東京のタワーマンションに住むって実際どうなの?~後編~
LIMO / 2018年8月11日 12時15分
東京のタワーマンションに住むって実際どうなの?~後編~
今回の記事では、前回の記事(https://limo.media/articles/-/5963)に引き続き、東京のタワーマンションにまつわる「実際にどうなの?」という疑問について解説していきます。
1. タワーマンションの低層階はお得って本当?
タワーマンションは、一般的には高層階ほど価格が高くなる傾向にあります。その理由は「眺望の良さがタワーマンションの最大の魅力であるから」にほかなりません。しかし、低層階にもメリットがあります。それは、高層階よりもリーズナブルな価格で購入しているにもかかわらず、同じように豪華な共用施設を使えるという点です。
多くのタワーマンションにはジム、シアタールーム、ライブラリー、プールなど、通常のマンションにはないような施設が多く設置されています。また、眺望が良い高層階に住むことができたとしても、中には、毎日同じ景色を目にしていると飽きてくるという人もいらっしゃいます。
つまり、眺望にさほどこだわりがないという人は低層階に住み、必要な時にスカイラウンジからの眺めを堪能すれば、非常にお得にタワーマンションならではの良さを楽しむことができるというわけなのです。
2. 高層階は電波が繋がらないって本当?
携帯電話の基地局は、多くの場合、地上20m〜40mほどの鉄塔などに設置されているといわれています。そのため、タワーマンションの高層階になると、電波が届きにくいというケースもあるようです。ただ、一概にはいえませんので、この点については、実際にマンションの内見時にチェックしてみることをおすすめします。
なお、もし本当に電波がつながりにくかったという場合は、まずは契約しているキャリアに相談をしてみましょう。ほとんどの場合「仕方がない」で済まされてしまうことはなく、キャリアが何らかの手を打ってくれる可能性は充分にあります。このため、本当につながりにくくても、契約を考え直すほどの大きな問題ではないと考えてよいでしょう。
3. タワーマンションって耐震性は大丈夫?
高層建築物で気になるのが耐震性ですが、タワーマンションの耐震性については、十分に安心できるレベルといえます。というのも、戸建と違い、マンションを建てる際には、支持層と呼ばれる強固な地層に何十〜何百も杭を打ち込み、建物を固定するからです。このため、地震の際に起こる「液状化」でタワーマンションが傾くということは、ほとんど考えられません。
なお、液状化が起きると、建物は無事でも、水道管などのライフラインが絶たれる可能性は否定できません。ただ、タワーマンションのように数十〜数百世帯がまとまっている場所においては、ライフラインの復旧整備の優先順位が高く設定されることが多いといわれています。しかもひとつの建物に対しての再整備となりますので、戸建のようにひとつひとつの建物に対してライフラインを再整備するのに比べると、ずっと早く復旧する可能性が高いのです。
3-1. 杭を打っていないマンションもある
なお、タワーマンションの中には、まれに支持層に杭を打たずに建築されているものがあります。この方式は、ベタ基礎(直接基礎)といわれ、非常に硬い地盤の上に立っているため、杭を打つ必要がないときに用いられる工法です。決して手抜きや欠陥というわけではありませんので、ご安心ください。ベタ基礎のタワーマンションとしてはTHE TOKYO TOWERS(ザ・トーキョー・タワーズ)(https://kawlu.com/journal/2015/11/10/9593/)が有名です。
THE TOKYO TOWERS(ザ・トーキョー・タワーズ)(https://kawlu.com/journal/2015/11/10/9593/)は58階建てのマンションですが、マンションの地下約16mに堅牢な支持層があり、その上にコンクリート基礎(コンクリートスラブ)を作って建てられています。ちなみにこのコンクリートスラブ(マットスラブともいいます)は、約4mとマンションの階高よりも厚みがあり、マンションの全面に配置されています。
ベタ基礎と杭、どちらの工法を用いたタワーマンションでも、耐震性に対して心配はいりません。東日本大震災の際にタワーマンションをはじめとした高層建築物が大きく揺れたという声を聞いたことがある方は多いと思いますが、実は、高層建築物は大きく揺れることで地震のエネルギーを吸収しています。このため、タワーマンションは大地震でも倒壊する心配はほとんどなく、戸建と比べても、大きな耐震性を誇っているということができます。
なお、最近は免震や制振など、さらに地震に強い構造を備えたタワーマンション(https://kawlu.com/journal/2016/02/05/12948/)も分譲されているようです。
3-2. 地震の時、エレベーターってどうなるの?
