KDDIとカカクコムが業務資本提携をする背景
LIMO / 2018年8月3日 14時15分
KDDIとカカクコムが業務資本提携をする背景
2018年8月2日にKDDIとカカクコムが業務資本提携することが発表(http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/08/02/3311.html)されました。あわせてカカクコムの大株主でもあるデジタルガレージとも戦略的提携に向けての基本合意がされたと発表(http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/08/02/3309.html)がされています。その背景について考えてみましょう。
KDDIもカカクコムも業績は安定しているが低成長
KDDIとカカクコムらの取り組みを見る前にそれらの直近の決算発表から足元の業績動向及びファンダメンタルズを確認しておきましょう。
KDDIは2018年8月1日に2019年3月期Q1決算を発表しています。その決算短信(http://media3.kddi.com/extlib/files/corporate/ir/library/presentation/2019/pdf/kddi_2018_1qc_XUacQ6.pdf)によれば、売上高の対前年同期比は+2%増、営業利益は同+3%増、親会社の所有者に帰属する四半期純利益は同+3%増と、増収増益ながらも急成長という状況ではありません。
KDDIの決算説明会資料(http://media3.kddi.com/extlib/files/corporate/ir/library/presentation/2019/pdf/kddi_180801_main_yne4wT.pdf)によれば、対前年同期比で増益の背景を見ていくと次のような内容となっています。
パーソナル:対前年同期比▲112億円
ライフデザイン:同+67億円
ビジネス:+29億円
グローバル:+70億円
その他:+21億円
となっており、「パーソナル」のモバイル通信収入における減益を「ライフデザイン」における付加価値ARPA(Average Revenue per Account)収入における増益や「グローバル」での増益がカバーする構造となっています。
一方、カカクコムの方はというと、2018年8月2日に発表された2019年3月期Q1の決算では、決算短信では、売上収益(売上高)は同+18%増、営業利益は同+9%増、親会社の所有者に帰属する四半期純利益は同+2%増と、こちらも増収増益ながらも、営業利益は2桁成長率は達成できていません。
カカクコムは、「価格.com」や「食べログ」といった知名度のあるメディアを抱えていますが、現在は次なる売上高や利益をけん引する新メディアの立ち上げに時間がかかっている印象を受けます。
両社の資本業務提携の狙いとは
資本業務提携の発表内容は同一であろうが、それぞれからは期待する点が異なることもあるので、今回はそれぞれの視点から何を狙っているのかを改めてまとめてみましょう。
KDDIから見た今回の提携
KDDIの発表(http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/08/02/3311.html)における内容は大きくは二つに分かれています。
一つは、「両社のサービス・メディアを連携した事業の高度化」
カカクコムの提供する「価格.com」「食べログ」など生活者視点から多様なニーズにお応えする各種サービス・メディアと、KDDIがau利用者に向けて提供する「auスマートパス」「au WALLET」「Wowma!」等の各種サービスとの連携を通じて、お客さまのライフスタイルにあわせた最適な商品・サービスのご提案を実現していきます。
こうしてみるとカカクコムの有力なメディアとau(KDDI)側の決済等のサービス機能をまずは連携させるという点に主眼が置かれていると見えます。
二つ目は、「両社のアセットを活用した新しい事業の創出」
両社のアセットを融合し、デジタルマーケティングや広告商品の開発、新規サービス・メディアの開発など、新たな事業創出を推進していきます。
こちらは将来の話であるので具体的な内容はありませんが、新たにサービス・メディアをつくることについて触れられています。
カカクコムから見た今回の提携
さて、ここではカカクコムから見た今回の提携はどうなのでしょうか。決算説明会資料(http://pdf.irpocket.com/C2371/y7if/KQAO/Pgnz.pdf)には大きく3つのポイントが記されています。
両社の強みを活用したインターネット広告及びデジタルマーケティング事業等の推進
両社サービスを連携することによる事業拡大の検討
両社の保有する各種アセットを活用した新規事業の検討・開発
こちらでは広告とマーケティングが一番に来ており、次いでサービスの連携となっています。
こうしてみると、それぞれが欲しいものを満たすことができる業務資本提携とは言えますが、短期的にはユーザー接点を既存のメディアが求め、また決済ツールなどの適用範囲を求めるなどの効果しか期待できないようには見えます。お互いに低成長に対する打開策を求めた施策という声も出てきそうではあります。
株式市場の反応はどうか
今回の資本業務提携を発表した後の最初の取引日である2018年8月3日の株価の動きはKDDIはほぼ変わらずで落ちついているものの、カカクコムに関しては株価が大きく値を下げ前場では対前日比▲10%以上の下落となっています。一言でいえば、カカクコムの株主からすれば今回の決算発表および業務資本提携の発表は「ネガティブ・サプライズ」となっています。
ただ、カカクコムの決算でいえば、会社による2019年3月期Q2累計の連結業績予想に対しては当期純利益の物足りなさは残るものの、売上収益や営業利益にそれほど未達感はありません。
また、今回カカクコムの株式は発表(http://pdf.irpocket.com/C2371/y7if/KQAO/hqY6.pdf)によれば電通が保有する部分が「市場外での相対取引による同社普通株式の譲渡」としてKDDIに引き渡されるため、短期的な需給を心配する必要もなさそうです。
これまでカカクコムは「価格.com」や「食べログ」といった独自にサービス・メディアを立ち上げ、そして拡大してきた実績があります。今回の業務資本提携が同社による打ち手の少なさによるものと見えているのかもしれません。今度の協業の展開には注目です。
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