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コンビニの「レシート大丈夫ですか?」が日本語としておかしい理由

LIMO / 2018年7月29日 12時10分

コンビニの「レシート大丈夫ですか?」が日本語としておかしい理由

コンビニの「レシート大丈夫ですか?」が日本語としておかしい理由

実践! 好かれる人の話し方

あなたは日ごろ「大丈夫」という言葉をどのくらい耳にして、使っているでしょうか?

たとえば、コンビニエンスストアでは「袋1枚で大丈夫ですか?」「温め大丈夫ですか?」「ポイントカード大丈夫ですか?」「レシート大丈夫ですか?」など、「大丈夫」が多用されていますよね。でも実は、いま挙げた「大丈夫」は、すべて間違った使い方なのです。

この記事では、『好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい』の著者で、ANAやディズニーなど、7年でのべ100万人にもおよぶ接客を行い、現在はコミュニケーション講師として活躍する桑野麻衣さんが、「大丈夫」の何が問題なのか、どう言えば「知的でエレガントな話し方」だと感じてもらえるのかを解説します。

「大丈夫」とは本来、「安心」「安全」の意味

日常生活で何かと多用される「大丈夫」ですが、ここで本来の意味を再確認しておきましょう。

・大丈夫(だいじょうぶ)

(1)あぶなげがなく安心できるさま。強くてしっかりしているさま。
 例:「地震にも大丈夫なようにできている」「食べても大丈夫ですか」

(2)まちがいがなくて確かなさま。
 例:「時間は大丈夫ですか」「大丈夫だ、今度はうまくいくよ」

(小学館『デジタル大辞泉』より抜粋)

このように、本来、「大丈夫」は「安心」「安全」または「確信していること」を意味します。体調が悪そうな人に対しての「体調は大丈夫?」や、職場での「資料の確認は大丈夫?」も正しい使い方ですね。

「大丈夫」の間違った使い方 よくある3パターン

では、「大丈夫」の間違った使い方にはどういったものがあるのでしょうか。それらは、大きく次の3つのパターンに分けられます。

(1)必要・不要の場合
 必要か、不要かをたずねる、または答える際に使われる。
 例:「レシート、大丈夫ですか?」「(レシートは)大丈夫です」

(2)可・不可の場合
 できるか、できないかをたずねる、または答える際に使われる。
 例:「このカードで払っても大丈夫ですか?」「(そのカードをお使いいただいて)大丈夫です」

(3)諾・否の場合
 してもいいと許可を取る(与える)場合、してはいけないと断る(断られる)意味で使われる。
 例:「この台車使っても大丈夫ですか?」「(その台車を使っても)大丈夫ですよ」

これらはすべて誤った使い方なのです。そもそも日本語として間違った使い方であるということを認識しましょう。私がこの「『大丈夫』が大丈夫ではない問題」をこんなに熱く語るのには理由があります。私自身の非常に苦い経験をお話しします。

ANAでの苦い思い出

私もANAのVIPカウンターで働いていたときに、思わず間違った「大丈夫」の使い方をしてしまったことがありました。とある、接客に非常に厳しいお客様に対応していたときのことです。

その方は携帯電話の画面に映ったチケットを私に見せ、「これで通って大丈夫?」とお聞きになりました。この場合、「可・不可」を問われているので、「大丈夫」は使えません。しかし、緊張していたのか、私も「はい。こちらで通っていただいて大丈夫です」と即座に答えてしまいました。そうすると、そのお客様は笑顔でこうおっしゃいました。

「君ってお手本のカウンター担当なのに、『通っていただいて大丈夫』なんて、おもしろい日本語を使うんだね」

これには心の底から落ち込みました。私の言葉づかいが試されていたことに、後になってから気づきました。本来であれば、「そちらの携帯電話でお通りいただけます(お通りいただいて問題ございません)」とお答えすればよかったのです。

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「大丈夫」で濁さず、しっかり言い切る

「大丈夫」というのは、イエス、ノーをはっきりさせるとき、語調を柔らかくするためについつい言ってしまいがちです。確かに、「必要ですか?」「使いますか?」「不要です」「結構です」と言い切るのは、ちょっと抵抗感がありますよね。

そんなときには、表現を工夫することをおすすめします。お伺いするときには「〇〇はご入用ですか?」「〇〇はお使いですか?」と言い換えたり、断るときには「結構です。ありがとうございます」と最後に感謝の言葉を付け加えたり、声や表情を少し明るくしたりと、少しの工夫で相手が受け取る印象はずいぶん変わります。

「大丈夫です」という言葉で曖昧に濁さなくても、相手への思いやりは、言葉づかいや声や表情で、いくらでも表すことができます。ぜひ「イエス・ノー」をはっきりと尋ねて、伝えられるようになりましょう。

 

■ 桑野 麻衣(くわの・まい)
学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)に入社。7年間で100万人を超えるお客様サービスに携わる。ANA在籍中にオリエンタルランドに出向。その後、ジャパネットたかた、再春館製薬所グループ企業を経て独立。接遇マナーやコミュニケーション、人材育成等の企業研修や各種セミナー、大学生や経営者、医療法人向けの講演など幅広く活動中。

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