数はピーク時の3割未満に(http://www.toushin-1.jp/articles/-/5500)』参照)。
ドラマの中では漫画の素晴らしさを熱弁した秋風羽織だが…
それにしても、こうした漫画雑誌の発行部数低迷を、ただ単に少子化やモバイル文化の影響と決めつけていいのでしょうか。
朝ドラ「半分、青い。」の中で、癌が再発して無事に手術を終えた漫画家の秋風羽織が、楡野鈴愛たちに「漫画の素晴らしさを伝えたい、漫画で皆を幸せにしたい。漫画にはその力がある」と熱く語るシーンがあります。
ドラマの中の話なので割り引いて聞く必要はありますが、そこからピークの約2割水準まで激減することになる漫画雑誌の市場規模を知ったら、秋風羽織はどんなに悲しむだろうかと考えてしまいます。
この先のドラマの展開が楽しみなのと同時に、少女漫画雑誌の復活にも期待したくなります。
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