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三重富士通取得の台湾UMC、「非先端」に活路

LIMO / 2018年7月10日 10時15分

三重富士通取得の台湾UMC、「非先端」に活路

三重富士通取得の台湾UMC、「非先端」に活路

最先端はTSMCと差開く、200㎜と300㎜レガシーで生き残り

 半導体ファンドリー大手の台湾UMCが、三重富士通セミコンダクターの全株式を取得すると発表した。譲渡金額は576億円。関連当局の承認を前提に、売却は2019年1月1日を予定する。UMCは以前から三重富士通に資本参加しており、今回残り株式を取得することで、今後は100%出資の生産拠点としていく。

 UMCは今回、日本国内に生産拠点を構えることになったが、実は以前にも前工程工場を保有していた。千葉県館山市にユー・エム・シー・ジャパン(UMCJ)として200mmラインを構えていたが、稼働率低迷などにより12年末に操業を停止。精密機器メーカーに工場を売却していた。

 改めて日本国内の拠点を持つことになるが、今回は館山時代の200mmではなく、300mmラインだ。同ラインは最先端ではないものの、90/65/40nmなどを中心にソニーやソシオネクスト、デンソーなど国内有力企業を顧客として抱える。

営業利益率は5%以下

 今回のUMCの三重富士通取得は、ファンドリー業界でどうやって生き残っていくかを内外に示したものといえそうだ。それだけ、UMCが置かれている事業環境は決して楽観視できるものではない。

 ファンドリー業界では、TSMCが市場シェアの約半分を握る状況となっており、圧倒的な力の差を見せつけている。これに、UMCや米グローバルファウンドリーズ(GF)、中国SMICなどの2番手グループが攻勢をかける構図となっているが、近年はその差がより開いてしまった印象だ。

 売り上げ成長はもちろんのこと、特に目立つのが2番手グループの収益低下。UMCは17年以降、ファンドリー事業の営業利益率が毎四半期5%を割っている状況で、SMICも18年に入りライセンス収入による一時的利益の押し上げはあるものの、営業利益率は1桁前半まで低迷している。GFは非公開企業であるため、正確な状況を把握するのは困難だが、UMCやSMICと大きく状況は変わらないと見られる。

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拡大する(/mwimgs/0/9/-/img_09afd722f7be90b33e34d0c30a03805596746.png)

28nmの需要が低迷

 不振を招いている要因の1つが、28nm世代の低迷だ。TSMCが10/7nm世代をすでに量産化しているのに対して、2番手グループはこの28nmが主力プロセスとなっており、業績の浮沈を握る存在となっている。しかし17年以降、中華圏スマートフォン(スマホ)の調整に伴い、主用途であるスマホ用プロセッサーの生産が低迷。同時に稼働率を保つために、2番手グループ同士が価格競争に走ったところもあり、一気に収益が悪化した。

 UMCは今後、300mmウエハーを用いた最先端プロセス領域では、積極的な事業展開を避けることになりそうだ。先端プロセスは開発および設備投資負担が莫大で、しかもTSMCが独走を続けている以上は、もう手がけるメリットが少ない。それよりも、需要が旺盛で、かつ投資負担も軽い、成熟プロセス(レガシープロセス)の需要を確実に取り込んでいく方が賢明な判断といえる。

 三重富士通の取得は生き残りを賭けた重要な一手と理解することもできる。

200㎜は旺盛な需要、設備投資も積極化

 先端プロセスで苦戦を強いられている一方で、200mmラインは旺盛な需要が継続して好調に推移している。ドライバーICやパワーマネジメントICなどが牽引材料となって、TSMCも含めてファンドリー企業のほとんどがフル稼働の状況だ。

 UMCも18年設備投資は11億ドルと大幅に抑制しているが、うち200mmラインへの投資額は全体の3分の1を占めており、200mm投資に限れば前年比で2倍以上の金額となっている。

 SMICも200mm投資に積極的だ。同社は年初時点で18年設備投資を19億ドルと設定していたが、第1四半期(1~3月)決算発表にあわせて、これを23億ドルに増額修正。増額分は天津および深センの200mmラインの増産投資に充てる予定だ。

 200mm主体のファンドリー事業は設備投資負担も軽く、安定した稼働が見込めることから収益性も高い。それを実証しているのが、台湾ヴァンガードやイスラエルのタワージャズといった、いわゆるスペシャリティーファンドリーを展開する企業だ。これら企業は常に安定した利益を確保しており、タワージャズは10%台中盤を、ヴァンガードは20%台前半をキープしている。

TSMCに唯一対抗できるのはサムスンだけか

 先端プロセスでは、TSMCが独走体制を強めるなか、GFも含めて2番手グループがどういった戦略を打ち出してくるのか、今後の注目点は多い。GFも先ごろ人員削減が報じられており、事業体制の大幅な刷新が行われる可能性もありそうだ。

 先端プロセスでは韓国サムスン電子が今後TSMCにどこまで迫れるか、という点も関心事だ。実質的にサムスンが唯一TSMCに対抗できる勢力といっても過言ではない。17年に向こう5年以内にファンドリー業界でシェア25%の獲得を目標に掲げ、最先端の7nmも19年後半からの量産開始を予定している。

(稲葉雅巳)

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