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相次ぐ熱中症事故で浮き彫りになった学校の「エアコン格差」

LIMO / 2018年7月21日 20時15分

相次ぐ熱中症事故で浮き彫りになった学校の「エアコン格差」

相次ぐ熱中症事故で浮き彫りになった学校の「エアコン格差」

ビジネス、今日のひとネタ

猛烈な暑さが続き、各地で猛暑日と呼ばれる35度以上の気温が記録されています。この時期に特に気をつけなければいけないのが「熱中症」です。猛暑日は、大人にとっても要注意ですが、子どもの場合、より一層の注意が必要です。

愛知県豊田市では、7月17日に小学1年生の男児が校外学習のあと熱中症で亡くなるという不幸な事故があり、学校側の管理体制が適切だったのか物議を醸しました。熱中症が児童・生徒を襲ったのはこの件だけではありません。たとえば7月19日には、東京都練馬区の高校で、体育館で詐欺被害防止に関する講演会を開いていたところ、生徒25人が熱中症のような症状を訴え、このうち20人が病院に搬送されたそうです。

子どもたちを熱中症から守るために、学校の現場ではどんな手立てがあり、どんな対策がなされているのか(あるいはなされていないのか)を考えてみたいと思います。

大人以上に注意が必要な子どもたち

まず、そもそもなぜ子どもの熱中症には、大人よりも注意が必要なのでしょうか?

理由の1つとして、子どもは大人に比べて、暑さに弱いということが挙げられます。子どもは体温を調節するための身体の機能が大人ほど出来上がっていません。特に「汗をかいて体温を下げる」という機能が未熟なため、体の中に熱がこもりやすく、結果として体温が上がりやすくなってしまいます。

また、身体の中の水分の割合が大人よりも高いのも子どもの特徴です。個人差がありますが、成人で体重の60〜65%くらい(お年寄りだと50%台)が水分だといわれているのに対して、子どもは体重の70%くらいを占めるといいます。そのため、気温の変化の影響を受けやすいのです。

体調変化をつかんで訴えるのが苦手

また、子どもは自分で体調の変化をつかんで、適切に訴えることができない場合も多くあります。

豊田市で熱中症により亡くなってしまった男児は、校外学習に向かう途中や学校へ戻る途中に「疲れた」と口にしていたそうです。大人であれば、猛暑の中で体調を崩した時、すぐに自分の症状を「熱中症かも……」と気づくかもしれませんが、子どもにとっては難しい場合も意外にあるのです。子どもを熱中症から守るためには、自己管理に任せるのではなく、大人が注意深く観察してあげる必要があるでしょう。

加えて、子どもは身長が低い分、地面からの照り返しの影響を強く受けます。特に都会ではアスファルトやコンクリートで舗装された場所も多いため、照り返しは強烈で、身長の高い大人以上に、子どもたちの身体は熱にさらされていることになります。

自治体による教室の「エアコン格差」

学校での熱中症が相次いでいる中、議論になっているのは、教室の「エアコン設置」についてです。

文部科学省の調査によると、公立小中学校(普通教室)のエアコン設置率は、20年前の1998年は3.7%だったのが、2017年には49.6%まで上昇しています。一見すると、着実にエアコン設置率が伸びているように思えますが、実は自治体によって大きな格差があるのです。

設置率が最も高いのは東京都で、実に99.9%と、ほとんどすべての教室にエアコンが備え付けられています。次に高いのは97.7%の香川県です。一方で、関東でも千葉県は設置率 44.5%、茨城県は50.8%。四国でも高知県は19.0%、徳島県は38.9%、愛媛県に至っては5.9%と、同じ地方でも大きな差があります。ではなぜ、自治体によってこれほどの差が生まれてしまったのでしょうか。

裏にある自治体の財政事情

エアコン設置が進まない背景には、各自治体の財政的な事情があるようです。

教室の広さをカバーするようなエアコンは、家庭用とは違い、1台設置するだけでも高額な費用がかかります。さらに、学校にエアコンを設置するとき、「ある教室では設置しているが、ある教室では設置していない」ということが起きると、保護者や生徒の間で不公平感が生まれてしまいます。そのため、市町村としては、「その自治体のすべての学校のすべての教室に、一斉にエアコンを導入すること」が求められるのです。

各家庭でエアコンを設置するなら、安いものを選べば数万円で済みますが、各自治体が学校にエアコンを導入する場合、数億~数十億円の予算を計上する必要が出てきます。

エアコンに振り向ける予算がない……

また、校舎の老朽化による補強・耐震工事や建て替え工事が必要とされている学校も多く、「それに比べるとエアコンの設置は優先順位が下がってしまう」というのが現状のようです。

しかし、住んでいる自治体の財政状況によって、熱中症の危険におびえながら授業を受けなければいけない子どもと、快適な室温の中で授業を受けられる子どもがいるというのは、それはそれで不公平といえるかもしれません。

では、財政的な困難を乗り越え、それぞれの自治体が教室のエアコン普及率を伸ばしていくために、何か対策はあるのでしょうか。

設置へのさまざまなアイディア

一度に数十億円もの予算を用意することは難しくても、同時にすべての教室にエアコンを設置する方法の1つが、業者との「リース契約」です。購入ではなく、リース契約を結ぶことで、初期費用だけでなく、修繕費やメンテナンス費などの費用を平準化することができるというメリットがあります。埼玉県の上尾市では、エアコンをリースで設置することで、市内の小学校(計20校)に設置した場合にかかるとされる約10億円の経費を、年間で約8000万円まで落とすことができたといいます。

また、自治体の予算によってエアコンを設置することが難しいのであれば、クラウドファンディングで資金を調達してはどうかという意見も出てきています。実際に、沖縄県石垣市では、「ドラゴンクエスト」の音楽を手がけた作曲家のすぎやまこういち氏の発案で、2017年12月から2018年にかけて、クラウドファンディングを使ったエアコン設置プロジェクトが行われました。

子どもたちを熱中症から守り、快適な学習環境を作っていくためには、ただ自治体にエアコンの設置を求めるだけでなく、厳しい財政状況を乗り越えるようなさまざまなアイディアを出していく必要があるでしょう。

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