タワーマンションで気になるポイントとしては、「地震の際にエレベーターが使えるのかどうか」という点があげられます。これについていえば、基本的に、大地震の後はいくらタワーマンションといえども、しばらくエレベーターを使うことはできません。
東日本大震災の際、「高層マンション難民」という言葉が生まれたことに証明されるように、マンションのエレベーターが長期間使えないと、上り下りが大変なことから、部屋からあまり出たくないという状態が続くことになります。タワーマンションの高層階に住むならば、3日から1週間程度の水、保存食、コンロ、懐中電灯などを常備しておいたほうがよいでしょう。
なお、タワーマンションのエレベーターは、普通のマンションのエレベーターに比べ、極めて厳しい設置基準で取り付けられています。このため、たとえ震度6を超える地震であっても、エレベーターが落ちることはないといわれています。また、地震の際には、すぐに近くの階にエレベーターが止まるように設計されているので、閉じ込められたまま避難をすることができないということはないと思ってよいでしょう。
4. タワーマンションは健康に影響するって本当?
雑誌の特集などで、「タワーマンションが子供の成長に良くない、成人であっても健康上の被害がある」という記事が、たまにでることがあります。これは、とある論文が根拠になっているといわれていますが、この論文の調査サンプル数が極めて少なく、信用性に欠けるという見解もあります。ちなみに、この論文では、「6階以上」のマンションに住む人を対象にしているため、仮に本当だとしても、タワーマンションに限った話というわけではなさそうです。
この説により、「ロンドンでは高層住宅が建てられていない」という文章を目にすることもあります。しかし、実際には数多くの高級高層マンション、タワーマンションがロンドンでも建てられています。
また、この論文の根拠となっているのは「気圧の差」だそうですが、タワーマンションの上層階であっても低層階との気圧差はわずかなもので、天気の変化によって変化するレベルの気圧差しかないといわれています。実際、タワーマンションで子育てをしている人は数多くいますが、子供の成長や、本人の健康について何か問題があったという話を耳にすることはほとんどありません。必要以上に気にする必要はないと思ってよいでしょう。
5. タワーマンションのエントランスの天井はなぜ高い?
品川、田町、豊洲、有明、東雲などの湾岸エリアや、赤坂、麻布などの都心エリアのタワーマンションを実際に見ると、エントランスの豪華さに驚く人も多いのではないでしょうか。どのマンションのエントランスも2〜3階部分までが吹き抜けとなっており、開放感と高級感を兼ね備えた圧倒的な存在感を放つものばかりとなっています。
東京の場合、特にワールドシティタワーズ (https://kawlu.com/journal/2017/05/31/34724/)、芝浦アイランドケープタワー(https://kawlu.com/journal/2018/04/23/59381/)、大崎ウエストシティタワーズ(https://kawlu.com/journal/2017/05/12/34538/)、パークコート麻布十番ザタワー(https://kawlu.com/journal/2018/05/14/59922/)は豪華なエントランスが魅力的といえるでしょう。
ここで、「なぜ普通のマンションのエントランスのようにしないのか?」という疑問を感じる人も多いかもしれませんが、エントランスはマンションの「顔」であり、「第一印象」でもあります。この第一印象によってマンションの資産価値(将来いくらで売れるか)が大きく変わってくるともいわれています。このため、どのマンションも、こぞって魅力的なエントランスを作ろうとするわけです。
なお、このエントランスの豪華さは、総戸数が多いタワーマンションならではのメリットともいえます。というのも、多くの世帯が購入することで、個々の負担額が同じでも豪華なエントランスを作ることができるからです。総戸数が少ないマンションでは、タワーマンションほどの豪華なエントランスはなかなか作ることができません。
6. タワーマンションの壁は「石膏ボード」でできている? 乾式壁って何?
