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インドと中国で明暗くっきり、総崩れ状態の新興国株

LIMO / 2018年7月3日 21時35分

インドと中国で明暗くっきり、総崩れ状態の新興国株

インドと中国で明暗くっきり、総崩れ状態の新興国株

内憂外患の中国を筆頭にトランプ砲と米利上げが直撃

米保護貿易主義が世界的な株価の下落を招いている中で、米利上げの影響もあって新興国の株価がより大きく下げています。ただし、インドでは株価が上昇しており、同じ新興国でも評価が分かれています。今回は新興国の代表格である中国、ブラジル、インドの政治経済情勢を探ってみます。

新興国株が4月以降に急落、震源地は米国

世界的に株価が軟調となっています。とりわけ新興国の株式市場が大きな打撃を受けていますが、これは米保護貿易主義と米利上げが主な理由と考えられています。

トランプ政権が矢継ぎ早に追加関税を発表していることから、経済に占める一次産品の比率が大きい新興国は、世界的な貿易規模の縮小でより大きな打撃を受けると見られています。

また、米国ではインフレ率が目標である2.0%に到達し、今後はさらに上振れる見通しとなっており、インフレ加速に合わせて米利上げスピードも加速することが見込まれています。

株価の動きを確認すると、主要先進国の株価指数の動きが反映されているMSCIワールドの年初来騰落率は6月29日現在で0.7%下落とまだマイナス圏にありますが、4月以降は1.1%上昇とほぼ横ばいで踏みとどまっています。

一方、MSCIエマージング・マーケットは年初来で7.7%下落、4月以降で8.7%下落と、ここ3カ月で急落しています。

2017年は新興国株が34.4%上昇したのに対し先進国株価は20.1%上昇にとどまり、新興国が先進国が大きくアウトパフォームしましたが、2018年は状況が一変しています。

中国は過剰債務と米中貿易戦争で内憂外患

新興国のなかでもとりわけ大きく株価が下落しているのが中国で、中国の代表的な株価指数である上海総合株価指数の6月29日現在の年初来の騰落率は13.9%下落、4月以降では10.1%下落と下げ足を速めています。また、年初来の高値から安値までの下落率は21.7%に達しています。

中国政府は現在、金融システムの健全化、すなわち企業の過剰債務削減の真っただ中にあり、金融は引き締め気味となっています。1-3月期のGDP成長率は前年同期比6.8%増と3四半期連続で6.8%増となり、数字を見る限りでは好調を維持していますが、過剰生産能力の抑制に伴うインフラ投資の減少を個人消費の拡大で補う構図となっています。

ところが、4月から5月にかけてはインフラ投資が引き続き落ち込むなかで、個人消費にも陰りが見えはじめています。

たとえば、1-5月期の固定資産投資は前年同期比6.1%増と予想の7.0%に届かなかったほか、5月の工業生産は前年同月比6.8%増と4月の7.0増から減速するなど、インフラ投資の減速が続いています。加えて、5月の小売売上高は前年同月比8.5%増と予想の9.6%増に届かず、4月の9.4%増からは想定外の減速となっています。

中国人民銀行(中央銀行)は6月24日、預金準備率の引き下げを実施し景気の下支えに動きましたが、緩和的な金融政策が人民元の下落に拍車をかける結果となっています。実際、4月に1ドル=6.2元台だった人民元レートは6月下旬に一時6.6元台となり、下落に歯止めがかからなくなっています。

中国は国内に過剰債務問題を抱えている中で、米中貿易摩擦の直撃を受けてまさに内憂外患となっており、景気に急ブレーキがかかるのではないかとの警戒感が株価や人民元の下落を招いているようです。

ブラジルではストの影響で株価が急落、大統領選への不透明感も

米中貿易戦争の影に隠れていますが、ブラジルでも株価が急落しています。ブラジルの代表的な株価指数であるボベスパ(BOVESPA)指数の6月29日現在の年初来騰落率は4.8%下落、4月以降では14.8%下落となり、全国規模のストライキが発生した5月下旬以降だけで10%以上下げています。

ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは昨年7月、市況に応じて燃料価格を日々決定する制度を導入しましたが、原油価格の高騰と米利上げによるレアル安で燃料価格が急騰。この燃料価格の高騰に対抗してトラック運転手が5月21日にストライキを開始したことから、全国的に供給網が遮断され、主要輸出品目である農産品を中心に被害が拡大しました。

事態を重く見た政府は燃料価格の引き下げを決定しましたが、この方針がペトロブラスの収益を圧迫するとの懸念を強め、同社の株価が急落。指数への寄与度の大きい同社の下げをきっかけにブラジル株は総崩れとなっています。

また、10月に大統領選を控えた政治的な不透明感も株価を押し下げているようです。最新の世論調査によると、収賄などの容疑で収監されたルラ元大統領が支持率でトップを走っているほが、極右のボウソナロ氏の支持率も高く、ポピュリズムが根強いことをうかがわせています。

一方、金融市場からの支持が高いアルクミン氏の支持率は低迷しており、ポピュリズムの復活による財政赤字の拡大、レアル安、物価高などが警戒されています。

インド経済は混乱を乗り越え再び7%台の成長に

新興国の株価が軒並み安となる中で、インド株が例外的に上昇しています。

インドの代表的な株価指数であるSENSEX指数の6月29日現在の年初来の騰落率は、4.0%上昇とプラス圏に浮上。4月以降は7.4%上昇と、世界的に新興国の株価が急落している中で1人気を吐いています。

好調な経済が株価の背景となっており、1-3月期のインドのGDP成長率は前年同期比7.7%増と市場予想の7.4%増を上回り、10-12月期の7.0%増から伸びを加速しています。

一昨年に十分な準備がなく実施された高額紙幣の廃止や昨年7月に導入された財サービス税(GST)による混乱などから、2017年のインドの経済成長率は6.2%と4年ぶりに7%を割り込みましたが、2018年はそうした混乱を乗り越え再び高成長を実現すると見られています。

株価の変動要因は三者三様、しっかりと見極めてピンチをチャンスに

このように、中国、ブラジル、インドの株価変動要因は三者三様となっています。関税報復合戦や米利上げをきっかけとした新興国からの資本流出懸念はベースではありますが、すべてを説明するわけではありません。現在のように市場が混乱しているときこそ、国別の動向をしっかりと見極め、投資のチャンスに変えていきたいものです。

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