ダイキンは国内で猛暑効果だけではなく世界で売上伸ばす
LIMO / 2018年8月7日 18時30分
ダイキンは国内で猛暑効果だけではなく世界で売上伸ばす
2018年8月7日にダイキン工業(ダイキン)は2019年3月期Q1(4-6月期)決算を発表。対前年同期比で2桁成長率を売上高及び営業利益、当期純利益で達成した。今回は同社の決算短信(http://www.daikin.co.jp/investor/data/zaimu/h31/tanshin180807.pdf)や決算説明会資料(http://www.daikin.co.jp/investor/data/zaimu/h31/hosoku180807.pdf)をもとにその背景を振り返ろう。
2019年3月期Q1は増収増益の好スタート
Q1決算は、売上高は対前年同期比+12%増、営業利益は同+12%、親会社株主に帰属する四半期純利益は同+17%増と、2桁成長率の増収増益を達成した。好調なスタートといえる。尚、2019年3月期の上期(Q2累計)及び通期に関して会社による連結業績予想の修正はない。
ダイキンのセグメントは主に、「空調・冷凍機事業」、「化学事業」、「その他事業」の3つに分かれているが、そのいずれもが増収となった。
また、営業利益の増収の背景であるが、売上高が伸長したことによる「拡販」効果が最も大きく、次いで「売価」のアップ、「コストダウン」などが寄与した。その一方で、原材料費のアップや固定費が増加したこともあるが、そうした利益にとってのマイナス要因を乗り越えて増益となった。
世界の空調事業の動向はどうであったのか
続いて、同社の空調事業の地域別売上高の動向を見ていこう。この売上高には冷凍・冷蔵機事業、フィルタ事業を含んでいる。
同社の空調事業の中でQ1で最も売上高が大きいのが米州だが、米州は対前年同期比+10%増となっている。また次いで売上高の大きい中国も同+10%増、3番目に売上高の大きな日本は同+8%増と、主要地域いずれもが堅調に拡大をしている。
また、今回の決算で売上高が大きく伸びているのが欧州だ。欧州の対前年同期比は+22%増と大きく成長している。
今年の国内は猛暑と言こともあり同社にとっては天候に恵まれたといえるが、国内だけではなく、世界中で売上高を伸ばしていることが分かる。
ダイキンの目立たないが強い化学事業
ダイキンは空調機器メーカーとしての知名度が圧倒的だが、実は化学事業でも知る人ぞ知るグローバルプレーヤーだ。フッ素を取り扱う企業としては有名だ。
同社の化学事業のQ1は売上高が対前年同期比₊21%増、営業利益は同+74%増と大幅の増収増益という結果となった。フッ素樹脂は、米国市場でのLANケーブル向け、また国内、米州、中国の半導体関連向けへの販売が好調と、化学事業においてグローバルのハイテク産業の成長を享受できている。
また、ハイテク産業だけではなく、フッ素ゴムについては、グローバルの自動車関連分野でのニーズもあり、自動車業界との接点もある。化学事業は空調事業ほどの利益規模はないが、それでもQ1の収益性で見れば空調事業よりも上だ。
キャッシュ・フローはどうか
最後にキャッシュ・フローを見ておこう。たった3か月のキャッシュ・フローを見るだけではあまり意味もないといえるが、とりあえず見ておこう。
同社の営業活動によるキャッシュフローは、利益増加(税金等調整前四半期純利益-法人税等の支払額)による拡大が対前年同期比で見てとれる。減価償却費やのれん償却額に大きな変化はない。
また、売上高伸長により売上債権や棚卸資産は増加している。仕入債務も増加しているが、売上債権の大幅な増加額は仕入れ債務の増加額が追いついておらず、営業キャッシュフローにはマイナスだ。
ただ、これらの項目を合計した営業活動によるキャッシュ・フローは対前年同期比で拡大している。
投資活動によるキャッシュ・フローではあまり大きな変化はなく、有形固定資産の取得による支出は対前年同期比で減少している。あまり大きな話ではないが、定期預金が100億円近く増加している。
財務活動によるキャッシュ・フローもこちらも特筆すべき点はあまりないが、長期借入金の返済額が対前年同期比で増えている。
ダイキンの今後の注目点
さて、好調なスタートをしたダイキンであるが、今後はどのような点に注目していけばよいのであろうか。短期的には同社の上期業績で好調なQ1を受けてどの程度まで積み上げられるかどうかだ。
中長期的には、今後のダイキンのM&A戦略だ。ダイキンはここまで世界で大型のM&Aを繰り返し実行してきた企業である。地域も含め空調領域のどのよう領域を攻めていくのかは引き続き注目である。
もっとも既存の延長線上のM&Aで十分かというとそうではない。米国のICT企業には空間としての「家」に興味を持っている企業が目立ってきている。先進国の若い世代を中心に移動しなくなりつつあるとすれば、長い時間を過ごす家は重要だ。
したがって、空調というこれまではやや「アナログ」の側面が強かった事業にデジタル制御を活用して既存の空調事業にどのように付加価値をつけていくのかというのがポイントになろう。
IoT(Internet of Things)の「things」に空調機器がどのように関与していくかは議論もあろう。ただし、「things」としてネットワークにつながることに関してはハードウェアとしての端末価格の高いもの、また数量が大きいものがが優先されるであろう。自動車などがその代表例である。
「住居」や「オフィス」といった長い時間を過ごす空間であるとともにエネルギー消費が大きな空調機器は今後はそうしたテクノロジーによって競争領域が大きく変わっていく可能性はある。こうした観点から同社の事業展開には注目だ。
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