マンションの壁は、乾式壁(かんしきかべ)と呼ばれる石膏ボードによる構造となっています。これは、階数が30〜50階建てにもなるタワーマンションにおいて、部屋と部屋の間の壁を全てコンクリートにすると、建物が重くなりすぎることから、軽量化を目的として石膏ボードを使うためです。ちなみに低層マンションでよく用いられるのは、湿式壁(しっしきかべ)とよばれる、部屋と部屋の間の壁をコンクリートにする構造です。
石膏ボードで音を防ぐことができるのか?と思う人もいるかもしれませんが、防音性に関しては、むしろコンクリートよりも高いという結果が出ています。というのも、乾式壁では石膏ボードと石膏ボードの間にグラスウールなどの防音材を入れることで音を遮断する構造になっているからです。一般的に防音効果を比べた際、乾式壁(石膏ボード)136mmが、湿式壁(コンクリート)200mmに相当するといわれており、これだけの防音性があれば、音が気になることはないでしょう。
なお、紛らわしいのがボードを使ったGL工法とよばれるものです。GL工法は、同じようにボードを使っているのに、乾式壁とは異なり、音が響きやすいといわれています、これはなぜかというと、GL工法はコンクリート壁(湿式壁)にボードを貼り付ける工法を指しており、乾式壁とは別のものだからです。
最高のタワーマンションの選び方とは
実際にタワーマンションの購入を検討する場合、どのようなポイントに着目するとよいのでしょうか。
1. 修繕積立金の値上がりを想定しておく
総戸数が多いマンションであればあるほど、設備の割に修繕積立金が安く済むというメリットがあります。ただタワーマンションの場合、大規模修繕計画の話が出ると、かなりの費用がかかります。特に築浅のマンションの場合、修繕積立金が極めて安く設定されており、徐々に値上がりしていく(https://kawlu.com/journal/2017/08/23/43839/)ケースがほとんどどです。
タワーマンションの場合、修繕積立金の目安として1㎡あたり250〜300円、ハイグレードなタワーマンションですと1㎡あたり400円ほどになるケースもあります。将来、修繕積立金が上がった際に、支払いに問題がないかどうかをチェックしておく必要があります。将来の修繕積立金の値上がりは「長期修繕計画」を確認することで目安を把握することができます。
2. 共用施設は自分にとって必要なものか
タワーマンションの共用施設は、マンションによって様々です。エントランスやラウンジだけのシンプルなマンションから、プール付きのマンション(https://kawlu.com/journal/2016/08/11/11447/)、温泉付きマンション、ほかにもジム、フィットネススタジオ、キッズルーム、音楽室、ゴルフレンジ(シミュレーションゴルフ)、ライブラリー、勉強スペース、テニスコート、バーベキュースペース、バー、プラネタリウム、敷地内公園、噴水といった設備が設けられているところもあります。
基本的に、施設は少なければ少ないほうが修繕積立金は安くなり、ランニングコストも安くなります。一方で、様々な共用施設があることで、毎日の生活が楽しいもの、豊かなものになることは間違いありません。どこまでの共用施設を求めるかは人によって異なりますが、自分にとって大切な施設を見極めたうえで、タワーマンションを選ぶことが大切といえるでしょう。
3.隣接地に空地や工場はないか
タワーマンションが立つ立地というのは、高い建物を建てることができるエリアということです。準工業地域など、元々工場があったところも少なくありません。タワーマンションの大きな価値のひとつとして「眺望」があげられますが、周囲にタワーマンションが建築される可能性があると、この眺望が後から建てられる建物によってふさがれてしまうリスクがあります。
建設予定地の下見の際には、周辺を見回し、空き地があるか、工場があるかという点を必ず確認しましょう。空き地や工場は、所有者が変わると真っ先にマンション建設地になりやすい土地といえます。また工場でなくても、営業中か休業中かにかかわらず、プレハブの建物や低層の商業施設なども要注意です。というのも、取り壊しを想定して、取り壊しやすいようにその形で作られていることもあるからです。
せっかく購入したタワーマンションの眺望がふさがれることほど、残念なことはありません。将来、建物が立つ可能性がある敷地が周囲にないか、しっかりチェックして購入を検討するようにしたほうがよいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。週刊誌などの記事には、いたずらにタワーマンションの危険性を煽るものもありますが、そのほとんどは根拠のない話であることが多いものです。タワーマンションには、街のランドマークとなりやすい、資産価値を保ちやすいというメリットがあります。今回ご紹介したタワーマンションの秘密を頭の片隅においていただいて、ぜひ様々なタワーマンションをご覧になってみてください。
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