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米経済が抱える爆弾〜リーマンショック10年目のリスク

LIMO / 2018年8月17日 20時20分

米経済が抱える爆弾〜リーマンショック10年目のリスク

米経済が抱える爆弾〜リーマンショック10年目のリスク

再び膨れ上がる家計債務残高の中身は?

リーマンショックから10年、再び膨張する米国の家計債務残高

今年2018年9月は、世界的な金融危機“リーマンショック”からちょうど10年が経つということで、今後はその類の特集記事を多く見聞きすることになると思われます。そこで、今回は米国のニューヨーク連邦準備銀行が四半期毎に公表する「家計債務残高」の変化を見てみましょう。

リーマンショックが起きた2008年第3四半期の家計債務残高は約12兆6,750億ドル(当時のレートで約1,330兆円、以下同)と、途方もない水準に膨れ上がりました。その後、2013年第2四半期には約11兆1,530億ドル(約1,100兆円)まで減少したものの、2017年第1四半期にはリーマンショック時を上回りました。

そして、今週発表された最新の2018年第2四半期実績は約13兆2,930億ドル(約1,475兆円)となり、米国経済の借入依存度が一向に改善されていないことが判明しています。

家計債務残高だけを見れば、いつリーマンショック級の金融危機が来ても不思議ではないのかもしれません。

この10年間で家計債務残高の内容は大きく変化

一方で、この10年間で家計債務残高の内容は大きく変わりました。まずは10年前との内容の比較を見てみましょう。なお、カッコ内は全体に占める構成比%です(出所:New York Fed Consumer Credit Panel/Equifax)。

2008年第3四半期 総額12兆6,750億ドル

住宅ローン:9兆9,900億ドル(78.8%)

自動車ローン:8,100億ドル(6.4%)

クレジットカード:8,600億ドル(6.8%)

学生ローン:6,100億ドル(4.8%)

2018年第2四半期 総額13兆2,930億ドル

住宅ローン:9兆4,300億ドル(70.9%)

自動車ローン:1兆2,400億ドル(9.3%)

クレジットカード:8,300億ドル(6.2%)

学生ローン:1兆4,100億ドル(10.6%)

注:住宅ローンはMortgageとHome Equity Revolvingの合計。数字は概算ベース。

自動車ローンと学生ローンの残高が急増

リーマンショック発生の直接的原因となった住宅ローンが、現在でも最大規模であることは変わりありませんが、その金額は微減となっており、全体に占める割合は大きく減ってきました。

その代わりに大幅増加となったのが、自動車ローンと学生ローンです。この2つは、今後の債務返済負担で米国経済の大きなリスク要因になる可能性が高いと言えますが、とりわけ、学生ローンの急増は既に大きな社会問題となっています。

米国の学生ローン(貸付型奨学金)の実態とは?

ここで言う学生ローンとは、返済義務のある貸付型の奨学金を指しますが、日本の奨学金と同じイメージでいいでしょう。ほとんどが大学生ですが、特徴としては、その約9割が政府(州政府含む)による貸し付けであり、その金利の高さ(約4~6%、借入プランによって異なる)でも知られています。

なお、約7割の学生が学生ローンを組んでおり、卒業時の1人当たり平均残高が約4万ドル(約450万円)という調査結果もあります。社会人になる時に、これだけの負債を担うというのは大変なことです。

大学の学費高騰が学生ローン残高急増の最大要因

学生ローン残高急増の最大要因は学費の高騰です。米国では、有名教授陣や豪華な施設を揃える大学が多く、当然ながらコストが嵩みます。また、リーマンショック以降の政府からの補助金削減も影響しているようです。

さらに、米国が世界有数の“学歴社会”であることから、中間所得層に満たない入学者が増えていることも一因と推測できましょう。

学生ローンは全ての債務で最大の延滞率

そして、ここ直近で大きな問題となっているのが、返済の遅延です。最新のデータで3カ月以上の返済滞りをベースにした延滞率で見ると、学生ローンは8.6%に上っており、クレジットカード(4.8%)、自動車ローン(2.3%)、住宅ローン(概ね1.1%)を大幅に上回る状況が続いています。高額な学生ローンを返済できない学生や、その家計の苦しさを見ることができるのではないでしょうか。

ちなみに、一概に単純比較はできませんが、日本の奨学金(日本学生支援機構の貸与型奨学金)の延滞率は同じ3カ月以上の返済滞りで3.5%程度です。もし、日本で9%近い延滞率となったら大変な騒ぎになるでしょう。

学生ローンの在り方を巡る改革は始まったばかり

実際問題として、在学時から一部返済が始まる場合、返済ができずに退学を余儀なくされる学生や、アルバイトに時間を取られて卒業ができない学生も少なくないようです。

また、卒業以降の返済が大変な負担となって、個人消費に影響が出ているという見方もあります。日本でいう“自己破産”を申請するケースも多々見られているようです。

こうした状況を背景として、学生ローンの在り方を見直す動きも出ています。具体的には、1人当たり貸付上限額を15万ドル(約1,650万円)に抑制する法案の提出や、民間企業(主に金融機関)の貸付業の参入促進による金利低下などですが、未だ不確実性が高いと言えます。

ただ、何らかの手を打とうとしているのは事実であり、今後の行方を見守る必要があるでしょう。

米国の大学に行きたいなら、まずは資金計画からスタートすべき?

将来は自分の子供を米国の大学に入学させたい、あるいは、自分も米国の大学で学びたいという人も多いと思われます。しかし、現実には多額の学費が必要となります(注:学部やコースによる)。米国の大学に行きたいなら、まずは綿密な資金計画からスタートするのがいいかもしれません。

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