仮想通貨の活況をけん引してきた証拠金取引の倍率を制限へ
LIMO / 2018年7月28日 11時35分
仮想通貨の活況をけん引してきた証拠金取引の倍率を制限へ
「証拠金取引」「信用取引」「先物取引」の違いは?
仮想通貨の証拠金取引倍率が4倍以内に引き下げへ
2018年7月24日、仮想通貨の業界団体である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が仮想通貨の証拠金取引の倍率について、現在の約25倍から、4倍以内に引き下げる方針であることが報道されました。
この「証拠金取引」とはどのような取引なのでしょうか。「信用取引」や「先物取引」とはどう違うのでしょうか。ここでおさらいしておきましょう。
「証拠金取引」は「保証金取引」と言われることもあります。一定額の証拠金(保証金)を預け入れれば、それを担保にしてより大きな金額の売買ができるものです。
株式などを売買する場合には一般的に、有価証券の現物の受け渡しをします。これを「現物取引」と言います。それに対して、証拠金取引では、現物の受け渡しは行わず、「差金決済」と呼ばれる、反対売買によって確定した損益額(差金)のみを授受する決済方法が用いられます。
仮想通貨の証拠金取引は「仮想通貨FX」と呼ばれることが多いように、外国為替証拠金(FX)取引のルールをベースにしています。そこで、FXの例で証拠金取引について説明しましょう。
たとえば、1ドル=100円の場合、1万ドルを購入するには100万円が必要ですが、国内の多くのFX会社では、その4%(4万円)の証拠金を預け入れれば取引ができます。25分の1の資金があれば、取引ができるわけです。見方を変えれば「預け入れた証拠金の25倍の取引ができる」ということになります。
「証拠金取引」と「信用取引」「先物取引」の違い
「証拠金取引」と似たように見える取引に「信用取引」や「先物取引」があります。どう違うのでしょうか。
証拠金取引は、おおざっぱに言えば「反対売買時の損失(差金)に相当する証拠金を入れておけば、全部の金額を用意しなくても取引ができる」と表現できます。一方で信用取引は、一定額の証拠金を担保に交換業者から仮想通貨を借りて売買する取引です。つまり借金と同じです。
証拠金取引では、決済期限(有効期限)はありませんが、信用取引では一般的に決済期限(30日間など)が決まっており、期限までに反対売買をしなければなりません。期限までに反対売買しなかった場合には、強制的に決済されます。
反対売買によって損益額(差金)が確定するという点では、証拠金取引も信用取引も同じですが、証拠金取引では取引に必要な全額の資金を用意しなくてもよいのに対して、信用取引では、借金ではあるものの、必要な仮想通貨を全額用意するという違いがあります。
これらに対して「先物取引」は、一定額の証拠金(保証金)を担保に決済期限日に売買することを約束する取引のことです。限月(今週・来週・四半期など)が決まっており、期限までに反対売買をしなければなりません。一般的に、先物取引の決済は、現物の受け渡しではなく、差金決済で行われます。
証拠金取引で取引する人が約8割。市場の活況を牽引
国内の仮想通貨交換業者は、証拠金取引、信用取引、先物取引ともに、預け入れた証拠金に対して数倍の取引が可能です。少ない証拠金で大きな金額の取引ができることから、「レバレッジ効果がある」「レバレッジが効く」などと表現します。レバレッジ(leverage)は英語で「てこ(の力)」という意味です。
仮想通貨の取引が伸びているのは、値動きが大きいことに加えて、多くの業者でレバレッジ取引ができることがあります。
日本仮想通貨交換業協会によれば、2017年度の国内の仮想通貨の取引量は69兆1465億円で、そのうち現物取引は18.4%、証拠金・信用・先物のレバレッジ取引が81.6%となっています。さらに、レバレッジ取引のうち、97.4%が証拠金取引となっています。
つまり、仮想通貨の売買をする人のうち約8割が証拠金取引で取引を行っているのです。文字どおり、証拠金取引が活況な仮想通貨市場を牽引しているといえます。
法規制のない仮想通貨のレバレッジ(倍率)
FXでは、国内のFX会社のレバレッジは25倍以下(証拠金は4%以上)と法律で定められています(個人向けの場合)。一方で、仮想通貨のレバレッジについてはこれまで法規制がなく、交換業者にゆだねられていました。現状は、FXに準じて、倍率の上限を25倍としている交換業者が多いようです。
レバレッジはチャンスでもあり、リスクでもあります。100万円分の仮想通貨を現物で購入し、101円に値上がりしたとすると収益率は約1%です。ところが、証拠金取引では資金は約4万円しか入れていません。このため、収益率は約25%にもなります(手数料などを除く)。
もちろん、逆に予想が外れて1円値下がりすると、約25%もの損失ということになります。米ドルなどの場合、1日で1円(約1%)価格が変動することはあまりありませんが、仮想通貨の場合、1日で10%以上動くすることも珍しくありません。
4%(25倍)の証拠金だと、短時間で吹き飛ぶだけでなく、さらにそれ以上の大きな損失になる恐れがあります。今回、業界団体が自主規制で、証拠金の倍率を引き下げるのも、投資家の資産の安全性を守る狙いがあるようです。
もちろん、証拠金の倍率が下がっても、価格変動が大きいことに違いはありません。リスクとリターンを考慮し、自分に合った投資金額や投資方法を選択することが大事でしょう。
注:各取引の定義や市場規模については、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の資料(「仮想通貨取引についての現状報告(https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf)」平成30年4月10日)などを参照しました。
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