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サムスンらが開発中の折りたたみスマホにつきまとう「3つの困難」

LIMO / 2018年6月20日 11時15分

サムスンらが開発中の折りたたみスマホにつきまとう「3つの困難」

サムスンらが開発中の折りたたみスマホにつきまとう「3つの困難」

価格、生産、使い勝手……普及はやはりあのメーカー次第?

 韓国のサムスン電子と中国のファーウェイが折りたためるスマートフォンを開発中だと報じられている。いずれもディスプレーには、アップルのiPhone Xが採用したフレキシブル有機ELの進化系を搭載する予定で、早ければサムスンは2019年初頭、ファーウェイはその機先を制するため11月にも発表するつもりではと言われている。

 実現すれば、既存のスマホやタブレットと異なるカテゴリーの商品として市場をリードできる立場に立てる可能性はあるが、その実現には相当の困難を伴うことが予想される。

サムスンは7.3インチ折りたたみで4.5インチに

 まず、現時点で両社の折りたたみスマホの仕様をまとめてみよう。

 サムスンは、グループ会社のサムスンディスプレー(SDC)が製造する7.3インチのフレキシブル有機ELを搭載し、折りたためば4.5インチになる端末を開発中とされる。毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「CES」で、19年に正式発表する見込みという。

 一方、ファーウェイは、中国最大手のディスプレーメーカーBOEから8インチのフレキシブル有機EL(折りたためば5インチ)の供給を受ける予定だとされる。サムスンより先に発売してブランド価値を高めるのが狙いで、これに次いで19年末には5G通信対応の折りたたみスマホを商品化する計画も温めているようだ。

高価なディスプレーで端末価格はパソコン並みに

 実際の商品化に際して予想される困難の1つが価格設定だ。サムスンの折りたたみスマホは20万円前後になる見込みと報じられている。パソコン並みの価格だ。

 ここまで高価になるのは、ディスプレーの価格が大きく影響している。アップルのiPhone Xが折りたためない5.8インチのフレキシブル有機ELを搭載したが、端末価格は1000ドル(約11万円)に設定され、この高さが販売不振の一因になったといわれた。実際、5.8インチ有機ELの価格はiPhone 6 Plusに搭載されたLTPS液晶パネルの2倍以上だったと分析されており、さらに大型の7.3インチで折り曲げ可能にすれば、ディスプレーだけで数万円になることが予想される。

 いかに折りたたんでコンパクトに携帯できるとはいえ、iPadの9.7インチモデルが4万~5万円で購入できる今、20万円のスマホ兼タブレット端末がすぐに市民権を得るのは相当難しいだろう。

量産供給できるディスプレーメーカーも揃わず

 もう1つの困難が、ディスプレーの供給体制だ。現時点でフレキシブル有機ELをスマホ向けに量産供給できるのは、世界でSDCただ1社のみ。SDCが自社端末への供給を優先するため、ファーウェイはSDC以外からディスプレーを調達せざるを得ず、だからこそBOEを選択したとみられる。

 だが、肝心のBOEは、折りたためるフレキシブル有機EL以前に、折りたためないフレキシブル有機ELすらまだ満足に量産できていない。このためファーウェイは、ディスプレーの供給元としてBOE以外に、韓国LGディスプレーや台湾AUOも検討中という。ただし、この2社の量産状況もBOEと大きく変わらず、AUOは大規模な量産ラインを構える大型投資には依然慎重だ。11月までに折りたためるフレキシブル有機ELの量産供給にめどが立つとは思えない。

 SDCは、iPhone Xの不振でフレキシブル有機ELの新規増産計画をほぼ凍結しており、現在保有している生産能力を他の商品で埋める必要がある。これに有効な策が、端末1台あたりに搭載するディスプレー面積を大きくする大画面化だ。

 BOEもすでに中国の成都、綿陽、重慶の3カ所にフレキシブル有機EL工場の建設を決めており、大画面ディスプレーの受注で生産能力を埋めたい事情はSDCと同じだ。折りたたみスマホの商品化計画は、顧客ニーズに基づくものというよりも、生産面の需給ギャップを埋めるための「苦肉の策」という側面が、現状ではきわめて強いのではないか。

対応アプリが少なくユーザー困惑か

 さらに困難が予想されるのは、端末の使い勝手を左右するアプリの普及だ。折りたたみスマホの商品化当初は、当然のことながら、大半のアプリは折りたたみ端末での使用を想定した仕様にはなっていないだろう。

 サムスンもファーウェイもアンドロイド陣営に属するが、アンドロイドは数多くの端末メーカーが採用しているために、アプリの更新がiOSよりも遅く、アプリ更新の時期についてもiOSほど足並みが揃わない。

 せっかく端末を購入しても、大半のアプリが折りたたみ端末に対応せず、「使えるアプリが少ない」などとユーザーから不評を買ってしまうことも想定される。このためサムスンは、折りたたみ端末の開発と並行して、アプリやユーザーインターフェースも並行して開発中だという。

普及拡大にはアップル参入が必須

 ディスプレー業界内では、すでに10万~15万回の折りたたみに対応する耐久性の高いフレキシブル材料が実用化されつつあり、19年に折りたたみスマホを発売することは可能だろう。折りたたみ対応は日本の優秀な部材メーカーの業績を押し上げることにもつながるし、さらなるフレキシブル化は曲面デザインが多い車載ディスプレーとして採用が増えるきっかけにもなる。それゆえ有機ELディスプレー技術のさらなる進化には大きく期待するのだが、前記の理由から、初期の折りたたみスマホは「商品化世界初」を競うテストマーケティング的な商品にならざるを得ない。

 普及のカギを握るのは、やはりアップルになる。アップルが本格参入を決めれば、折りたたみ有機ELディスプレーの生産量増加に伴うコストダウン、対応アプリの増加に伴う使い勝手の向上が一気に進むとみられるからだ。そのアップルは、早ければ20年にも折りたたみスマホを商品化するのではと噂されている。

(津村明宏)

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